ソウル市、全国初、都市問題解決シミュレーション 「デジタルツインS-Map」
ソウルの街を仮想空間データ化して都市問題解決に役立てる「スマート行政革新モデル」が本格稼働 2万5千枚の航空写真をAIで分析し、国際標準インデックスの体系を構築、国の標準モデル提示でリード 今年7委員会、公共建築設計の公募で意思決定の過程に導入し、審議の客観性や科学性を高める 風の通り道を見つけて都市整備や山火事拡大防止、粒子状物質やヒートアイランド現象の減少にも活用 観光名所や600種の文化財に触れる非対面3Dツアー、タイムマシーンのように1900年代の漢陽に旅立つ ソウル市は、605.23㎞に及ぶソウル市全域を3D化して仮想空間に再現する「S-Map(3D地図)」を発表した。「デジタルツイン」と呼ばれる空間に行政や環境などの情報を入れ、シミュレーションを通じて様々な都市問題の解決につなげるスマート行政革新モデル「デジタルツイン・ソウルS-Map」を作り、4月1日から本格的に稼働させる。 3Dマップはすでに作られていたが、都市全域を対象に都市問題の分析・シミュレーションまで可能なデジタルツイン(Digital Twin)を構築したのは国内で初めて。海外の都市にも類を見ない試みだ。 市は今年、都市計画・交通影響評価委員会など7つの委員会の意思決定にS-Mapを活用し、審議の客観性や科学性の向上を図る。また、今年から市の公共建築の設計に関する公募の全過程にもS-Mapを導入し、寄せられた作品を実際にシミュレーションにかけて審査を行う。火災発生時にも発生現場を3Dで直観的に確認し、延焼を事前に防ぐ。 ソウル市全域の風の通り道もS-Mapで確認し、様々な都市問題の解決に活用する。地形によって異なる風の経路、強さと風向き、地形地物の影響などを3Dの仮想空間で確か め、都市計画における建物の配置などに反映する。さらに、気象庁の情報を基に風の通り道をシミュレーションにかけることで、山火事の拡大防止や粒子状物質、ヒートアイランド現象の減少にも活用する予定だ。 S-Mapの導入により、市民サービスも強化される。主要な観光名所をソウル市広報大使のピンクポンがVR映像と共に説明する非対面ツアーのサービスを年内にスタートさせる。また、600種におよぶ文化財を3Dで見ることができるほか、1900年代の地図に描かれた漢陽(ハニャン)の様子も3Dで再現され、S-Mapというタイムマシーンに乗って20世紀初頭の漢陽を体験できる。民間のポータルでは提供されていない昔ながらの市場や狭い路地裏など、1万4千件余りのストリートビューもS-Mapで提供し、地域経済の活性化に役立てたい考えだ。 ソウル市は、コロナ禍で非対面の行政・市民サービスが増加する中、「デジタルツイン・ソウルS-Map」を活用した立体的かつ統合的な分析・シミュレーションを行い、様々な原因による環境災害や交通など、大都市の抱える問題への解決力を高め、市民サービスの拡大を目指す。 ソウル市は、2018年、デジタルツイン事業に着手し、都市分析・シミュレーションが可能となった現在の第3段階に至るまで、韓国版デジタルツインを主導してきた。2022年以降は自動走行や地震の予測など、都市をコントロールできる段階にまでレベルアップを目指す。 ソウル市の「デジタルツイン・ソウルS-Map」の活用方法は大きく、①様々な分析モデルを通じた都市問題の解決、②文化・観光における非対面サービスの拡大、③民間レベルでの活用促進に向けた開放の3つだ。 まず、都市計画の意思決定を支援し、火災予測に基づくリアルタイム・モニタリング、都市内の風の通り道の実現など、都市問題の解決に向けて分野ごとの分析モデルを開発した。今後も分析モデルを持続的に開発していく計画だ。 風の通り道を活用した「都市気候分析モデル」も開発する。第一段階として、ドイツの気象庁が開発した風の通り道モデル(KLam_21)にソウルの地形情報を入れ、リアルタイムでソウルの風の道に関する情報を入手する。現在は情報を検討している段階で、具体的な活用モデルは2023年までに開発を行う計画だ。 S-Map上でのデジタルツインを完成させることで、これまでの立体映像と基本情報の提供からさらに進んで様々な3Dコンテンツの体験や分析、市民の参加が可能となった。市は今年9月から市民がモバイルアプリですべてのサービスを楽しめるよう、準備を進めている。 S-Mapと3D仮想空間の情報を保有する文化財庁やソウル観光財団らと協力し、主要な観光名所と文化財を融合させた非対面市民体感サービスを提供する予定で、とりわけ1900年以前の当時の都、漢陽の様子を再現したオンライン旅行プロジェクトなど、様々なコンテンツを提供していく予定だ。 また、S-Mapのデータは民間にも開放し、スタートアップや外部の専門家が様々なサービスを開発して宣伝できるテストベッドも用意する。年内に実験スペース(オープンLab)を設置し、提供する。 イ・ウォンモクソウル市スマート都市政策官は「現実世界の様々な情報をつなげ、シミュレーションと仮想空間での分析が可能なS-Mapは、スマート都市実現の中核を担うだろう。また、S-Mapの関連データを民間にも公開することで、多種多様なサービスや関連産業の発展にも大きく貢献できると期待している」と語った。
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