2015年1月29日~4月24日に実施したソウル駅の高架再生に向けた国際懸賞設計公募の結果、オランダ人ランドスケープ・アーキテクトのヴィニー・マース(Winy Maas)氏の「ソウル樹木園(The Seoul Arboretum)」が最終的に選ばれました。
マース氏は、2000年のハノーバー国際博覧会オランダ館やパリの2030年のビジョンを示した「Grand Paris Plus Petit」といったプロジェクトを手掛けたことで知られる世界的な建築・都市設計会社「MVRDV」の創立者で代表です。
45年前に建設されたソウル駅の高架道路は、今日までソウル市民に利用されてきましたが、老朽化が進んでいます。そのため、ソウル市は2015年1月29日、「ソウル駅7017プロジェクト」としてこれを再生すると発表しました。「7017」は、①1970年に建設され、2017年に生まれ変わる歴史的高架 ②1970年に建設された道路が17の歩行者専用道路に様変わり ③1970年に建設された高さ17メートルの高架、を意味しています
▶ 高架は巨大な「木」、照明は「枝」というコンセプト…17の歩行者専用道路と自然に調和
「ソウル樹木園」は、ソウル駅の高架という空中庭園に一本の木が立っているというコンセプトです。テゲ(退渓)路~チュンリム(中林)洞に国内の樹木を「カ・ナ・ダ」(韓国語の五十音)順に植え、照明が枝という設定で、ソウル市が発表した17の歩行者専用道路と有機的に調和させました。
「ソウル樹木園」は、自然を媒介にコンクリート構造物を生命の宿る場所にするというビジョンと戦略が革新的かつ未来志向だと評価されました。また、ソウル駅一帯のグリーン空間化の可能性を示したことと、多様な市民及び主体がともに築き上げていけるプロセスを重視していることが審査委員らの幅広い支持を受けました。
今回の公募は、老朽化した高架と周辺地域の特性を考慮し、建築・造景構造分野の協業と近代産業の遺産を蘇らせるノウハウを有する韓国内外の作家7人を選び、公募への参加を要請する形で行われました。審査基準は、①場所の発見と解釈 ②周辺地域との調和 ③高架の原型保存と再構成 ④プログラム、などに重点を置きました。
2等はチョ・ソンリョン氏の「ソウル駅の高架:すべての人のための道(The Seoul-Yeok -Goga Walkway for All)」、3等はチョ・ミンソク氏の「流れるランドマーク:統合されたハイパー・コラージュ・シティ(Continuous Landmark Unified Hyper-Collage City)」が選ばれました。他にも、フアン・ヘレロス(Juan Herreros)氏(スペイン)が「ソウル・エバーグリーンテラス(Seoul Evergreen Terrace)」を、マーチン・レイン=カノ(Martin Rein-Cano)氏(ドイツ)が「空の道(Skyway)」を出品したほか、チャン・ユンホ(Chang Yung Ho)氏(中国)やチン・ヤンギョ氏(韓国)らも参加しました。
ソウル市は、地域住民への説明会や各分野の専門家との交流を通じて今回当選した設計案を具体化します。マース氏とは設計範囲について具体的に交渉し、6月中に契約を交わす計画です。
▶ 5月8日~6月1日に市庁ロビーに展示、地域住民説明会などで設計を具体化
ソウル市は、当選作をはじめとする7作品を5月18日~6月1日に市庁ロビーに展示します。
また、5月20日~27日にはカンナム(江南)駅、ソウル駅、ホンデイック(弘大入口)駅、クァンファムン(光化門)広場に、5月28日~6月17日にはヨンサン(龍山)区庁とマポ(麻浦)区庁にも展示する予定です。
一方、ソウル市のホームページ(http://www.seoul.go.kr)と国際設計公募のホームページ(www.ss7017.org)にも掲載する予定です。7作品は作品集として制作し、ソウル市議会、市民委員会、3区の住民自治センター(チョンパ(靑坡)洞、コンドク(孔徳)洞、チュンリム(中林)洞、フェヒョン(会賢)洞)やナムデムン(南大門)商人会など利害関係者にも配布する予定です。
ヴィニー・マース(Winy Maas)
MVRDV, the Netherlands
▶代表作
Market Hall in Rotterdam (2014), Presq’ilede Caen Redevelopment (2013), Glass Farm (2013), Hongqiao Airport Central Business District (2013), Maquinnext (2012), Book Mountain (2012), Grand Paris (2010), Ypenburg (2005), Silodam (2003), BjørvikaBarcode (2003), Villa VPRO (1997), WoZoCo Housing (1997)
BjørvikaBarcode (2003) | Maquinnext(2012) | Market Hall in Rotterdam (2014) |
フアン・ヘレロス(Juan Herreros、スペイン) | マーチン・レイン=カノ(Martin Rein-Cano、ドイツ) |
チン・ヤンギョ(韓国) | チャン・ユンホ(Chang Yung Ho、中国) |
チョ・ソンリョン(韓国) | チョ・ミンソク(韓国) |