東アジア住居福祉カンファレンス
日付 2015年 5月 13日 | 場所 ソウル市庁
こんにちは。皆様、お会いすることができて嬉しいです。ソウル特別市長パク・ウォンスンと申します。「ともに暮らす社会―貧困層の住居問題解決のために」というテーマで、東アジア大都市の主要住宅政策及び活動事例を共有する、貴重な場を設けてくださったキム・スヒョンソウル研究院長をはじめとする関係者の皆様に感謝申し上げます。
同時に、お忙しい中、パネルにご参加くださった阿部昌樹大阪市立大学都市研究プラザ所長、ファン・リリン台湾大学教授、プンコッキン香港浸会大学教授、クォン・ジウンミンタルペンイ住宅協同組合理事長、ピョン・チャンフムSH公社社長をはじめ、住居福祉発展のためにお越しくださった皆様にも、心より感謝申し上げます。
住宅は生存の必須条件であり、生活の根幹です。また生活と休息の空間でありつつ体と心の憩いの場でもあり、仕事と生活の持続可能性を保障してくれる最適な根拠地です。住居権は人間なら誰でも享受すべき基本的な権利です。それにもかかわらず、各種災害や貧困、政治・経済的な利害関係によって、今も世界では多くの人々が難民やホームレス、無住宅者であるのが実情です。
ソウルも例外ではありません。今も多くの市民が安全で快適な生活を送るという住居権が保障されておらず、劣悪な住居環境で人間としての基本的な尊厳性と生存権までを失っているという、残念な現実に置かれています。
そこで、ソウル市は人間の尊厳性を担保した基本的な住居権を保障し、快適で幸せな最適の住居福祉の提供を実現するために、最善の努力を尽くしています。また、画一的な量的拡大に重点を置いてきたソウルの住宅供給政策について、内容と質の面でも斬新かつ多様な転換を試みています。
今まで23万戸(6.5%、総住宅数354万戸対比)を供給した公共賃貸住宅は、OECD国家の平均水準である10%以上の供給を実現するために、公共賃貸住宅1段階(2010~2014)の8万戸の供給に続き、新たに8万戸(2014~2018)の供給を進めています。この中で、民間賃貸2万戸は住宅協同組合や民間賃貸事業者の育成などを通じて供給しながら、車両共有型、シェアハウス、モジュラー住宅など様々な類型の賃貸住宅を開発し、供給する計画です。
また、様々な公共サービスを連動していく方向に、住宅政策のパラダイムを新しく変えています。公共賃貸住宅に入居できない次上位階層(潜在的貧困層)を対象に住居費補助支援を拡大し、住居福祉センターの運営を通じて弱者階層に対する緊急住居支援とグループホームを運営しています。このように住居福祉網を緻密に構築し、福祉死角地帯に置かれている住居弱者階層に対する支援を強化しています。
また、区庁や住民センター、福祉館、村の活動家を中心とした民官ガバナンスを通じて、村中心の地域住居ネットワークを構築し、公共賃貸に居住する人達の生活の質と住居満足度を高めています。特に、SH公社を市民とともにする住居福祉専門公共企業に転換し、専門的な住居福祉実行機関としての地位を固めています。これと同時に、賃貸人と賃借人との紛争や葛藤を解消するための賃貸借紛争調停委員会を構成し、標準住宅賃貸借契約書の使用や、専貰と月貰の転換率算定および公表などの先進的賃貸借制度を導入し、住居の権利の保護にも力を入れています。
実際に、ソウルをはじめ、東アジアの多くの大都市が圧縮的な近代化と高度成長を経験しました。特に、70~80年代に高度成長期が生んだ古い建物は、日々増えています。修繕、補修、管理、維持する再生の重要性が高まっています。したがって、ソウル市は量的成長と物理的な開発の時代から脱皮し、都市庶民の生活の基盤を守り、持続可能な都市と市民生活を実現し、ともに暮らしていける都市を作るための都市再生に、市政を集中していきます。開発から再生を通じた記憶の保全、ランドマークづくりから連帯を通じた共有の価値を、住居と都市計画で見せていきます。「私たちが都市をつくるが、その都市は私たちの社会をつくる」という言葉のように、新しい時代を切り開くパラダイムシフトを住居と都市計画で見せていきます。
その地で、その家で、その村で、その町で、その地域で暮らしている市民一人一人の生活を理解し、共感する都市再生を実践します。人が中心になり、共同体が息づく共生と保存の都市再生を実現していきます。地域の歴史や文化資源を保存して活用し、経済・社会・文化・安全を包括する新しい100年、200年を切り開く統合再生の道へと進んでいきます。
本日この場が東アジア各国の住宅政策を共有し、創造的かつ先進的な提案を通じて、人間の住居尊厳性を高める有意義な場となることを願っております。同時に、ソウル市の都市再生政策が歩むべき方向性を新たに見出す契機になることも期待しています。皆様の活発な討論を、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。