パク市長 北東アジア市長フォーラムでの基調演説‐「夢はたったひとつの地球を守ること」
こんにちは。ソウル特別市長のパク・ウォンスン(朴元淳)です。 2回目となる北東アジア市長フォーラムを主催してくださったウランバートル市のエルデネ・バトゥール市長とアジア財団のデイヴィッド・アーノルド会長に感謝申し上げます。また、お忙しい中、本フォーラムにご出席くださった北東アジア市長団の皆様にも心より感謝申し上げます。 私は昨夜、胸を弾ませながら、夜空に光る無数の星をかきわけてウランバートル空港に到着しました。モンゴルの地に足を踏み入れたのは初めてです。世界中のすべての星が集まるというモンゴル。モンゴルは草原の国です。風と星の国、太陽と湖の国です。果てしなく続く青い草原とまぶしい青空、羊の群れと多くの馬が駆け回り、自然と人間が共存してきた国です。数千年もの間、大自然の偉大さが息づいていた国です。 しかし、太古の神秘を秘めていたこの美しい大自然の国が砂漠化しつつあります。「白い湖」という意味の内モンゴルの「チャカンノル湖」は、砂漠化によって完全に消えつつあります。この67年の間にモンゴルにあった1,166の湖と887の川が砂漠化によって失われたといいます。この100年間の砂漠化の速度は、数千年前に比べ4千倍もの早さだといいます。 砂漠化だけでしょうか。砂漠化による黄砂はどうでしょうか。 気候変動はどうでしょうか。日に日に溶けていく北極の海氷はどうでしょうか。 それによる北極熊の生存はどうでしょうか。 チェルノブイリはまだ死の廃墟と化したままであり、福島もまだ解決すべき問題が多く残っています。 砂漠は保護しなければなりませんが、砂漠化は防がなければなりません。 砂漠は自然の一部であり、元々自然の生態だったので保護する必要があります。しかし、破壊と開発によって草木が生えていた地が砂漠化することは防がなければなりません。 モンゴルの砂漠化は決してモンゴルだけの問題ではありません。地球上に住む全人類の問題です。気候変動に伴う地球温暖化や砂漠化と黄砂、原発事故といったすべての環境問題は、自然が起こしたのではなく、私たち人類が起こした問題なのです。 もはや気候変動や大気環境といった問題は、一国、一都市、一つの町の問題ではありません。モンゴルの砂漠化や中国の黄砂、北極の解氷、ホッキョクグマの絶滅危機といった問題は、ソウルも決して無関係ではありません。ソウル市にも無限の責任があるのです。 従って、本日の北東アジア市長フォーラムのテーマ「東アジア諸都市のグリーン成長」は、東アジア諸都市だけの問題ではなく、地球上に住む世界中のすべての人の問題であり、すべての人の懸案であり、すべての人のテーマなのです。 従って、本日のフォーラムで議論する気候変動対応に関する知恵とノウハウ、グリーン成長によって得た成果は、世界のすべての人々の関心と注目を集めると確信しています。 皆様。私は気候変動に対応するには、何よりも「都市化」に対する新たな企画が必要だと考えます。 北東アジアには、長い歴史を持つ国も多く、またすでに安定化の道を歩んでいる国も、急速な都市開発と膨張が始まったばかりの都市化初期段階にある国も多いです。 今こそ私たちは、近代化と産業化の名の下に破壊と建設に没頭し、コンクリートの道路と建物を建て続けてきた画一的な都市化を改め、「新たな都市化」を企画しなければなりません。すでに建設された都市も再構造化と再生を通じた「新たな都市化」への進化を目指す必要があります。 「新たな都市化」は、気候変動に対応する都市です。 「新たな都市化」は、エネルギー自立の基盤を備えた都市です。 「新たな都市化」は、人間と自然が共存する持続可能な都市です。 ソウル市も例外ではありません。ソウル市は今、「新たな都市化」へ向かう道の上に立っています。都市の再構造化と再生を通じ、人間と自然が共存する持続可能な未来都市への道、気候変動に対応する都市、エネルギー自立の基盤を備えた都市への進化を目指しています。 ソウル市民1千万人とともに生態環境、気候変動、省エネの価値とビジョンを共有し、市民とともに「新たなソウル市」の道を築こうとしています。 ソウル市がどのような(いかなるはほぼ否定形の時しか使いません)変化と革新の道を歩んでいるかご存じでしょうか。 周知の通り、大韓民国民は朝鮮戦争の悲劇を経験した国です。 しかし、大韓民国は戦争の傷跡が残る焼け野原からごく短期間で世界最貧国から世界10位以内の経済大国に成長しました。GDPは1950年代の300倍以上にもなりました。人々はこれを「ハンガン(漢江)の奇跡」と呼びました。そして、その中心にはソウル市がありました。 ソウル市は、人口1千万人の巨大都市に成長し、年間観光客数が1,200万人を優に超えるほど、世界の人々に愛され、世界中から多くの人が訪れるグローバル都市に成長しました。 しかしながら(“でも”は話し言葉)、ソウル市がこのように短期間で高度成長を遂げた影で、環境、エネルギー、都市乱開発といった都市問題が生じるようになりました。 これらの写真をご覧ください。 ソウルの空は1980~90年代、そして2000年代初頭まで、ほこりとスモッグに覆われていました。乱開発によって河川は汚染され、森は死につつありました。 ソウル市は、この問題を解決すべく、長い時間苦悩を重ねました。気候変動とエネルギー問題を解消し、環境的な都市再生によって新たなソウルを築くという夢を抱きました。そして動きました。 公共交通機関の車両の燃料のCNG(圧縮天然ガス)への代替や老朽化した軽油車へのばい煙排出削減装置の取り付け、低公害エンジン改造事業など低公害化事業を推進しました。また、電気自動車や水素燃料電池自動車などグリーンカーの普及に努め、充電インフラの整備も行いました。 何よりも温室効果ガスと大気汚染の主要原因だった自動車の台数削減に向け、自動車中心だった道路を歩行者中心にしました。歩行者専用道路を造成したのです。 こうしたソウル市の取り組みは、粒子状物質(PM10)の濃度を2001年の71㎍/㎥から2014年の46㎍/㎥に下げる大きな成果として現れました。しかし、世界の主要都市に比べれば、PM10の濃度はまだ高い水準です。 このように、大気質改善はソウル市の努力だけでは限界があり、北東アジア諸都市間の連携と履行体制の構築が不可欠です。 ソウル市は、気候変動対応の根本はエネルギー削減だと判断しました。2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、それは確信へと変わりました。そうして始まったソウル市の政策が「原発を一つ減らそう」です。市民の力で原発1基分に相当する電力を削減し、太陽光などの新再生可能エネルギーを生産するという目標を立て、ソウル市はこれを行動に移しました。 市民は家庭と学校で太陽光発電の設置に積極的に参加し、太陽光発電所の建設に賛同しました。節電した分だけ報奨を与える「エコマイレージ」には、ソウル市の人口の6分の1を超える170万人が加入しました。家庭、学校、職場で省エネ・節電は生活化しました。 水再生センターの下水熱や資源回収施設の煙突排熱、小水力などを通じて廃棄されるエネルギーも使用可能なエネルギー源として資源化し、エネルギー消費の56%を占めていた建築物のエネルギー効率も高めました。 2014年6月、市民の積極的な参加により、当初の計画より6カ月も前倒しして200万TOE削減という目標を達成しました。2.5%に過ぎなかったエネルギー自給率を4.5%まで引き上げました。省エネはもとより、約2万人の雇用創出効果も得られました。 それだけではありません。ソウル市は現在、1千カ所の森と1千カ所の庭園の造成に取り組んでいます。1千カ所の庭園は1千カ所の医療機関よりも有効だという象徴的スローガンで市民の積極的な参加を促し、懸命に取り組んでいます。 空き地や建物の屋上でも農業ができる「農業都市ソウル」を宣言するとともに、様々な都市農業教育や博覧会を通じ、都市農家の育成も行っています。 「新たな都市化」の企画による都市再生も環境的に都市と町を生かす方向へ向かっています。ソウル市の中心ともいえるソウル駅にあるこの広大な高架をご覧ください。これは、1970年に造成されたもので、大韓民国の産業化とソウル市の都市化の象徴でした。 45年にわたってソウル市とともに歩んできましたが、老朽化し、寿命を迎えたソウル駅高架の活用をめぐって議論が交わされました。撤去するのか。再生させるのか。私たちは再生を選択しました。索漠としたコンクリートの道路を、自然と人間が共存する歩行者専用道路として再生させる道を選択したのです。 この歩行者専用道路が完成すれば、ソウル市はより自然に優しく、より人間的な、自然と人間が調和する「新たな都市化」の道を進むでしょう。環境生態都市、気候変動に対応する健康的な歩行都市、省エネ都市、エネルギー自給都市「ソウル市」に生まれ変わるでしょう。 皆様。ソウル市は今、このように変わろうとしています。 気候変動に対応する都市、生態環境を保護する都市、持続可能な未来都市へと進化する道を歩んでいます。グリーン都市というビジョンを抱きつつ、同時に成長も図る「新たな都市化」への道を歩んでいます。 もちろん、これらすべてはソウル市民1千万人とともに成し遂げたのです。市民の力で成し遂げた、市民ガバナンスが生んだ結果です。ソウル市を訪れた多くの都市の関係者にソウル市が変化できた秘訣は何かと聞かれるたびに、私は「市民です」「市民がエネルギーです」と答えてきました。 小さな石を湖に投げれば大きな波が起こるように、市民とともに行ってきた小さな行動の積み重ねがソウル市の変化という大きな波を起こしたのです。 ソウル市は今、市を超え、東アジアの変化、世界の変化を目指しています。市民ガバナンスを超え、都市ガバナンスを目指しています。世界の各都市とともに行動しています。 今年4月、ソウル市で開かれたICLEI世界総会で私は会長に選出されました。ICLEIは86カ国、1千都市が加盟する持続可能な発展に向けた世界最大の地方政府ネットワークです。今年の総会には86カ国の240都市から代表団約2千人が参加し、気候変動対応に向けた都市の役割と責任について議論を交わしました。 ICLEI 世界総会で、ソウル市民は1人当たり1トンの温室効果ガスを削減し、2020年までに1千万トンの温室効果ガスを削減すると誓いました。こうした内容が盛り込まれた「気候変動対応に向けたソウル市の約束」を世界の都市代表団の前で宣言しました。 昨年9月、ソウル市に北東アジア地域の13都市が集い、各都市の大気汚染削減目標を設定し、履行状況を共有する共同宣言を発表しました。北東アジア地域共通の問題の解決に向けて各都市が合意した上で具体的な実行に移すことにしたのです。 今年11月には北東アジア大気質改善国際フォーラムが北京で開かれます。それを機に、大気質改善に向けた連携や砂漠化防止など、これまでの連携を今後さらに強化していく必要があります。 ちょうど今年9月に開かれる国連総会(UN Sustainable... Read more
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