-不信の時代を嘆く 先週の金曜日、とても特別な行事がありました。ソウル特別市文化賞の授賞式があったのです。11人に与えられる本賞の今年の受賞者は、演劇の舞台とテレビで50年以上活躍してきた俳優オ・ヒョンギョン氏、韓国児童文学史の研究により児童文学の発展に寄与してきたシン・ヒョンドゥク氏、韓国の映画発展に大きな貢献をしてきた撮影監督のチョン・イルソン氏などです。
ところで、この11人の方と面談をして、授賞する際にとても申し訳ない気持ちになりました。まず、これほどの大きな業績を残した方々に、今頃になってやっとこの賞を授賞するということ、余りに遅すぎたのではないかという思いです。しかし、それよりもっと申し訳ない点は、この賞には全く賞金がないということでした。メダルと賞状が全部です。「賞金のない賞なんて!ソウル市が授賞するこの栄誉ある賞が、賞状とメダルだけとは!」ソウル市長の私としては、狼狽しました。
担当者に訊いてみると、賞金が付くと寄付や贈り物に該当し、選挙法に基づく違反行為になるからだそうです。その説明を聞いて私は以前よりもっと疑問が湧いてきました。審査委員会が公正な審査基準と手続きに基づいて受賞者を決定し、市長はその決定に従うだけなのに、それがなぜ寄付や贈り物になるのか、さっぱり理解できません。賞金の授与が禁じられるのは、市長が勝手に資格のない人に授賞を決めることができるという前提があってこそ成り立ちます。審査委員会は、公正な審査手続きや授与資格などの検討も行わず、操り人形のように市長の決定に従うものなのだ、とでも言わんばかりです。
しかし、ソウル特別市文化賞はそこまでつまらないものではありません。1949年の制定以来、植民地からの解放直後、厳しい環境の中で文化と芸術の花を咲かせるために尽力し、ソウルと韓国の文化界に大きな業績を残してきた方々が受賞してきました。約600人の方がこの賞を受賞し、受賞者の中には、舞台女優のパク・ジョンジャ氏、韓国の伝統音楽パンソリの最高の名人アン・スクソン氏もいます。
これほど由緒正しく、栄誉ある文化賞が、市長の意のままに運営されるという前提のもとで賞金がないのです。この状況は、今の時代が不信の時代だということを象徴的に示しているようで、とても悲しくなりました。授賞する私の手が恥ずかしくなりました。たとえ、今の時代が不信の時代だとしても、このような賞にまでそれが反映されるということが残念でなりません。
受賞者の11人の方には次のような慰めの言葉をかけました。「賞金はまったくありませんが、一千万のソウル市民の心と感謝の気持ちが込められています。大きな賞金より大きく、深い心が込められているので、あまりがっかりなさらないでください」と。これから信頼に基づいた社会を作っていきたいです。