生まれ変わる街(東南圏国際交流複合地区の整備)
コエックス(COEX)~タンチョン(炭川)~チャムシル(蚕室)運動場一帯に国際交流複合地区を造成(2023年) 国際業務、MICE、スポーツ、文化・エンターテインメントの4大産業を官民共同で開発 15万平方メートル以上の展示・コンベンション施設と支援施設の造成効果―ソウル市が世界3大コンベンション都市に ハンガン(漢江)にマリーナ施設や公園を造成…市民の暮らしにゆとりを 街と空間の再構成による再生 るで一つの有機体のように、呼吸し、動き続ける都市。張り巡らされた道路は、心臓から伸びた動脈のようだ。都市は生命体のように変化し続ける。 もちろん、都市はそこに暮らす住民のニーズによって変化することもあり、空間が再構成され住民のライフスタイルが変化することもある。 地形は時間の経過とともに自然の力によって変化する。しかし、都市は自然に変化するというよりも、人間の力によって生まれ変わることが多い。特に、ソウル市は立ち遅れた地域を最建築・再開発することで都市のグローバル機能を強化してきた。また、2008年からは文化とスポーツを融合させることで都市の国際競争力を高めてきた。 ソウル100年計画、国際交流複合地区 ソウル市は国際競争力の強化に向け、チャムシル(蚕室)までの副都心圏域を拡大する「ヨンドン(永東)副都心の戦略的空間整備構想」を2008年、策定した。2011年には将来を担うこの地区を「グローバルBESTシティ」として整備する構想を発表した。「BEST」とは、「Business&Convention」「Entertainment」「Sport」「Tourism」の頭文字を組み合わせた造語。2013年には、ソウル3都心の一つであるカンナム(江南)を国際業務とMICE先導地区として育成する「2030ソウル・プラン」を策定した。 一方、ソウル市のパク・ウォンスン(朴元淳)市長は2014年4月、2023年をメドにカンナム・コエックス(COEX)~タンチョン(炭川)~チャムシル総合運動場に国際交流複合地区を造る「COEX~チャムシル総合運動場一帯総合発展計画」を発表した。 都市の中の都市:国際業務、MICE、スポーツ、文化・エンターテインメントが共存 国際交流複合地区は、国際業務、MICE、スポーツ、文化・エンターテインメントの4産業を官民合同で開発する。断絶された空間を環境にやさしい仕方でつなぐ、ソウルの歴代最大の都市再生事業だ。この事業は膨大な経済波及効果をもたらすことがが見込まれている。 1. 公共が開発するチャムシル総合運動場、民間が開発するカンナムCOEX一帯 ソウル五輪が行われたチャムシル総合運動場は1970~80年代に建設され、老朽化が進む。施設の現代化と立て替えは必至だ。 チャムシル総合運動場は、メインスタジアム、サブトラック、野球場、体育館、学生体育館、第1プール、第2プールで構成されている。メインスタジアムは現在の位置にそのまま残して建て替えを行う。学生体育館は市内の別の場所に移転する計画で、野球場などの施設は配置を換え、それによって生じた空間に民間資本を誘致して展示・コンベンション施設、ホテル、ショッピングモール、文化施設を建設する事業案を策定中だ 2. 世界最高レベルのコンベンション都市「ソウル」:Seoul MICE City ソウルは現在、国際会議の開催数ランキングで世界5位だが、国際会議や展示イベントを開催するにはまだインフラが不足している状況だ。 展示・コンベンションセンターの面積は世界ランク20位程度で、ソウルの最大展示・コンベンション施設「COEX」の面積は世界190位程度に過ぎない。15万平方メートル以上の展示・コンベンション施設と支援施設が建設されれば、ソウルは世界3大コンベンション都市となり、数百万人のMICE観光客がソウルを訪れることが見込まれる。国際業務、MICE、スポーツ、文化・エンターテインメントが融合した国際交流複合地区は世界的な名所となるだろう。 3. 断絶した地域の架け橋:カンナム―ソンパ(松坡)、チャムシル運動場―タンチョン、ハンガン(漢江)でつなぐ タンチョンはハンガンの支流で、カンナム区サムソンドン(三成洞)とソンパ区チャムシルドンからハンガンに流入する。タンチョンを境にカンナム区とソンパ区が隣接しており、現在はオリンピック大路が両地区をつないでいる。タンチョン周辺は駐車場として利用されている。 ところが、両地区はそれほど自由に移動できるわけではない。また、タンチョンは、自然を堪能できる水辺空間であるにもかかわらず、周辺に駐車場があるためそのメリットを生かせないでいる。 国際交流複合地区が誕生すれば、3本の道路(オリンピック大路、タンチョン東路、タンチョン西路)が地下に敷かれ、タンチョン周辺の駐車場は別の場所に移転することになる。そうなると、環境にもやさしく、人が自由に移動できる空間に生まれ変わる。 ハンガンの場合も、マリーナ施設と公園が造られることで、より環境にやさしく市民の暮らしにゆとりを与える空間となる。 カンナム―ソンパ、チャムシル運動場―タンチョンがハンガンで繋がれ、憩いとレジャーを楽しめる施設がカンナム地区にできれば、市民の暮らしはもっと豊かになり、人のための空間がさらに開発されると期待される。 市民と一緒に築く100のプラン、国際交流複合地区 国際交流複合地区の整備事業にはソウル市民も携わっている。ソウル市は2014年11月、市民の意見を募集してスポーツ博物館の建設やキャンプ場の設置など47件のアイデアを採択したほか、チャムシル総合運動場の活性化に向け、2015年1月から5月まで「ポスト88チャムシル運動場市民アイデアオンライン公募展」を実施した。ハンガンやタンチョンなど断絶された周辺地域がつながってこそ都市が活性化するという意見が多かった。 ソウル市は2015年4月から9月まで「チャムシル総合運動場一帯都市再生国際公募展」を開催した。国際交流複合地区の中核施設であるチャムシル運動場一帯の開発をテーマに、都市計画、建築、造景、経済関連専門家らを対象に行われた。。新たな価値とアイデアを創出・発掘し、この地域一帯を世界的な名所にするための公募展であった。 世界63カ国から698チームの応募があり、厳正な審査の結果、優秀作3件、佳作5件が選定された。採択されたアイデアは国際交流複合地区マスタープランに反映される予定だ。 世界で最も素敵な、情熱100度のMICE都市を目指して 国際交流複合地区は、大規模な雇用創出や外国人観光客の増加、ソウル域内総生産(GRP)の増加、ソウルのブランド価値の上昇、国の経済活性化など、大きな波及効果をもたらすことが期待される。 国際交流複合地区の先導事業であるヒュンダイ(現代)自動車グループのGBC建設事業の経済波及効果だけでも27年間(着工から完成後20年)で約265兆ウォン、雇用創出効果は122万人と分析されている。自動車産業で23万人余り、建設産業で22万人、宿泊・販売産業で48万人、金融・サービス産業で12万人、金属など機械製造業で約18万人の雇用が生まれる。同期間で1兆5千億ウォン以上の増収増が見込めるのだ。 国際交流複合地区は、2008年の世界金融危機後の失速したソウル経済を牽引すると同時に、未来のソウル経済を支える中核施設となる見通しだ。この地区はソウル市民のみならず、世界の人々が楽しめる新スポットとなる。そして、魅力ある施設がどんどん造られれば、ソウルはハンガンを背景に、日中はビジネス、夜は憩いとスポーツ・レジャーの都市、ゆとりと情熱にあふれた都市に生まれ変わるだろう。
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