1. 大転換期におけるポストコロナ時代、その出発点になるものは、人々の暮らしです。 ソウル市民の皆様、 新年、明けましておめでとうございます。 旧年中は、世界が未曽有のパンデミックに立ち向かい、共同体を守り抜くために必死に戦った苦難の一年でした。社会全般において非対面化が進み、生活や消費パターンが変り、ソウル市民は馴染みのない変化への適応を強いられました。さらには、経済が止まるという前例のない経験をしたことで、零細業者はいまだかつて経験したことのない危機に直面しています。 誰もが普通に享受していた日常も、根幹から揺さぶられました。マスクをつけずにはどこにも行けない不便を強いられ、故郷で親兄弟、親族と懐かしい顔を合わせる年中行事も、年末年始に会いたかった人に会って新年のあいさつを交わすことも、我慢しなければなりませんでした。 新年は、この巨大な変化の渦を乗り越え、ポストコロナという新しい道を切り開かなければならない、決定的な時間になるでしょう。ソウル市は、2021年を「一千万人の市民が新しい日常を迎えるための挑戦の年」と定め、大胆な挑戦と革新により揺れ動く市民の暮らしを守っていきます。 新型コロナウイルス感染症が引き起こした大転換の時代、「水滴石を穿つ」の覚悟でソウル市民と共に我々が直面した危機を乗り越え、さらにはコロナ以降、完全に変わる新しい日常を先取りして準備していきます。 コロナ以降に日常を取り戻すとしても、過去と同じようなやり方で暮らし続けることは不可能だということは明らかです。ソウル市は、市民の暮らしと都市のシステム全般を、新しい観点で再設計していきます。さらには、この大転換を、危機により浮き彫りになった不平等と格差など、多様な時代の問題を解決すべく変化のきっかけにします。 2. 一千万人の市民にとって新しい日常のための7つの課題が本格始動します。 出発点は、市民の暮らしです。ソウル市はポストコロナ時代、市民の新しい日常を切り開くべく、▴防疫、▴庶民の暮らし、▴未来への投資、この3つの分野において7つの課題を本格的に実施します。 第一に、持続可能な「S-防疫システム」を整え、市民の安全を守ります。 災害と危機のニューノーマル時代、コミュニティを守る唯一で、かつ最強の武器は、市民の自立性と責任が保障される生活防疫と行き届いた公共医療です。ソウル市は一時的な災害だけでなく、常時の脅威から市民の暮らしを守り、感染症の心配なく安心して暮らせる都市づくりに励みます。 ソウル市は、公共医療がカバーできず、自宅隔離を余儀なくされる事態だけは何としても防ぐという覚悟をもって、重症患者専門の病床、感染症専門の病床、生活治療センターなど、治療の段階に分けて病床を拡大し続けてきました。さらに、無症状感染を速やかに遮断するため、選別診療所の運営を拡大し、検査量を大々的に増やしてきました。 ですが、それで十分とは言えません。ソウル市は2021年度、ソウル医療院には59床の「救急医療センター」を、ポラメ病院には48床の重症患者専用陰圧病床を備えた「安心できる呼吸器専門センター」を速やかに建設します。その他の市立病院でも、感染症の治療病床としてのシステムを備えていきます。さらに警戒レベルに応じて公共と民間の医療資源を円滑に活用することができるよう、ソウル市所在の約50以上の総合病院と密接な官民災害医療システムを整えます。感染症政策研究はもちろん、感染症の流行をリアルタイムで監視し、リスク評価や、拡大の予測を立てる「早期警報システム」も構築し、ソウルの感染症対応のコントロールタワー機能も強化してまいります。 新型コロナウイルス感染症の流行の初期に経験したマスク不足問題など、防疫物品不足の問題が再発しないよう、「災害管理資源統合備蓄センター」の建設も開始します。2022年までに延べ面積1万㎡規模で造成し、防疫災害管理資源を安定的に確保するとともに、緊急事態に迅速に対応します。 第二に、庶民の暮らしと経済の早期回復、そして雇用安定に最善を尽くします。 新型コロナウイルス感染症により、1998年の通貨危機以来の経済的・社会的危機に直面している現在、庶民の暮らしと経済を早期回復し、雇用を安定化するのに最善を尽くします。 まず上半期に、新年の予算の60%を早期執行します。雇用が増え、可処分所得が増加し、消費がもっと増えれば、庶民の暮らしが回復するという好循環構造を作るきっかけになるでしょう。計2兆1,576億ウォンを投入し、感染拡大により生計を立てることができない市民を対象に、39万3千の雇用を創出します。求職が急がれる低所得層、障害者など恵まれない階層の生計型雇用、実務経験と技術を蓄積することができるソウル型ニューディール雇用、そして保育・ケアサービスを強化するための社会サービス雇用も創出していきます。引退後の中高年層向けの仕事、高齢者のための仕事など、各世代の特性に合わせた良質の雇用を創出するのにも力を注ぎます。 ソーシャル・ディスタンシングのレベル引き上げで苦しんでいる零細業者、自営業者のためには、市中銀行と協力し、1兆ウォン規模の中小企業育成資金の融資をサポートするとともに、ソウル信用保証財団を通じて3兆5千億ウォン規模の保証もサポートします。「巣ごもり消費」の拡大に合わせて62億ウォンを投入し、まちの商圏を活性化し、非対面の消費文化に零細業者が迅速に対応できるよう、オンラインショッピングモールへの出店と販売も支援します。 コロナ禍の中、より劣悪な労働環境と雇用不安にさらされているケアや配達などに従事する労働者、プラットフォーム‧フリーランスの労働者への保護対策も早急に設けます。非正規雇用労働者のソーシャル・セーフティネットの強化、行き届いていない労働者の基本権を保障するなど、計24の事業にも、2021年に784億ウォンを投入します。恵まれない環境の労働者の権益を保護するため、「労働者総合支援センター」を各自治区が運営するとともに、宅配便、配達、個別指導の教師など、毎日移動しなければならない労働者を保護するための「移動する労働者のための憩いの場」も、全自治区での運営を目指し、2021年に10か所を優先的に設置します。 第三に、ケアを市民の権利として保障します。 ソウル市は、ケアを市民の権利として保障し、すべての市民に満遍なく社会保障サービスを行き届かせるという目標の下、児童や青少年、壮年、高齢者など、ライフサイクルにカスタマイズされた福祉サービスを強化します。 公共保育インフラの中核を担う国公立保育園は、利用率を2021年は46%、2022年には50%まで引き上げれば、2人に1人が通うことになります。小学校におけるケアインフラといえる「わが町のキウムセンター」は、計254か所まで拡大して区内平均10か所までの拡充を目指すとともに、特に文化と芸術を組み合わせた拠点型キウムセンターを5か所まで拡大します。 高齢者向け介護施設である「市立シルバーケアセンター」も6か所建設を進め、緊急ケアが行き届いていない25自治区の「ケアSOSセンター」が、より積極的にその役割を果たすことができるよう、人材の拡充に取り組み続けます。50プラスキャンパスとセンターは、16か所まで拡大し、個人と社会、両方にとって役立てるよう、中高年の第2の人生を体系的、かつ総合的にサポートします。 コロナ時代に最も苦痛を感じている障害者や低所得層、ホームレスなど恵まれない人々が、この長い苦難のトンネルを無事通り切ることができるよう、ソウル市が頼もしい支えになります。脱施設化を図る障害者・ホームレス向け支援住宅は、2021年に148戸を拡充することで合計470戸まで増やし、さらに障害者バウチャータクシーを1万台追加すると、今の2倍を超える規模に拡大します。新型コロナウイルス感染症により危機に瀕した世帯が立ち直れるよう、ソウル型緊急福祉とソウル型基礎保障制度の所得基準を緩和し、高齢者・ひとり親世帯の扶養義務者の基準も廃止します。 ひとり親や多文化家族、外国人住民もソウル市民と同等に暮らしていけるようサポートします。ひとり親家庭のためには、初期におけるシングルマザー支援を強化し、家事支援サービスを拡大することで健全に自立することができるようお手伝いします。多文化家族や外国人住民のためには、13の言語でソウル暮らし情報を迅速に提供し、金融‧納税などの10分野における社会適応教育を運営し、隣人と共に暮らすことができる社会環境づくりに努めます。児童虐待については、公的機関による対応システムを確立し、保護を強化します。 第四に、最大懸案である居住安定、市民の長年の願いである均衡ある発展に投資します。 ソウルの最大の懸案の一つ、市民の居住安定に総力を挙げ、ソウル市民の長年の願いであり、ソウルの潜在力を引き出すためにまず解決すべき均衡ある発展の効果を最大化します。 庶民の居住安定策の中核と言える公的賃貸住宅24万戸の供給を滞りなく実行し、車庫や雨水ポンプ場などの遊休空間を活用することで2022年までに8万戸のさまざまなタイプの公共住宅を供給します。未来を担う若者や新婚夫婦の居住安定のためにも、買入型賃貸住宅4,100戸を新しく買い入れ、賃借保証金やウォルセ(家賃)を幅広くサポートします。再開発など公共整備事業による住宅供給も滞りなく履行します。庶民と中産階級向けの新しいタイプの住宅「公共チョンセ(伝貰)住宅」3,000戸を供給し、無住宅の実需者がマイホームの夢をかなえるよう、「持ち分積立型分譲住宅」も、制度改善により2023年から1万7千戸の供給計画を立てています。ソウル市チョンセ・ウォルセ保証金支援センター、ソウル住宅賃貸借紛争調整委員会などを活用し、賃貸借の安定化にも努めます。 地域の均衡ある発展のためには、2020年に確定した「第2期鉄道網構築計画」に基づいた事業を具体化することで交通不便地域を対象に鉄道インフラを集中して充実化し、地域の均衡ある発展を牽引していきます。 また、カンナム(江南)圏の公共機関をカンブク(江北)圏に移すバランス戦略をもってカンブク(江北)地域の発展を導きます。ソウル住宅都市公社は2024年までに庁舎の移転を完了し、人材開発院とソウル研究院も、迅速に移転を進めます。2019年に新設された均衡ある発展特別会計も堅実に運営し、生活社会間接資本が比較的不足している自治区に対し、集中して投資します。 潜在的が高く、発展させる必要のあるソウル市内62地域に対する「生活密着型地域生活圏実行計画」も、2022年まで段階的に確立します。相対的に立ち遅れている地域を改善して競争力を引き上げることにより、地域の均衡ある発展の効果を周辺地域にまで波及させていきます。 第五に、ポストコロナ時代におけるソウルの未来に備えます。 新型コロナウイルス感染拡大防止と経済回復のために、全方位の努力と市民の知恵が集まっている今が、新たな機会を切り開き、革新的な生態系を開拓する絶好の時間です。 ソウル市は2021年に912億ウォンを投資し、ポストコロナ時代に注目を集めている4つの高付加価値技術革新産業、つまり「AI」(ヤンジェ(良才))、「K-BIO」(ホンヌン(洪陵))、「フィンテック」(ヨイド(汝矣島))、「ブロックチェーン」(マポ(麻浦))の産業集積・産業クラスターの建設を加速します。また、ソウルに集中し、伝統的にソウルの強みとなっている産業分野にも468億ウォンを投入し、ソウル型産業ルネッサンスを準備していきます。1万1千社のICT企業が密集するソウル産業の心臓であるGバレーを高度化し、印刷・縫製・医療など都市の伝統的な製造業のデジタル化を全力でサポートします。 スタートアップの成長のためにも、心強いサポーターになります。ソウル市が運営している3か所のソウル創業ハブ(マポ(麻浦)、ソンス(聖水)、チャンドン(倉洞))から2021年に200社以上、海外進出企業を輩出するという目標を掲げています。世界を舞台に活躍するユニコーン企業へと成長できるよう、技術開発からインフラ、海外進出までの全過程を体系的にサポートします。 第4次産業革命、非対面のポストコロナ時代を牽引する代表的な技術であるビッグデータ(Big Data)、ネットワーク(Network)、人工知能(AI)を集中して育成するソウル型デジタルニューディール政策にも、2025年までに1兆1千億ウォンを投入します。デジタル都市のインフラとしてソウル全域に5,954kmに及ぶプライベート光ネットワークや公共Wi-Fiの「カチオン」を設置し、ソウル市民がどこでも自由に通信できる権利を保障します。効率的なデータ管理‧活用のための「ビッグデータ統合ストレージ」も段階的に構築し、韓国・海外の行政サービスにも革新的なAIを大幅に導入、「インテリジェント行政」を実現します。デジタル・ディバイドを解消し、すべての市民が享受する包容力のあるスマートシティ・ソウルを完成してまいります。 第六に、気候変動に対応できるリーダー都市になります。 人類の生存を脅かす気候変動への対応は、選択の余地のある問題ではなく、我々の義務です。ソウル市は「2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)都市」を目指すソウル型グリーン・ニューディールをもって気候変動に対応し、不平等の解消、グリーン雇用の創出という三大目標を同時に実現していきます。 公共部門から率先して取り組みます。ソウル市は、温室効果ガスの排出量の約70%を占める建築部門と関連し、2022年までに老朽化した公共建築物353か所のエネルギー効率を改善するなど、公共工事においてグリーン調達によるリフォーム事業を推進します。環境にやさしいモビリティの電気自動車や水素燃料電池車も、まず公共部門に導入を義務付けることでグリーンモビリティのリーダー都市として成長するとともに、2022年までにソウル全域において誰もが利用できる2千基の公共EV充電器と15の水素ステーションも設置します。 さらに、産業化の時代における自動車中心の都市から人間中心の歩道に変え、気候変動に対応するとともに地域経済を活性化させます。2020年末、トェゲロの2.6㎞を歩行者にやさしい街へと変貌させたことを皮切りに、今後もセジョンデロのサラムスプギル(人・森・道)事業、新しいクァンファムン(光化門)広場造成事業を進め、ソウル駅からクァンファムン(光化門)広場、ミョンドン(明洞)、トンデムン(東大門)に至るソウルの中心地域を、歩きやすい道で結びます。 ごみ埋立地の問題と関連し、首都圏の自治体や環境部と協力し、埋立地の確保に最善をつくすとともに、一日平均1千トン規模のごみを処理する広域資源回収施設を建設することで、「ソウルをごみの直接埋め立てのゼロレベル化へ」に向けて努めてまいります。 第七に、男女平等のソウルをつくり、若者の力になります。 ソウル市は、男女平等のソウルを目指し、社会的弱者が差別と偏見を受けず、平等に生きていけるよう、公共部門から人権を守るための様々なセーフティネットを稼動します。 韓国はOECD加盟国の中で男女の賃金格差で不名誉な1位になりました。ソウル市は2019年、全国で初めて投資支援機関を対象に、男女平等賃金公示制度を施行しました。2021年はソウル市とソウル市立大学校を含め、本格的に制度の拡大を図ります。各機関の性別賃金情報を分析し、改善策を実施するとともに、今後、民間部門まで拡大することで男女平等の労働環境づくりを実現します。 「女性が安心して暮らせる特別市」も、現場からのニーズに基づいて更新していきます。女性1人世帯が24時間安心できる防犯システムを強化し、「安心できる宅配」と「安心できる帰宅支援サービス」も、利用者のニーズに合わせて利便性を高めていきます。日々増加するデジタル性犯罪にも積極的に対応していきます。 新型コロナウイルス感染拡大で若者の社会進出が猶予されるなど、閉塞した状況の中でも、たくましく前へと進む若者たちにも寄り添います。新年にも2万人の若者に「青年手当」を支給し、「青年向け1,000の夢事業」により社会進出を準備している若者には仕事の経験を、新型コロナウイルス感染症で職を失った若者には新しいキャリアを積むことができるよう、サポートします。就職の壁にぶつかっている階層の若者たちには、専門的な職業教育とカスタマイズされたコンサルティングだけでなく、就職まで責任を取る「青年失業解消プロジェクト」も、新たに発足します。若者たちにとって最大の負担となる居住と関連し、「新婚夫婦賃借保証金」「青年ウォルセ支援」「駅勢圏青年住宅」「若者・新婚夫婦のための『買入型賃貸住宅』」など、多角的な支援を続けてまいります。 3. 安定した市政の運営と公正な選挙管理のために最善を尽くします。 ソウル市民の皆様! ソウル市において2020年1年間は、完全に市民による時間でした。 未曽有のパンデミックという危機、さらには市長の空位というかつてなかった試練まで経験したソウルが、新しい日常を考えられるようになったのは、ひとえに市民の皆さんの力の賜物です。ソウル市を信じ、それぞれの場で防疫の主体となってくださった一人ひとりの市民が、最も輝かしいヒーローです。 防疫当局に協力してくださったソウル市民の皆さんに、改めて心より感謝申し上げます。 スポットを当てられることもなく、自己犠牲と献身をも惜しまない名もなき医療関係者と防疫関係者、ソウル市の家族の皆さんにも深く感謝いたします。皆さんの連帯と協力さえあればいかなる苦難も乗り越えられるということを証明した希望の証を、私たちは目の当たりにしています。社会の構成員が全員、一つのチームとなって奮闘してきたからこそ、今この時間は将来、大転換の歴史の中で最も劇的かつダイナミックな足跡として刻まれることでしょう。 ソウル市は、一日でも早くマスクを外しても生活できる日常を取り戻し、希望を抱いて前へと進むその日に向けて、ソウル市民と共にこれからも邁進してまいります。 市長権限代行体制下で組織が乱れないように公職者の綱紀粛正にも最善を尽くします。ソウル市のすべての公務員が一つになり、ソウル市政を365日、安定的に運営します。 新しいクァンファムン(光化門)広場、公共住宅供給、公共Wi-Fiの構築など、ソウル市民と約束した中核事業も滞りなく進めていきます。組織内の構造的‧文化的問題の要因を点検しつづけ、男女平等の組織へと生まれ変わります。 何よりも、4月7日に行われる補欠選挙が透明で公正に行われるよう、公平な選挙管理にも力を注ぎます。ソウル市のすべての公務員が政治的中立を徹底的に守り、市民が望み、時代が求める新しいリーダーシップにより、ソウル市民の新たな日常を本格化することができるように最善を尽くします。 2021年が皆さまにとりまして、夢と希望に満ちた一年になりますよう心からお祈り申し上げ、新年のごあいさつといたします。