原発一基削減総合対策発表
月日:2012年4月26日 会場:ソウル市庁西小門庁舎ブリーフィングルーム
今日私は、「原発一基をなぜ減らすのか」を申し上げる前に「原発一基を減らす意味は何か」をまず申し上げようと思います。
「原発一基削減」は、価値と政策の明らかな転換です。これまでソウルがエネルギー節約都市にとどまっていたとすれば、今後ソウルはエネルギー生産都市に向かいます。これは市民全ての持続可能な人生のための価値ある投資であり、私たちの時代精神を共存共栄に向けて舵を切る作業です。
ソウル市が原子力発電所を一つ減らそうとする現実的な理由をお話します。ソウルの電力自給率は2.8%に過ぎませんが、電力需要は増加しつつあります。ソウルと地域間のエネルギー平等と正義においても深刻な不均衡を見せているということです。また、先の福島原子力発電所の大事故は、隣国に済む私たちに大きな教訓を残しました。私たちが成し遂げてきた全てのものが一瞬のうちに消え去るかもしれないという恐れが、市民の認識の中に広く広がりました。環境問題もまた皆が認識しています。気候変動による被害は、世界市民の共同の課題となりました。予期せぬ電力不足の事態も考慮しなければなりません。ソウルはこれに対して確実な対策を確保しなければなりません。
これから始まる2014年までの「原発一基削減」は、こうした全ての時代的状況に備えるソウル市行政のスタートです。電力自給能力を向上させ、安全で持続可能なエネルギーを確保し、窮極的には温室効果ガスを削減するためのものです。そして私たちの近い将来のための、次世代のための美しい投資であるのです。
では、ソウルは一体どのくらいの量のエネルギーを消費しているのでしょうか?2011年の推計値を見ますと、ソウルのエネルギー消費量は約1700万TOEで、全国の8.1%に該当します。消費分野別では、家庭と商業が58%、輸送部門を合わせると89%が消費されています。エネルギーの種類では、石油36.9%、都市ガス33.4%、電気25.1%で、全体の95%を占めています。
ソウルのエネルギー消費は引き続き増加しています。金融危機による経済危機が起きた2008年と2009年の2年間はエネルギー消費量が減りましたが、2010年に4.4%、2011年には7.9%増加しました。一方、電力消費量は経済危機の時も持続的に増加する様相を見せています。エネルギーを思う存分使う生活が無駄遣いではなく豊かさだと認識され、それがこれまで私たちが描いてきた幸せな日常だったせいかもしれません。
では、ソウルのエネルギー生産の現状は果たしてどうでしょうか。ソウル地域の再生可能エネルギーの生産量は、全国の3.3%に過ぎません。全国のエネルギーの8.1%を消費していることと比較してみなければなりません。再生可能エネルギーの生産は、今後ソウル市がエネルギー自立基盤を確保するために一層努力すべき分野です。
再生可能エネルギーは1990年代から世界的なトレンドとなっています。英国、ドイツ、フランスなど世界の主要国は、再生可能エネルギーの普及を中長期課題としています。発電差額を支援し、義務割当制を実施し、投資税額を控除するなどの再生可能エネルギー普及促進案を策定して施行しています。
その結果はどうでしょうか。ドイツの環境首都であるフライブルクは、回転型太陽光住宅を建設し、消費量の5倍から6倍に達する電力を販売しています。英国のトットネスは、原子力エネルギーはもちろん、石油エネルギーからの独立計画を策定しました。省エネルギー、断熱、太陽光の設置など再生エネルギーへの「トランジションタウン運動」の成功的な事例となりました。
さあ、私たちはどのようにしたらよいでしょうか。ソウル市は「原発一基削減」のスタートを市民の意見から見出しました。
省エネルギーからエネルギー生産拡大の方法に至るまで、市民たちは準備ができていました。既に行動しておられました。ソウル市が市民から勇気と知恵をもらいました。 この6カ月間、専門家諮問団会議、市民ワークショップ、市民大討論会、市民アンケート調査等を通じて、市民団体、企業界、学界、宗教界、言論界など社会の各界各層の意見を聞いて、原発を一つ減らす知恵を集めるべく最善を尽くしました。
先進的な環境都市に比べて一歩遅れたかもしれません。しかし、もっと上手にすることができます。
ソウル市は今日、世界の気候環境首都に向かって待望の第一歩を踏み出します。原発一基削減の希望のビジョンでもあります。
エネルギー自立基盤構築の一環として、電力自給率は2014年に8%を達成し、2020年にこれを20%に引き上げます。このためにまず2014年までに200万TOEに相当するエネルギーを削減します。ここには、現在国内で運営中の最大規模の原子力発電所であるヨングァン(霊光)原発5号機で生産される電力量に相当するエネルギーも含まれます。原発一基削減の具体的な目標は、41万TOEのエネルギーを生産し、159万TOEのエネルギーを削減することです。エネルギー生産の内訳を見ると、太陽光、水素燃料電池、バイオガス、下水熱などを利用して電力2392GW-h、熱エネルギー20万TOEです。エネルギー削減の内訳は、建物エネルギーの効率化、LEDの普及、省エネルギー等を推進し、電力6750GW-h、石油・都市ガス121万TOEです。
政策分野を申し上げると、6分野に分けられます。再生可能エネルギーの生産拡大、建物部門エネルギーの効率化、環境配慮型高効率輸送システムの構築、エネルギー産業の雇用創出、省エネ型空間構造に再編、省エネを実践する市民文化の創出という6分野で推進されます。
先に申し上げた10大核心事業等に市費6360億ウォンと国費2320億ウォンがそれぞれ投入され、民間で2兆3760億ウォンを投資します。合計で3兆2240億ウォンが必要とされます。分野別では再生可能エネルギーの生産拡大に2兆7360億ウォン、建物エネルギーの効率化に3320億ウォンが必要で、事業費全体の95%に該当します。
「原発一基削減総合対策」の推進により期待される効果を申し上げます。
第一に、733万トンの温室効果ガスの削減が予想されます。これはヨイド(汝矣島)面積の約1630倍に達する7330平方キロメートルの山林をつくるのと同じです。
第二に、エネルギー削減量200万TOEを原油輸入量に換算すると、毎年2兆800億ウォンの経済的便益が発生します。これは2016年の経済的便益です。総事業費3兆ウォンは2015年のうちに全額回収されます。
第三に、4万件のグリーン雇用が創出される見通しです。就職活動中の若年層はもちろん中高年層の方にも実質的に役に立つでしょう。
エネルギー需要の削減と再生可能エネルギーの生産拡大を通じた「原発一基削減」総合対策を計画通り推進できれば、2014年までに原発を一つ減らすことができます。一歩進んで2015年から毎年一つずつ原発が減ることを期待します。市民意識はより一層高まっているでしょうし、エネルギーの節約と生産が普及していて、社会インフラもたくさん構築されていると予想されるためです。
「原発一基削減」総合対策は、その趣旨に鑑みて何よりもソウル市民の幸せな参加が前提とならなければなりません。また、ソウル市と中央政府が一致協力して持続的に推進しなければならない事業です。
原発一基削減の核心は、ソウル市民の皆さんです。市民の皆さんのエネルギーの節約と生産に対する認識と実践がソウル、ひいては大韓民国を持続可能な明日へと導くでしょう。その誇りを持てるようにソウル市は全ての行政力を動員します。
また、ソウル市の努力に対して中央政府からも全幅の惜しみない支援を頂けるようお願いいたします。ソウル市も中央政府と協力して明日に向けたエネルギー政策に努めます。ありがとうございました。