- 市民の意見が反映されたデジタル力量実態調査:キオスク担当スタッフの配置や呼出ベルの設置など
- 世代の特性を考慮したデジタル力量教育事業を推進
- デジタル弱者である高齢者向けの様々な方策を樹立
- デジタルネイティブの若い世代とは違い高齢者は基礎から学ぶべき…気楽に受講できる環境づくり
ソウル市は、全国で初めて独自のデジタル力量実態調査を実施し、世代別特性などその分析結果に合わせて高齢者に集中したデジタル教育機会の拡大に積極的に乗り出している。
急速に進んでいるデジタル化や非対面化により、キオスク(セルフ注文決済端末)の前で戸惑う高齢者が増えている中、ソウルデジタル財団が16日に発表した「ソウル市民デジタル力量実態調査」で、55歳以上の高齢者のうち、キオスクの使用率が45.8%にすぎないことが分かった。その理由は「使い方が分からない」「必要ないから」「後ろで待っている人に悪いから」などなど。
今回の調査結果に対する市民の反応も熱かった。特に、コロナ禍で定着した「キオスク」への認識を改善する必要があるとの意見が多くみられた。「キオスクの使用方法が店舗別に異なって不便」という指摘のほか、キオスク案内担当スタッフの配置や呼出ベルの設置の義務化、高齢者を対象とした教育の実施など様々なアイデアが出された。
このような自動化機器の普及により、自分をデジタル弱者だと感じる高齢者が増えていることに注目したソウル市は、今年初めからデジタル格差の解消に焦点を合わせた「ソウル市デジタル力量強化推進計画」を策定・施行している。
①キオスク教育コンテンツの活用、個々人に合わせて行われる教育
まず、高齢者の身体や認知的特性を考慮した面対面の密着教育方式が目を引く。ソウルデジタル財団の「オディナ支援団」による「老老ケア」方式のデジタル教育がそれだ。
一人の高齢者(講師)が一人の高齢者(受講者)をケアする、いわゆる「老老ケア」を受け持つ「オディナ支援団」は、IT力量を備えた高齢者で構成される約100人規模の講師陣のことをいう。スマホの基本やモバイルメッセンジャーなど実生活で使用するデジタル端末の使い方を教える。
*オディナ:オルシン(高齢者)・ディジタル(デジタル)・ナドゥリ(外出)の略。言葉自体に「どこでも、どこからでも」という意味もある。
オディナ支援団の講師は、教育を受ける高齢者の利用施設を拠点に、面対面でキオスクの活用方法を教える。キオスク画面をスマホにそのまま再現したアプリを通じて、証明書自動発行機、ファストフード店、映画館、カフェ、高速バス、ATM、KTX、空港、病院など様々なタイプのキオスクの使用法を練習する。
科学技術部とソウル市が共同で実施している「デジタル・ベウムト(教育場)」でもキオスク教育が行われている。教育課程は基礎、生活、深化、特別課程などに細分化されており、高齢者層、海外出身の人、障がい者などをターゲットにした「デジタル基礎・生活課程」にキオスク活用方法が含まれている。デジタル・ベウムトのオンラインプラットフォーム(
www.디지털배움터.kr)内の「教育資料室」からもキオスクを含めた体感型教育を受けられる。
また、今年4月、ソウル市内の3か所でオープンしたデジタル体験ゾーンでは、講師とサポーターズが常住し、実物大のキオスクを活用した教育を進行している。
大型バス内の移動型キオスクをはじめ、スマートパッドやWifiなどデジタル教育環境が備わった「迎えに行くデジタル教育バス」も現在運用中。高齢者がよく集まるコミュニティーセンターや住宅街のコミュニティーなどを巡回し教育を行う。
②高齢者の人気スポットのキオスク周辺に「デジタル案内士」を配置
ソウル市内の至る所にデジタル案内士を配置し、キオスク使用に不便を感じる高齢者をその場で助ける事業を、今年の7月から推進する。
また、キオスク教育を修了した高齢者が実習できるよう、道探しアプリを利用し官公署の証明書自動発行機やカフェのセルフオーダー端末など、住んでいる地域のキオスクを実際使ってみる「我が町は一日体験場」イベントも実施する。
ソウル市は、デジタル格差の解消範囲を効果的に広めるために民間との協業も推進する。講師や受講者だけでなく、関係団体やキオスク活用サービスを提供する企業、ソウルデジタル財団と力量を合わせた協力モデルを開発していく。
デジタル教育事業の推進に当たり、様々な利害関係者の声を反映することで、事業の満足度を向上させるとともに、デジタル接近性標準制度の拡大、デジタル弱者に対する市民認識の改善キャンペインの展開などを通じて、官民が協力するデジタル包容都市を作っていく計画だ。
パク・ジョンススマート都市政策官は「若い世代とは違い、高齢者の方々はデジタル環境にあまり慣れていないため、基礎から着実に身に着けるデジタル教育の実施が必要である」としながら「高齢者がデジタル機器の使用を難しいと感じる理由の一つが、周りに質問できる人がいないという点だった。高齢者が気楽にデジタル教育に参加できる環境をつくっていきたい」と述べた。