メインコンテンツに移動
  • ソウル市ニュースレター購読 刊行物
  • visiting seoul?
T T

[2012] 市長挨拶


人が中心のソウル、穏やかに暮らせるソウル

ソウル市民福祉基準発表 月日:2012年10月22日 会場:ソウル市庁ブリーフィングルーム キム・ミョンス市議会議長、そしてこの場にはご出席されていませんがキム・ヨンミョン教授をはじめとする市民福祉基準推進委員会の皆様。お疲れ様でした。ただ今から、この9カ月にわたって専門家や市の職員、ソウル市民の皆様が一緒になって策定したソウル市民福祉基準を発表いたします。 私が市長に就任して間もないある日、市民から一通の手紙が届きました。障害者で生活保護を受けている方が書いたものでした。どこで何をしているかもわからない娘の所得が増えたために、それまでもらっていた生活保護費が減額されたから何とかしてほしいという訴えでした。私はこの手紙を読んで、何か間違っているという気がしました。そして、こうした理由で受給者から外されるソウル市民の数が現在の受給者の数よりも多いことを知り、市長候補時代にソウル市民の福祉基準をつくると約束した公約を早く実現させなくてはいけないと思いました。 これまで韓国は実に多くの発展を遂げてきました。経済力では世界15位の大国だといわれます。 しかし、皆さんの暮らしの質はどうですか?OECD加盟34カ国の中で、韓国は高齢者の貧困率1位、最低の出生率、自殺死亡率1位です。目を覆いたくなる現状です。開発ばかりに投資を行い、国民の暮らしへの投資をないがしろにしてきたためです。 ソウル市民の皆様の暮らしはさぞかし苦しいでしょう。他の市・道に比べて物価水準が高いためです。住宅の価格や賃貸料は2倍以上高く、教育費も多くかかります。ところが、最低生活費は中小都市が基準で、ソウル市もそのまま適用されています。ソウル市の中での地域格差も広がっています。 さらに大きな問題は、ソウル市民の暮らしがますます苦しくなっていることです。中間層は崩壊し、貧困層は増え、最終的に市民の皆様の暮らしの質は悪くなり続けています。 ですからソウル市の福祉基準が必要です。ソウル市の特性を反映させた福祉の基準をつくり、その実現を目指して福祉への投資、人への投資を増やしてまいります。東京では1960年代に「シビル・ミニマム(Civil Minimum)」という福祉基準がつくられ、英ロンドンでは市民の暮らしの質を高める「ロンドンプラン」が施行されています。 ソウル市民福祉基準は市民が受ける福祉の基準になるので、社会的な合意を得ることが最も重要です。ですから、専門家と市民代表からなる推進委員会で基準案づくりなど重要な決定を行いました。たたき台となった福祉基準の素案は各分野の専門家からなる研究チームが策定し、市の職員は提示された案が実現可能かどうか検討を行いました。そして、何よりも市民の皆様が、政策ワークショップや1千人の円卓会議、ソウル福祉メアリ(こだま)団など、様々な形でこのプロセスに参加してくださいました。 今年2月に作業を開始した市民福祉基準は、4月に研究チームが提示した素案に政策ワークショップと1千人の円卓会議で出された市民の意見を反映させ、予算検討を経てから9カ月目の本日、皆様に発表することとなりました。 こうして誕生したソウル市民福祉基準は、市民なら誰でも受けられる最低基準とより質の高い暮らしを享受できる適正基準、そしてそれを実現するための102の事業で構成されています。市民の日常生活と関わりの深い所得、住居、介護、健康、教育の5つの領域において、皆様の暮らしの質を向上させる福祉憲章となり、ガイドラインの役割を果たすでしょう。 それでは、各領域の福祉基準と事業内容について具体的に説明いたします。 まず所得分野です。最低基準は「ソウル市の特性に合った最低生活費を保障するもの」とし、適正基準は「国際的な貧困線である中位所得の50%以上」としました。 所得分野の福祉基準の達成に向け、ソウル市は様々な事業を実施します。ソウル型基礎保障制度を導入して中央政府の扶養義務者基準と所得・財産基準を緩和し、貧困層19万人に対して基礎生活保護受給者の生活費の50%程度の給付に匹敵する教育・出産・葬祭費を支給します。来年はこれに410億ウォンの予算を投じる計画です。また、働き口の提供が最高の福祉になるため、2018年までにソウル市の最低生活費以下(116%)にいる6千人に対して自立するための就職の機会を提供し、若年雇用2万 5千人、女性雇用2万 7千人、高齢者雇用10万人を拡充します。所得がないのに息子の所得のせいで受給者になれなかった市民も、ソウル型基礎保障制度によって毎月一定の給付金を受け取れるようになり、多少負担が軽くなるでしょう。 ソウル市民が最も心配しているのは住宅問題だといいます。ソウル市民のうち所得下位20%の層では、所得に占める家賃の割合が41.9%にも上ります。所得の半分を家賃で持っていかれたら、どうやって生活していけばよいのか誰でも心配になります。そこで、「賃貸料は所得の30%以下、住居空間は国の最小住居基準以上」を最低基準と定めました。そして、「賃貸料は所得の25%以下、住居空間は4人家族基準で54平方メートル以上」を適正基準として支援することにしました。そのために、2020年までに「住宅在庫の10%を目処に公共賃貸住宅を拡充」し、「住宅バウチャーによる所得補助」により低所得層の賃貸料負担を減らします。そして急増する高齢者と多くの障害者のために住宅とヒューマンサービスを連携させた「高齢者・障害者支援住宅」を2014年から毎年300戸ずつ、2018年までに1500戸供給します。半地下の賃貸部屋で家賃と暖房費を心配しながら寒い冬を過ごしてきた人々が少しでも暖かい冬を過ごせるよう願っています。 韓国はOECD加盟国の中で出生率が最低です。その韓国の中で、ソウル市は出生率最低の自治体です。 なぜ子どもを産まなくなってしまったのか。答えは簡単です。育児が大変だからです。ソウル市の保育所のうち、国公立の保育所は現在10.8%に過ぎず、入所申し込みから1~3年待たなければ空きが出ません。そして、ソウル市の高齢者や障害者の中には、必要な介護サービスを受けられないでいる多くの方がいます。 そんな方々のために「世帯所得の10%以内の支出での介護サービスの利用」を介護分野の最低基準とし、「全ての人が10分圏内で介護サービスにアクセス」を適正基準としました。こうした介護の基準を達成するために、国公立保育所を各洞に2カ所以上設置する計画です。また、保育所利用者の負担費用の適正化に向け、利用者の負担額が50%以下になるよう自治区を通じて促す方針で、乳幼児の保育サービスの量と質の充実を図ります。最低生活費以下の生活をしているのに国の支援を受けられない高齢者には、長期療養保険と高齢者介護サービスの自己負担を支援します。そして、国の活動補助サービスを受けられない1級障害者と障害の程度の重い2級障害者に対して活動補助サービスを追加支援する計画です。体の一部が不自由なのに障害者活動支援サービスを受けられなかった市民が、テハクロ(大学路)で好きな演劇を見られるようになることを願っています。 治療が必要でも経済的理由から医療サービスを受けられなかった経験を持つソウル市民は18.1%に上り、健康面における地域格差も広がっています。こうした問題の解決に向け、必須の保健医療サービスを受けることを最低基準と定めました。そして、市民の健康水準の向上と健康面における地域格差の解消を同時に実現することを適正基準としました。そのために、市民なら誰でも10分以内の距離にある保健所を利用できるようにし、公共保険医療システムを強化して保健医療の死角をなくします。また、家族が介護できない入院患者に、看護師を中心とする無料介護サービスを提供すべく、来年からソウル医療院において「患者安心病院」を試験的に実施します。夜間・休日にも医療サービスを利用できるよう、夜間・休日診療センターを2014年までに100カ所開設します。ある3才の双子のお母さんは、もし深夜に子どもたちに何かあったら遠くの救急病院まで行かなければならず、とても心配したそうです。夜間・休日診療センターの拡充により、深夜でも近くの病院で診療を受けられます。 韓国憲法には、義務教育期間における無償教育の原則が盛り込まれています。ところが、義務教育期間であっても経済的負担により教育の機会を阻まれている人がまだ多くいます。そして何より大きな問題は、同じソウルでも教育環境における地域格差が存在していることです。そこで、ソウル市民教育の最低基準として経済的負担の緩和を通じた学齢期に保障される教育的基本権の享受を定め、適正基準として成人への生涯教育の機会提供を定めました。 教育分野の基準の実現は、教育自治の原理によって教育庁主導で行うべき事項です。従って、教育分野の福祉基準はソウル市教育庁と緊密に協議して共同で策定し、推進に際してもソウル市は教育庁を支援する形で進めます。そして、中央政府の協力を得られるよう、継続的に取り組んでまいります。まずは体験学習費や副教材費など義務教育にかかる追加費用を段階的に軽減し、既に施行中の環境にやさしい無償給食は2014年を目処に小・中学校全体に拡大しつつ、完全無償教育を目指します。 ある小学校4年生のお子さんから、学校で食べる給食の質をお母さんがいつも心配していると聞きました。そして副教材費がかかるのでお母さんに申し訳ないと。小・中学校受益者負担経費ゼロ化事業のおかげで、来年から環境にやさしい給食が食べられ、副教材費も支援が拡大されるので、楽しく一生懸命勉強できそうだと話していました。 ここまで5分野の福祉基準と事業についてご説明しましたが、これを実現する上で最大の問題はやはり予算です。ご存じの通り、ソウル市の財政状況はあまり良くありません。それでも、必要なことはやり抜くという覚悟で、緊急かつ重要な事業をまず施行し、効果の検証が必要な事業はモデル事業として推進します。また、様々な取組みを通じて予算を最小限に抑え、2018年まで人への投資を拡大してまいります。福祉基準を実現する102の事業に必要な来年度予算は1兆6210億ウォンで、教育庁の財源を含めると2兆7370億ウォンです。これは2012年度予算に比べて3580億ウォン、教育庁の財源を含めると7910億ウォンの増加です。現在約26%のソウル市の福祉予算の割合を2014年には30%まで拡大し、ソウル市民の福祉基準を実現すべく取り組んでまいります。 福祉基準を実現するには、ソウル市の取り組みだけでは限界があります。国の法改正や財政支援など、多くのことが必要です。今、所得にソウル型最低生活費を導入するとしても、国レベルで国民基礎生活保護に関する法改正が必要です。小型・低価格住宅の供給拡大を通じ、庶民のマイホーム実現の機会を高めるために、住宅法や建築法の面積基準といった規制を緩和すべきです。公共介護サービス機関と従業者の処遇改善に向け、中央政府レベルでの制度改善が必要です。保健福祉分野の人材の安定供給に向け、中央政府による総定員制を弾力的に適用することが求められます。無償教育の拡大に向けた中央政府の政策決定が必要で、少人数学級の実現のために公立学校の教員採用規模を拡大する必要があります。そして、ソウル市が福祉事業を拡大する上で最大の障害となっている、ソウル市に対する国庫補助率の差別的な適用を是正しなければなりません。 経済が厳しい中で福祉の拡充とは何事かと言われるかもしれません。しかし、福祉の拡大は投資です。多くの専門家が福祉分野の公共支出の拡大は、雇用創出と所得増大、支出増大につながり、ひいては経済成長を後押しすると分析しています。開発事業に比べて二倍以上も高い経済成長寄与率がこれを証明しています。ソウル市民福祉基準を実現することにより、二次的な雇用誘発効果を除いても、2018年までに17万件以上の雇用創出が見込まれます。これによって若年、高齢者、女性の所得が増大し、ソウル型基礎保障制度を通じて低所得層の所得が上がるでしょう。それだけでなく、低所得層の支出増加と医療費負担の緩和により、今後ソウルの経済発展に大きく寄与すると期待しています。 本日発表したソウル市民福祉基準は、市民と共に社会的な合意を経て策定した福祉基準であり、全国初の福祉基準です。これにより、ソウル市の市政は開発中心から人間中心に変わり、市民であれば当然享受すべき権利となります。ソウル市民の福祉基準が韓国民全体の福祉水準を向上させる牽引役となることを期待します。 これまでソウル市民福祉基準の策定にあたりご尽力された推進委員会と研究委員の皆様、そして誰よりも熱心に参加してくださった多くの市民の皆様に改めて感謝申し上げます。 
SMG 1,482

何によって都市を革新するのか

アジア未来フォーラムでの講演 月日:2012年10月16日 会場:ミレニアム・ソウル・ヒルトン 皆様、こんにちは。ようこそいらっしゃいました。ソウル市長のパク・ウォンスン(朴元淳)です。第3回アジア未来フォーラムにご出席の皆様に心より感謝申し上げます。そして、この意義深いフォーラムを準備してくださった方々にも感謝申し上げます。私は本日の出会いと連帯、友情が私たちの街と暮らしをより一層幸せにしてくれると信じています。皆さんもそうでしょう。また、この場にご出席の皆様に、ソウル市民を代表してご挨拶いたします。 本日、私たちはより良い未来を築くために集まりました。 本日のテーマは「2013年リーダーシップの変革」です。時代を導くリーダーシップというのは、集団知性の選択にかかっています。私は本日、皆様にソウルという名の大きく美しい船とその船を導く新しいリーダーシップ、ソウル市民のリーダーシップを紹介しようと思います。ソウルという街がどこへ向かっているのか、どこへ向かうべきか、どう革新すべきかについて話そうと思います。 これまで政府と市長に集中していた権力は市民に委譲されつつあります。そして21世紀には、人類の半数以上が自分のアイデンティティと人生の根拠地として都市を選択しています。 私たちの暮らしの根幹が国から都市へと移り変わろうとしています。都市のほうがより具体的な生活の背景であり、個人の「アイデンティティの根源」となっているからです。「どの国の出身か」というより「どの都市の出身か」のほうが個人のアイデンティティをもっとよく説明してくれる時代になったのです。 20世紀、国が統治する世界秩序は対立と紛争だけを繰り返してきました。これに失望した人々は都市に視線を転じました。国は力を得ようと同盟国を集め、イデオロギーを強化し、国防と愛国心を強調することに力量の一部を集中してきたとすれば、都市は直接的に市民の住宅問題を解決するからです。都市はバスと地下鉄を運行し、教育と文化を増進させることに力量を集中します。上水道の確保に努め、ゴミの分別収集の質を高め、環境と市民一人ひとりの暮らしを管理しています。人々は、国よりも都市のほうが自分たちの暮らしに実質的な影響力を及ぼしていることを直観的に知っています。 21世紀に入り、都市の価値は世界の有識者らによってより一層注目されています。最近、米国の政治理論家であるベンジャミン・バーバー氏からインタビューを受けました。バーバー氏は、私を含め世界30以上の主要都市の市長にインタビューした内容を編集した『なぜ市長が世界を治めるべきか』という本を出版する予定です。都市経済学分野の世界的な権威であるハーバード大学経済学科のエドワード・グレイザー教授は、著書『都市の勝利:豊かに、賢く、エコに、ヘルシーに、そして幸福にする、われわれの最大の発明』の中で、「都市は人類最高の発明品」と述べています。実際に、北京ビエンナーレでは「国家館」でなく「都市館」が新設されました。 本日この場には、都市革新において独自の成果をあげている美しい都市の市民の皆様と市長が参加されていることが、今日の都市の価値をよく表しています。私は、都市間の実質的な交流と連帯が国家間の交流に比べて実質的に市民の人生を変化させ、幸福や満足度を高めるのに寄与すると信じています。 共に模索しなければなりません。世界金融危機以降、ますます複雑化する社会問題や格差と若年失業、コミュニティの解体、自殺率の上昇と出生率の低下といった諸問題の解決に向け、手遅れになる前に知恵と経験を結集して新しい対策を講じなければなりません。 構成員の暮らしの質に目を向ける「都市革新」が必要なのです。では、都市はどのように革新を追求するのでしょうか。 まず、何よりも一人ではいけません。誰か一人の独創的なな発想や才能よりも、大多数の一般市民の考えと実践のほうがはるかに重要です。 ブリタニカに勝ったウィキペディアがなぜ「革新的」なのか考えてみてください。インターネットという「オープンプラットホーム」を通じて立証された「参加の力」がその原動力となったのです。都市革新も同様です。市民が参加して多様な社会構成員の協力を引き出さなければなりません。 真の意味での社会革新は、開放と共有、参加と協力というオープンな革新によってこそ実現可能なのです。 「所有の時代は幕を閉じ、アクセスの時代が始まった」。『エイジ・オブ・アクセス』でジェレミー・リフキンはこう述べています。 「どれだけ持っているか」でなく、「どれだけ多くアクセスできるか」が重要な時代になったということでしょう。こうしたアクセスの時代には、積極的な情報公開が重要です。それが良質の「連結」を可能にするからです。 これまで公共機関は情報公開に消極的でした。行政は公務員に限定された領域だと見なされてきました。しかし、これからは開放・共有しなければなりません。そのような観点から、ソウル市は「情報コミュニケーション広場」を開設しました。市政に関する公共情報をオープンにしたのです。 これは、ソウル市政の透明性を高める効果もありますが、相当な付加価値の創出も期待できます。ソウル市が公開した公共データをIT専門家が活用して市民に便宜を提供する公共アプリケーションを開発した事例は、その第一歩と言えるでしょう。 このようなアクセスの時代は、共有都市を可能にしました。先日、ソウル市は「共有都市、ソウル」を宣言しました。そしてそこには、市民の参加と協力が活発な社会革新の首都を目指すというソウルの意志が込められています。 これまで市民は政策や都市インフラを消費する立場でした。しかし、これからは集団知性の力で自ら必要なサービスをつくり、積極的に参加・協力することで自らの人生を変える、変化の主体となっていくのです。今後ソウル市はそうした市民の目線に立ち、市民が主導する革新都市・共有都市を目指してまいります。 ソウル市は小さなことから革新し、共有の未来に向かって進むでしょう。ソウル市で居住者優先駐車場の10%が駐車場の共有に参加すれば、駐車スペース3,725面の建設効果があり、1,862億ウォンの予算削減効果があります。都市民宿に1千世帯が参加すれば、50の客室がある宿泊施設を20カ所建設するのと同じ効果を生むことができます。公共機関の講堂や会議室など遊休スペースを500個共有すれば、10個の講義室を備えたコミュニティセンターを新設するのと同じ効果を得ることができます。2013年のソウルの共有都市事業への投資額は約16億ですが、期待効果は1675億にも上ります。 また、ソウル市民は時間を共有するでしょう。ソウルは、500年間続いた朝鮮王朝の首都ハニャン(漢陽)であり、2000年前には500年間百済の都だったという歴史を持っています。ハンソン(漢城)百済の保存・復元や漢陽都城の復元、さらに近現代の文化遺産の保存などを通じてソウル市は歴史の生命力を維持するでしょう。 こうした革新による共有の価値は、本格的な「生活の共有」を通じて私たちの暮らしを輝かせるでしょう。町のコミュニティ事業が代表的な例です。子どもたちをみんなで教育すること、文化や食べ物、住宅や健康など共有の概念と共存の価値の中に個人の幸福と関係回復の価値を見い出すでしょう。そうして市民の暮らしに寄与するでしょう。福祉の死角にあって疎外されている人々に市民が関心を持つようになるでしょう。犯罪が減り、様々な社会費用が削減されるでしょう。 本来、都市は共有のプラットホームです。ただし、これまでは都市やソウル市が道路や公園、広場といったハードウェア面で1次的な共有システムを構築したとすれば、これからは物的・人的ネットワークはもとより、知識や情報を共有することで2次・3次の共有システムを構築し、資源を効率的に活用することができるでしょう。 今、都市を再構成しようと考えています。自然と人間、技術と歴史、市民の幸福と持続可能な成長が共存する未来に向け、共有の力で都市を革新していくのです。 ソウル市は共有に有利な都市です。私たちには古くから共有する文化があり、私たちは共有の遺伝子を持っています。それだけでなく、いろいろなものが集中しているソウルでは、共有に必要な時間と費用を削減することができます。ITの発達やSNSの活用が盛んになることで、情報と知識、精神と共感の流通と再生産が絶えず行われています。こうした環境はすべて、私たちの中で関係回復と信頼形成を促進しています。 それでは、このすべての共有と共存はどうすれば可能になるでしょうか。それは「参加」です。真の都市革新の原動力は人、構成員です。情報、知識、思考、経験の共有がそうした参加の土台となるでしょう。 私は、このような共有と革新、市民参加において、何より過程を共有することが重要だと考えます。過程が共有されなければ、生命力を保証することができません。あらゆる行政は結果ではなく過程です。また、そうした過程の共有を通じてこそ、多様な主体と長期的かつ真の協力的ガバナンスを構築することができます。 ソウル市は今後、市民に参加を呼びかけ、政策と予算のすべての過程と結果を共有していきます。来年度予算の500億ウォンは、住民参加予算制となりました。長期的なソウル市の未来像「ソウル2030」を描く活動には、ソウルプラン市民参加団が参加します。市民の暮らしの質を測る「市民福祉基準線」にも「1千人の円卓会議」が参加しました。 これがソウル市の計画です。こうした革新と共有は官の主導ではなされません。ソウル市は中間支援機関の役割のみ担当します。世界の流れがそうであるように、すでに多くのソウル市民の皆様が参加しておられます。自分たちの人生の方向を転換し、共有の未来に向かってともに進んでおられます。 本日この場には、革新と共有、転換都市と都市再生において豊富な経験をお持ちの方々がいらっしゃっています。この場にいらっしゃるすべての方は、既に立派なソウル市民であり、ソウル市民の良き仲間であり、先輩でいらっしゃいます。そんな方々と共にソウルが進むべき方向性を共有できることを嬉しく思います。良い友情を分かち合う場になるよう願っております。 そうしてソウル市が市民を幸せにすることを願っています。最後に、ソウル市と皆様による都市革新の成功を祈ります。ありがとうございました。
SMG 1,354

農作業は「世の中で最も大事なことを教えてくれる教科書」

光化門(クァンファムン)稲刈り行事 月日:2012年10月6日 会場:光化門広場 お会いできて嬉しいです。ソウル市長パク・ウォンスンです。大韓民国の中心、ソウルの中心であるここ光化門広場に黄金の稲穂が実りました。ビルと車両で埋め尽くされた都市の真ん中で「生命の厳かな尊さ」に向き合うことができるだけで、実に感動的だと言えます。 今年の春、何人かの市民が光化門で米づくりをしたいとおっしゃいました。その意見を聞いて、コンクリート天国の都心で農作業ができるのかと疑問を持つ方たちもいました。心配と期待の中で箱を畑とみなして田植えを行い、セジョン(世宗)文化会館の前で稲を育て始めました。この春の日照りに耐え、真夏の猛暑も乗り越えました。そして今日、このように汗の結実を収穫する刈入れを行うことになりました。その間ご苦労された光化門の農夫たち、そして空と風と太陽全てに感謝いたします。 6月にソウル市は今年を都市農業の元年と宣言しました。ここ光化門とノドゥルソム(島)で田植えを行い、ソウル各地の農園で作物を育てました。今日の稲刈りと脱穀のイベントは、ソウル市無形文化財第22号であるニンニク農謡を通じて、先祖が行っていた伝統的な方式で実施し、伝統を伝えていく機会でもあります。 私は慶南(キョンナム)昌寧(チャンニョン)の農夫の息子です。幼い時から父について畑に出ては、種もみが芽を出して、田植えをして、稲が熟して穀物となる長い過程を見て学びながら育ちました。農作業を通じて汗を流す労働の敬虔さを知り、雨風の中でも結実を成し遂げる姿を見て生命の尊さに気づきました。私にとって農作業は「世の中で最も大事なことを教えてくれる教科書」でした。私はソウルで行う都市農業を通じて、まさにこのような気づきを共にしたいと思いました。また、食糧の自立を目指し、都市と農村の共存の道をつくるきっかけとなることを願いました。本日、ソウルの中心である光化門で収穫できることになり、私の願いが無駄ではなかったと信じます。 今日収穫する箱で育てた稲7千株は、全国で優秀米を生産した76の基礎自治体とソウル地域の19の農協が共に努力した結実です。遠くから駆けつけてくださった地方自治体とソウル農協関係者の皆さんに感謝の言葉を伝えます。この一粒一粒の米が都市と農村を調和に導く新しい種となるでしょう。 今日収穫する光化門米でつくったご飯の味に期待しています。どうですか?市民の皆さんも期待しておられるでしょう?皆で一緒に刈り入れを始めましょう。ありがとうございました。
SMG 1,205

ソウル市は、100年の未来を見通してその第一歩を踏み出します

ソウル市未来遺産保存委員会委嘱式 月日:2012年10月5日 会場:ソウル市庁懇談会場 こんにちは。ソウル市長パク・ウォンスンです。文化・芸術、歴史、建築、産業、言論など各界各層を代表する方々をこの場にお迎えし、「ソウル市未来遺産保存委員会」を発足でき、大変嬉しく思います。 100年後のソウルの大切な宝物をつくっていく「未来遺産プロジェクト」に意を共にしてくださったキム・ハクチュン委員長をはじめとする委員のお一人お一人に心より感謝申し上げます。 今日は、委員会が正式にスタートすると同時に、「未来遺産プロジェクト」が本格的に発足する意味のある場です。 ソウル市未来遺産プロジェクトは、「これ以上遅れてはならない」という危機意識の中で始まりました。 超高速成長都市であるソウルは、数多くの近現代歴史文化遺産が再開発や建て替えなどで破壊され、消えている実情です。また、文化財保護法の保護対象ではない近現代文化遺産は、何の保護措置もとられないまま、消失しています。 そこでソウル市が乗り出しました。これ以上遅くなる前に、たとえ現在は文化財として保護されなくても、50年、100年後には文化財として指定される可能性のある潜在的価値を有する遺産を探し出し、保存しようと思います。 今日、ご出席いただいた未来遺産保存委員の皆さんが、ソウル市の「未来遺産プロジェクト」がきちんと役割を果たせるように、運営方向を正しく設定し、諮問してくださるよう期待しています。 また、このプロジェクトは、法やソウル市が一方通行で主導していくのでなく、市民と共に協力する事業です。市民、民間団体、自治区などが提案した保存対象を委員会で選定し、ナショナルトラスト団体と協力する過程を経ることになります。 様々なストーリーを持つ20世紀ソウルの姿をしっかり保存し、未来世代にそのまま継承していくことによって、ソウルの歴史と文化が途絶えることなく続き、観光資源として活用されることを希望します。 そのような意味で、今日は、ソウル市が100年の未来を見通してその第一歩を踏み出す日です。この意味ある歩みを共にしてくださるソウル市未来遺産保存委員会の委員の皆さんに改めて深く感謝申し上げ、皆さんのご支援とご協力をお願いいたします。ありがとうございました。  
SMG 1,400

歴史は共同繁栄と南北平和の道を歩み続けます。

10・4南北共同宣言5周年記念の挨拶 日付:2012年10月4日 場所:韓国プレスセンター こんにちは。ソウル市長、朴元淳でございます。イ・ビョンワン理事長、イ・へチャン代表、そして、この場にお越しくださいました各界のご来賓の皆様、歴史的な「10・4南北共同宣言」が採択されてから5周年を迎えました。半世紀にわたる南北分断の歴史において5年前の今日は、本当に歴史に残るような意味深い日として脳裏に焼き付けられています。 国家元首としては初めて、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領ご夫妻が軍事境界線を歩いて越えるという胸が熱くなる瞬間を私たちは皆、鮮明に覚えています。南北の首脳が7年ぶりに再び握手を交わした瞬間から、百花園迎賓館で両首脳が膝を交えて行った会議と歴史的な合意書調印の場面に至るまで、その時の記憶がまるで昨日のことのように鮮明に蘇ります。 6・15南北共同宣言から始まり、10・4南北共同宣言へ続いた南北首脳の平和に向けた志は、両国民に朝鮮半島における永久平和が可能だという希望を、さらには半世紀を越える分断の壁を取り払う日がそう遠くないという可能性を見せてくれました。 10・4南北共同宣言は南と北が政治、軍事、経済、社会、文化、外交など、社会全般において交流と協力を深めて発展させるための具体的な第一歩でした。また、南と北が一つの民族共同体として未来へ進むための実践的な計画案となりました。相互尊重と信頼に基づき、南と北の共同繁栄と社会・文化的な同質性を取り戻すために、積極的に協力していくことで合意する歴史的な約束でした。 同宣言の意志と内容が継承されていたなら、北東アジア情勢が急変しつつある今日、朝鮮半島情勢は大きく変わっていたかもしれません。より柔軟な政策で未来を見据え、お互い歩み寄り、朝鮮半島の平和と南北間外交の歴史はさらなる一歩を踏み出せたはずです。 しかし、今の南北関係は再び昔の冷戦状態に戻ってしまいました。鉄道や道路は塞がり、 金剛山観光といった人的交流も中断されました。何より、かけがえのないわが国の国民と兵士らが犠牲になりました。これら全ての痛みは、私たち自らがより敏感かつ慎重に解決していかなければならない南北関係において、はっきりとした主体になれなかったことを如実に物語っています。周辺諸国と北朝鮮との外交力において、韓国はリーダーシップを失ったという印象を拭えませんでした。 昨年末、北朝鮮も大きな変化を経験しました。5年前南北共同宣言のもう一人の主役だった金正日総書記が他界し、その後を金正恩第一書記が継ぐ新しい後継体制がスタートしました。 しかし、外的な環境の変化にもかかわらず、依然として朝鮮半島では無駄な対立や破滅的な対決の言葉が後を絶ちません。平和と和合に向けて努力してきた、数え切れないほど多くの方々が流した汗と涙の意味が色あせているようで、残念でなりません。 だからといってこのまま諦めるわけにはいきません。一千万のソウル市民の安全を守るべき責務のあるソウル市長の立場からしてはなおさらです。ソウルの持続可能な発展と市民生活の安定を考えると、南北間の平和と共存に向けた「10・4南北共同宣言」をどう実践すべきかに対する悩みは、より深い意味を持って胸に迫ってきます。ささやかなことですが、ソウル市レベルでソウル平壌サッカー試合、ソウル市立交響楽団の平壌公演を提案したのも、同宣言の交流と協力、民族の同質性を取り戻すという精神を受け継いでの措置でした。 統一と平和、そして共同繁栄は、持続可能な明日を切り拓くための基本条件です。さらには、民族的にも時代的にも当然すべきことです。いかなる政治的、経済的な利害関係も、それを越えることはできません。その道を歩むためには相手をどんな存在として受け入れるかが重要になってくると思います。ますます厳しくなる北東アジア情勢において、北朝鮮を打倒すべき敵とみなすのは愚かなことだと思います。 南北共同宣言という大変意義深い宣言の趣旨を改めて確認する本日、我々は再びスタートラインに立たなければなりません。冷戦と破壊、葛藤と対立が続いた時代に別れを告げ、平和と交流を通じてソウル市民、ひいては韓国国民の生活に安定をもたらすよう努力するときです。そのために我々皆の知恵と志、勇気と信念が一つに結集されることを願ってやみません。そうしてはじめて、歴史は共同繁栄と南北平和の道を歩み続けていくものだと確信します。ご清聴、ありがとうございました。
SMG 1,377

路地商圏と在来型市場の保護は社会的支出でなく投資

路地商圏守り隊懇談会 月日:2012年9月26日 会場:ソウル市庁多目的ホール ソウル市新庁舎にようこそいらっしゃいました。ソウル特別市長のパク・ウォンスン(朴元淳)です。秋夕(中秋節)を目前に控え、いつにもまして市民の皆様も財布が気になる時期に、こうして意義深い席に招いてくださいましてありがとうございます。民主党のムン・ジェイン候補とホン・ヨンピョ議員、そして区長、市会議員の皆様、ご来賓の皆様、わざわざお越しくださいましてありがとうございます。 ソウル市はこれまで路地商圏と在来型市場の商人たちの生計を保護するために様々な政策を模索してきました。この春から大手のショッピングモールとスーパーに対して月に2日(第2・第4日曜日)の営業を規制し、路地商圏を保護しようとしました。しかし、裁判所の判決により、3カ月足らずで中断した状態です。大手スーパーの義務休業を実施した期間は、在来市場と路地商圏の売上が47%も上昇したというソウル研究院の調査結果が発表されたのに、とても残念です。 現在、各区で条例を見直しているところですが、各区長と市会議員の方々が積極的に協力してくださることで、早期に義務休業が再開されることを願っています。また、ソウル市では大手スーパーの品目制限を実施する案も検討中です。路地商圏保護のために先進国では様々な対策が模索されています。ドイツの都心では大手スーパーが見当たらず、街と街の境目の地域にしか建設することが認められていません。日本とフランスでは、大手スーパーを建設するには都市計画委員会の承認が必要です。ソウル市は事後措置をとっているので、現実的に多くの困難が伴います。 現在、全国の30%は自営業者です。彼らが崩壊すれば、社会全体が崩壊します。路地商圏と在来市場の保護は、社会的支出ではなく投資だと思います。 路地商圏と在来市場の保護は、社会の共生を模索する道です。大手のショッピングモールとスーパーを規制しようというのではなく、大企業と路地商圏が共存できる道を探すのです。  本日この場にお集まりの皆様の知恵を結集し、共存の道を模索しましょう。ありがとうございました。 
SMG 1,077

新しい人生設計のための居場所を見つけてください

2012ソウルシニア雇用エキスポ開会式での挨拶 月日:2012年9月25日 会場:SETEC シニアの皆様、お会いできてうれしいです。ソウル市長のパク・ウォンスン(朴元淳)です。こうして新しい人生を探そうと努力し、いつも若い人々の手本となる意欲的なシニアの皆様に心より尊敬の念を表すとともに、シニアの雇用創出に積極的にご参加くださった多くの求人企業関係者の皆さんに感謝申し上げます。また、この場にご出席くださったキム・キオク保健福祉委員長や大韓老人会ソウル市連合会のファン・インハン会長、ソウル特別市高齢者名誉副市長のパク・ジョンファさんらご来賓の皆様にも感謝申し上げます。特に、日頃から社会貢献活動を先導し、今回のソウルシニア雇用博覧会を共同開催し、内外両面から惜しみなく支援してくださる柳韓キンバリーのチェ・キュボク社長にも心より感謝申し上げます。 ソウル市の高齢者人口は2011年に104万人となり、ソウル市の人口全体の10.2%も占めています。特に2010年からベビーブーム世代の退職が本格的に始まり、その世代を含めた高齢者に対する総合的な福祉対策が必要な時期です。 ソウル市は「お年寄りが幸せに暮らせる100歳都市ソウル」を目指し「ソウル市高齢者総合対策」を策定中です。多くの高齢者と福祉専門家、市民の意見を取り入れ、10月中に発表する計画です。 今回の対策の中で、何よりも重要で高齢者が最大の関心を寄せるのは、雇用だと思います。雇用は世代を問わず最も重要な福祉です。 ソウルシニア雇用エキスポも高齢者に様々な雇用を提供するために企画されたイベントです。無料給食補助要員や認知症・うつ病の老老介護事業など公共雇用事業1150件の他にも、民間企業126社が2千件の雇用を紹介していますので、シニア層の適性や特技を生かせる仕事が見つかるのではと期待しています。また、就職・起業教育やコンサルティング、成功事例セミナーといった就職支援プログラム、シニア層が楽しめるサブプログラムを通じてシニア層に雇用支援とともに様々なサービスを提供する場です。 この場に参加された元気なシニア層の皆様が新しい人生設計のための居場所を見つけることを願いつつ、これからも働く喜びを通じて、より一層活気に満ちた元気な老後を送られることを祈ります。 ソウル市は、シニア層の皆様が幸せに暮らせる街を目指し、絶えず取り組んでまいります。ありがとうございました。 
SMG 1,952

共有経済は明日のための新しい経済機会

共有都市ソウル記者説明会 月日:2012年9月20日 会場:ソウル市庁西小門庁舎ブリーフィングルーム 本日私は「共有都市、ソウル」の開始を記者の皆さんに申し上げ、市民の皆さんと共に「共有」しようと思います。時代的共感と認識の共有、市民参加なしには真の変化が不可能なためです。 それでは「共有」とは何でしょうか?各自持っているものを必要な人と分け合うこと、共同で使って一緒に消費すること、閉鎖されている資源を公開し、開放して一緒に使うこと、眠ったままの資源の価値と効率を上げること。このようなことを私たちは「共有」という概念で一括りにすることができます。 ところで、未来の解決策と言われる「共有」という概念は、実は私たちにとって全く新しい概念ではありません。私たちには古くからの「共有の根っこ」がありますね。わずか数十年前でも、テレビがある家は多くありませんでした。村の人々がテレビのある家に集まって一緒にテレビを見るのはありふれた夕方の光景でした。このような資源の共有は必須でありながら自然な文化でした。これは貧困を克服する方法でしたが、隣同士の絆を強くしました。何より自然発生的であり人間的な福祉となっていました。 私たちも以前は食事をつくったら近所の人におすそ分けしていたでしょう?このような共有が、単なる美徳レベルにとどまってはいけません。「共有」を上手にデザインして制度化する必要があります。 それだけでしょうか?大変なことをする時は互いに助ける助け合い文化がありました。それが、産業化、都市化といった社会の速い変化により、私たちの共有文化は急速に消えていき、私たちは大変なことどころか、日常の些細なことさえ、一人でしなければならない孤独な生活を送ることになりました。 しかし、最近は再び共有の時代が到来しています。2009年のアメリカ発の世界経済危機が契機となりました。所有でない共有に基盤を置いた共有経済が浮上し始めました。特に、共有経済の基盤であるITインフラが発達したサンフランシスコで始まりました。個人的には実に印象的な場面として記憶しています。インターネットを通じて空き部屋を旅行者に共有する「エアビーアンドビー」は毎日数万個の部屋を仲介し、一年間に192カ国の2万7000の都市で100万人以上が利用するという驚くべき成果を出しています。多様な道具と工具を貸すことで単純なレンタルを超えてそれ以上の技術を共有するアメリカの「ツールライブラリー」は、公共図書館に設置されたものだけで50カ所以上があります。自動車を共有する「ジップカー(Zipcar)」等は既に立派なビジネスとして位置を確立しました。 このように伝統的に所有の領域だった自動車ビジネスも所有から共有へと進化していて、アメリカの自動車メーカーもカーシェアリング会社に投資したり、協力事業を進めたりしています。未来のための選択ですね。 ご覧のように共有ベンチャーはITを基盤としています。情報の共有とアクセスが容易になったのです。これは「共有経済」が立派なビジネスとして位置を確立する基礎となりました。これについてハーバード大学法学部のローレンス・レッシグ教授は、「財貨を所有せずに共有、交換、賃貸、活用する協力的消費を共有経済」と呼んでいます。学界で本格的な議論が始まったのです。 市民たちも既に動いておられました。カーシェアリングをする「グリーンカー」、子ども服を共有する「キップル」、食の共有と運動を一緒にする「家ご飯」、旅行者のために宿を共有する「ビーアンドビーヒーロー」など、韓国の共有企業も元気に育っています。 「所有の時代は終わった。今はアクセスの時代が近づいている」。ヨーロピアンドリームの著者、ジェレミー・リフキンの言葉です。今や世界的な識者たちが共有経済に注目しています。2009年、タイムズ誌は世の中を変える10大アイディアに「共有経済を通じた消費文化」を挙げていました。 それでは、ソウル市はなぜ共有に注目するのでしょうか?ソウル市は共有経済を明日のための新しい経済機会、解決策の一部だと見ています。ソウル市は「共有」の文化が広がることで、失った絆と共同体の回復ができると信じます。またこれを通じて都市の安全と福祉などに支出される社会的費用と行政予算を節減できるでしょう。 そうです。都市は本来、共有のための枠組みです。今まで都市は1次的な共有のためのインフラを構築してきました。道路、公園、市場、住宅、図書館などが代表的なケースでしょう。 今は2次共有の時代が到来しました。物と空間の共有から情報と知識まで共有されています。都市政策もまた、2次共有まで拡張されなければなりません。自分が勉強して人の為に与える社会、自分の得にならないと動かない姿勢ではなく、進んで協力して何かを残す共有社会、共有経済、「共有都市、ソウル」。このようなソウルのほうが、私たち皆にはるかにプラスです。 まず、ソウル市はソウル市と自治区、傘下機関が持つ資源の公開と開放による共有を始めたいと思います。共有という哲学を土台にした政策と事業を「オープンソウルプロジェクト」といいます。現在までソウル市の自治区で216個の講堂と会議室を開放しました。今年7月初めから開放しましたが、12月までに500個以上の空間を追加で開放する計画です。ソウル市の52個の遊水池は賃貸住宅の敷地や寮、公園および生活体育センターなどに活用します。また、ソウル市では23カ所のおもちゃ図書館も運営中です。10月6日には市民の皆さんと市長公館も共有します。遊びにきてください。それだけではありません。既に情報疎通広場を開いて、行政情報、公共データ、会議資料を共有しています。段階的に拡大していく方針です。 このような公共情報の共有は、社会の信頼と透明性の確保につながります。それだけでなく、市民の皆さんは公共情報を活用して莫大な付加価値をつくり出すことができます。ソウル市が公開した公共情報を活用してITの専門家がアプリケーションなどをつくるキャンプを開催し、その結果として市民の皆さんが便利に使い、共に参加できるアプリケーションやウェブがつくられました。代表的に「ソーシャルイノベーションキャンプ」で1等を受賞した「ハッピースペース」は、ソウル市が公開した公共機関の遊休空間情報に基づいて空間共有プラットホームをつくったものです。今後このプラットホームを通じて公共機関だけでなく民間の参加も活性化すると期待しています。 その効果を少し具体的に見てみましょう。居住者優先駐車場の10%だけでも駐車場の共有に参加すれば、駐車スペースで3725台分の建設効果をもたらし、1862億ウォンの予算削減効果があります。外国人観光客が持続的に増加しているでしょう?1万5千ある客室の数が不足することが予想されています。都市民宿に1千世帯が参加すれば、50個の客室がある宿泊施設を20軒建設するのと同じ効果があります。これは特に、引退したベビーブーム世代が新しい経済活動に参加するきっかけになります。公共機関の講堂や会議室などの遊休空間を500個共有するとしたらどうでしょう。10個の講義室を備えたコミュニティセンターを25棟新設する効果を得ることができます。 続いてソウル革新企画官が具体的にお話しますが、2013年に推進する9個の共有都市事業の経済的効果を合計すると1675億と推定できます。それに必要なソウル市の予算は16億に過ぎません。 こうした「共有都市、ソウル」はソウル市単独では実現できません。市民の参加と官民の協力が欠かせません。企業、市民社会、自治区など社会の多様なセクターが参加して共有の概念が広がっていけば、経済的、社会的、環境的問題を解決して新しい価値をつくり出す、真の意味の「共有都市、ソウル」が実現するでしょう。特に積極的に参加する自治区の場合には、ソウル市でも意志を持って支援するようにします。 今回の発表は開始に過ぎません。ソウルが共有都市に向かう道、最初の一歩を踏み出しました。今後市民の皆さんが積極的に参加できるように多様な方法とシステムをつくります。 市民の皆さんは十分な力量を持っていると信じています。ありがとうございました。
SMG 1,795

動物は共存すべき友です

「ソウル市ペット里親探しセンター」オープンセレモニーでの挨拶 月日:2012年9月17日 会場:ソウル大公園総合案内所 こんにちは。ソウル特別市長のパク・ウォンスン(朴元淳)です。ソウル市ペット里親探しセンターのオープンを心よりお祝い申し上げます。日頃から動物を愛し、本日この場にご出席くださったご来賓の皆様に心より感謝申し上げます。 現代は、ペット飼育者時代だといわれます。つまり、私たちは動物と共存しているのです。ソウル市は、ペット里親探しセンターの設置とともに動物支援課も新設します。現在、世界的な保護魚種で違法に捕獲されたミナミハンドウイルカの「チェドリ」を済州道近海に返すために適応訓練をしているところです。 ある人は言います。ソウル市長はなぜ動物保護に熱心なのか。人気とりではないかと。そう考えることもできますが、事実は違います。私が動物にも福祉があるということを知ったのは1994年頃です。当事弁護士だった私は初めての留学を決意し、英国のオックスフォード大学で学んでいたのですが、当時ロンドンで「動物の福祉」のためにデモをする多くの人を目にしました。韓国では人権すら定着していないのに動物の権利だなんて。戸惑いと同時に不思議な感覚を覚えましたが、興味を感じて学んでみることにしました。英国で動物の権利に関する論文や研究資料を収集し、韓国に帰国した後に動物の権利に関する論文を書きました。 戦争の廃虚の中から急激な経済成長を遂げた韓国では、動物の福祉や権利について語ることに慣れていません。しかし、今や韓国も経済規模が世界で10本の指に入る先進国になりました。私たちも社会の品格を考えるべき時代になったのではないでしょうか。 わが家には「ソウル」と「ヒマン(希望)」という二匹の珍島犬がいます。夜遅くくたくたになって家に帰ると、その二匹の犬が走ってきて私を迎えてくれます。私が脱いだ靴下を取り合って遊ぶこともあります。ペットを飼ったことのある方はご存知でしょう。その喜びを。家族から感じる愛情、癒し、エネルギーをペットからも感じることができるのです。 動物は私たち人間と共存すべき友です。私たち人間に人権があるように、動物も生命を尊重されるべき権利を持っています。友である動物の権利を守るのは私たち人間です。ソウル市ペット里親探しセンターはその第一歩です。私たち人間と共にこの時代を生きるすべての構成員が、傷つくことなく、調和をなして共存する品格ある社会。それこそが幸せな社会ではないでしょうか。そんな気持ちで本日、ソウルペット里親探しセンターをオープンします。 ペット里親探しセンターのオープンに際してご尽力くださった方々、そして動物を愛する市民の皆様に心から感謝申し上げます。 
SMG 1,164

生きる楽しさがある幸せなソウル、互いに助け合って生きる持続可能なソウル

地域共同体総合支援センター開所式の祝辞 月日:2012年9月11日 会場:地域共同体総合支援センター 今日この場はソウル市の地域共同体事業の第一歩です。地域共同体総合支援センターの開所式に来てくださった皆さんを歓迎します。ありがとうございます。自らの人生を通じて地域の可能性と大切さを証明してくださった様々な地域住民の皆さん、また、活動家の皆さん、ありがとうございます。また、ソウル市の地域共同体事業が進むべき正しい道、幸せな方法について惜しみなく助言してくださった共同体委員会の委員、ソウル市議会のソン・ベクチン副議長を含む市会議員の皆さん、進んで地域行政を展開してくださったカンソ(江西)区のノ・ヒョンソン区長、ウンピョン(恩平)区のキム・ウヨン区長に深く感謝申し上げます。 今日この場で「ソウル市の地域共同体基本計画」が初めて発表されます。これまで9カ月という期間、ソウル市民に会って対話し、活動家と共にその方法を模索した、また、既存の地域を綿密に検討したソウルの各地域に対する市民の記録と夢に関する内容が盛り込まれています。ぜひご期待ください。 「地域共同体総合支援センター」は、市民の立場から、長い間の経験を基に運営されるでしょう。事業案内と教育において各地域の計画策定と実行管理まで、事業の全段階を支援する中間支援組織となります。その活躍を期待しています。 ソウル市の地域共同体事業は「生きる楽しさがある幸せなソウル、互いに助け合って生きる持続可能なソウル」を目標としています。ソウル市は地域共同体事業で互いの人生と記憶がとどまる空間づくり、隣人の人生を世話する文化づくり、市民中心の自治・文化・経済活動が循環しながら一定水準の自足が可能な人生の枠組みについて検討し、提示していきます。 既にソウル全域240カ所で住居地を根幹とした多様な共同体活動がなされています。そのうち85カ所は行政の支援なしに住民同士で地域の議題を発掘して、多様な活動を展開しています。 このようにソウルにおいて地域は可能な夢であり、個人的には私の長い間の夢です。事業は常に市民を後ろから支えるものであり、地域共同体の主人公は常に市民です。 ソウル市民が孤独を感じないように願っています。 それが私たちを成長させるでしょう。ありがとうございました。  
SMG 1,582

あなたは大韓民国の誇りです。

報勲記者説明会 日付:2012年8月14日 場所:白凡金九(ペクポムキムグ)記念館 ご来場いただいた光復会の愛国志士の皆様、朝鮮戦争、ベトナム戦争に参加された元兵士の皆様、そして軍人、警察、民主化運動に参加された国家有功者(国のために尽くした人)の皆様、お越しいただき、誠にありがとうございます。 私は本日、ソウル市の報勲総合計画(報勲:国のために尽くした者の功績を称え、報いること)を発表する予定です。もともと報勲政策は中央政府の仕事であり、自治体の主な業務ではありませんでした。にもかかわらず、ソウル市が本日この場を設けたことには特別な理由があります。 私は今年6月、顕忠日(戦没者追悼の記念日)を迎え、本日この場にもお越しいただいた愛国志士ソ・サンギョさんのお宅にお邪魔させていただきました。その日、私は非常に恥ずかしい思いをしました。ソ・サンギョさんは、光復会の初代会員として、我が身を顧みず国の独立のために尽されました。ソウル市にはソさんのほかにも43名の愛国志士の方がいらっしゃいます。その方々のご献身のおかげで、今の韓国があるはずなのに、我々はその方たちのご功績を長らく忘れかけていました。ベトナム戦争への参加から40年余りが経った今でも、枯葉剤の後遺症に苦しんでいらっしゃるカン・ムングさんのお宅にも伺いました。月18万ウォンの国家有功者年金が支給されているという理由から、基礎生活受給者の対象から外れ、厳しい生活を余儀なくされていました。とても心苦しい思いでした。 危機に瀕している国を救うため、己の犠牲も厭わず戦ってくださった国家有功者の皆様。国は今その方々にどんな形で補償しているのでしょうか。私たちはあまりにも長くその方々のことを忘れてはいないでしょうか。彼らの犠牲や献身を、遠く過ぎ去った歴史の一ページに過ぎないと思ってきたのではないでしょうか。 とても恥ずかしくてなりませんでした。そして本当に申し訳なく思いました。そこでソウル市はその方々のご功績に報いるために動き出しました。国を守り、現在に至る韓国の歴史を紡いでくださった方々へ恩返しをすることに、中央政府もソウル市も積極的に取り組むべきだと思います。ソウル市の財政は厳しいですが、国家有功者の方々に恩返しをして生活を支えることは、私たちが当然すべきことであり、さらには未来の世代にしっかりした価値観に基づいた愛国心を植え付けさせる近道だと思いました。 皆様は韓国の誇りです。日本の植民地時代から朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして民主化運動に至るまで、社会のために己の命をも惜しまなかったあなた方がまさに今の韓国を作ったといえます。ソウル市の報勲総合計画は、こうした方々のために設けたものです。ソ・サンギョさんをはじめ植民地時代の愛国志士や遺族の皆様、18歳の若さで朝鮮戦争に参加されたにもかかわらず、今は月18万ウォンの「参戦名誉手当」で生活していらっしゃるパク・ウォンビンさんら参戦有功者の皆様、17歳に学徒兵として入隊、北朝鮮軍と中国軍に対抗して戦ったイ・ギュテさんや武功勲章の受章者の皆様、ベトナム戦争に参加されたソン・ソンヨンさんのほか、枯葉剤の被害者、傷痍軍警(戦闘や公務中にケガをした軍人や警察官のこと)の皆様、そして波乱に富んだ韓国現代史において民主化のために戦ってきた皆様に至るまで、韓国の今を築き上げた主役である皆様のために、この「報勲総合計画」は作られました。 現在、ソウル市にはこの誇らしい方々、国家報勲の対象者が128,175人もいらっしゃいます。本日発表するソウル市の報勲総合計画はこうした方々へ、感謝の気持ちを込めて、そしていつまでもそのご功労を絶対に忘れないという気持ちを込めて、ソウル市民が差し上げる心の勲章です。 この報勲政策は未来の世代のためのものでもあります。「報勲についてどう思うか」というアンケート調査をしたところ、若い世代ほど関心が低く、よく知らないことが分かりました。若者たちが韓国の歴史を正しく知り、国家有功者への感謝の気持ちを持つことは、韓国の未来を準備することです。 私たちの無関心の中で、ソウル市の報勲家族のうち1,029人は、生計を立てるのが難しいほど経済的な困難を強いられています。その人たちを助けることは、韓国の社会的弱者を助ける、もう一つの福祉政策です。 だからこそ、よりよい計画を作るために、皆で一所懸命悩み、一所懸命考えました。今年の顕忠日に、私が有功者のご自宅や病院を訪れてから、ソウル市は報勲団体支部長や国家有功者、報勲関連専門家など243人の方々と32回にわたる話し合いを行いました。7月17日の制憲節(憲法記念日)には、ちょうどこの場所で「聴策(市民の意見に耳を傾け、それを政策に反映すること)ワークショップ」も開きました。皆さん、覚えていらっしゃいますか。国家有功者ご本人や報勲団体のご意見を受け入れ、こうした方々には政策の恩恵の対象者だけではなく、政策を提案し、実行する主体として参加していただきました。たくさんのご意見を承り、それを踏まえて、ソウル市で初めての報勲総合計画を策定するに至りました。 ソウル市は報勲家族や市民、皆が幸せになる希望にあふれた都市、ソウルを作っていきます。報勲家族が、その名誉にふさわしい待遇を受けられる市、暮らしやすい市、心身ともに健康に生きられる市、ともに幸せになる市を目指します。この4つの目標を達成するため、ソウル市では15の主要課題と21の事業を選び、進めていきます。それでは、各目標ごとの主要事業計画を具体的に説明させていただきます。 今、最初に行うべきことは、国家有功者と家族の名誉を高めることだと思います。ソウル市には現在およそ12万人もの国家有功者が暮らしています。この中で、韓国戦争とベトナム戦争に参加された方が5万6千人余りと、全体に占める割合は44%です。この方々の名誉を高めることにソウル市が率先して取り組みます。 これまでソウル市は戦争に参加された有功者のうち、65歳以上の方に月3万ウォンの参戦名誉手当を支給してきました。国のために献身され犠牲になられた方への待遇としてはあまりにも少ない金額です。中央政府から支給される年金にソウル市が補助する形でした。ソウル市はこの年金を2014年までに段階的に5万ウォンに引き上げます。そのために、2013年には現在より72億ウォン増の252億ウォン、2014年には336億ウォンの予算が必要です。その後にも持続的に年金を引き上げることができるよう、努力いたします。 また、ソウル市には日本の植民地時代に独立運動に参加された愛国志士の方も44人いらっしゃいます。時間は誰も待ってくれません。すでに多くの方々が歴史の彼方へ去られました。これ以上手遅れになる前に始めなければなりません。平均年齢が90歳の愛国志士の方々のために「報勲礼遇手当」を新たに設けました。月10万ウォンの手当を支給し、亡くなられた時には弔慰金を支払います。ご希望の方にはソウル市民からの尊敬の念を込めた「愛国志士宅」という表札をつけさせていただきます。普段愛国というものに興味を持たない青少年をはじめとする市民に、もっと関心を持っていただければと思います。 ソウル市は毎年記念日になると、報勲家族をお見舞いしてきました。今年は18,800人の報勲家族をお見舞いしました。来年からはこの規模をさらに拡大し、毎年2千人ずつ増やします。また、報勲団体の活性化に向け努められた方や、地域社会に貢献された方、報勲家族に助けの手を差し伸べてくださった方々などに、感謝の気持ちをお伝えします。 報勲家族の生活の質を高めることにも努力を注ぎます。低所得の報勲家族には来年から毎年およそ80人の方に韓国国内旅行を無償で楽しめるよう支援します。自治区の報勲会館にソウル市立交響楽団などの文化芸術団体を招待し、文化を身近に触れることができるようにします。まず、来月の9月には報勲家族およそ300人を南山(ナムサン)国楽堂にお招きし、パンソリ(韓国の伝統的民俗芸能)や伝統踊りなど韓国の伝統公演を思う存分楽しんでいただければと思います。 次に、報勲家族が暮らしやすいソウルを作っていきます。国家有功者の皆様はほとんどがご高齢の方なので、一番の心配がご自分の健康ではないかと思われます。特に体の不自由な方々は江東(カンドン)区遁村洞(トゥンチョンドン)にある中央報勲病院を利用するために病院の近くにお住まいの方が多いです。その近隣にソウル市SH公社が建設中の高徳江一(コドクカンイル)、梧琴(オグム)、慰礼(ウィレ)新都市のポグムジャリ住宅(庶民の住居安定を目指し、韓国政府が供給する安い物件)がありますが、国家有功者の方々に物件の最大10%、755戸を特別供給します。現在、地区計画案の承認を行っている段階であり、2014年上半期から供給が始まる予定です。また、報勲病院がソウルの東端に位置しているため、ここから遠く離れて住んでいらっしゃる方や地方から上京して治療を受ける方にとっては不便だという声を聞いております。ソウル市はこうした方々のために臨時居住用賃貸住宅である「報勲の家」を用意し、そこに居住しながら治療が受けられるようにします。まず、2013年に2世帯(5人)、2014年には4世帯(10人)と、需要に応じて増やしていく考えです。 今、独立有功者の平均年齢はおよそ90歳になり、その遺族もかなりのご高齢です。こうした方々が無料で利用できる病院を、5つの指定市立病院以外に、近所の病院にまで拡大してほしいという意見がありました。ソウル市はこの意見を前向きに受け入れ、まず来年からご近所の25の保健所と4つの市立病院を指定病院に拡大し、計34の医療機関が利用できるようにしました。これからもさらに増やせるよう、引き続き努力いたします。 国家有功者の生活環境づくりにも気を配ります。低所得の国家有功者を対象に民間資源と連携し、合計約2,000世帯の生活に役立つよう支援を行います。低所得の国家有功者500世帯を対象に毎年6月の「護国報勲の月」にソウル社会福祉協議会の「希望馬車(希望をお届けする馬車)」と連携し、生活必需品を提供します。さらに500世帯を対象に、来年1月から「基礎フードマーケット」と連携し、食品などの支援を続けます。今年の冬、キムジャン(越冬するためにキムチを大量に漬け込む韓国の伝統文化)をする時は、私も手伝いに行きます。 こうした支援だけでなく、自立を望む方も多くいらっしゃいます。働きたい国家有功者の方々にはソウル市の公共雇用創出事業や高齢者雇用創出事業と連携し、適切な仕事の場を提供できるように支援します。例えば、報勲関連施設の報勲解説員、環境整理、独立運動史の教育講師など、まず来年には約1,000の新たな雇用を掘り起こし、提供いたします。 ソウル市は報勲家族の皆様の心強いサポーターとして、フォローアップします。まず、独立有功者の高貴なる志と精神を称えることに力を入れます。ドイツのベルリンには、ナチスの非人道的な行為を伝え、ユダヤ人犠牲者を追悼するホロコースト記念館があります。日本の場合も広島平和記念公園を建設して原爆犠牲者を弔い、平和の大切さを広く伝え訴えています。韓国にも独立有功者の犠牲と献身を称える場所が必要です。長年の悲願だった、西大門(ソデムン)独立公園内に「名誉の殿堂(仮称)」をソウル市が設立する予定です。今年の下半期に、ソウル市や国家報勲処、光復会、市民団体などと連携して「名誉の殿堂設立推進委員会(仮称)」を立ち上げ、踏み込んだ検討を行い、望ましい方向へ進めます。 また、ソウル市の公法報勲団体会員の悲願の事業であるソウル市報勲会館の設立を行います。現在ばらばらになっているソウル市9つの報勲団体がすべてこちらに入居できるようにします。新しい報勲会館には、基本的なオフィスのほか、報勲の歴史が一目で分かる報勲展示館や、報勲家族なら誰でも気軽に利用できるレストランやカフェなどを設け、複合文化施設を目指します。 報勲家族の生活安定や福祉向上を図り、報勲団体育成を支援するため、報勲基金の設立を行います。同基金は、現在運用中の社会福祉基金に組み入れて運用する予定であり、今後社会福祉共同募金会と市民募金などについて話し合い、進めていきます。 尹奉吉(ユンボンギル)公園、少年学徒兵通りなど、ソウル市にこういうところができたらどうでしょうか。護国報勲の歴史性や象徴性を広く発信できる地域を選定し、報勲テーマ通りをつくります。さらに、公園や道路などの公共施設に報勲関連の名前を与えることも進めます。まず、尹奉吉記念館のある瑞草(ソチョ)区良才洞(ヤンジェドン)の「市民の森公園」を尹奉吉公園に名前を変更する作業を行います。新しくつくられる公園や道路に報勲にちなんだ名前をつけることについて、より積極的な検討を行うため、関連専門家をソウル市地名委員として迎え入れる予定です。 報勲家族と共に生き、共に享受できるソウル市を目指します。公法報勲団体の中には、いまだオフィスがなくて苦労しているところもあると伺っております。オフィスがない特殊任務有功者会とベトナム戦争参戦者会のオフィスを来年には用意することをお約束します。それに加え、オフィスの運用費も支援いたします。ソウル地域で活動している9つの報勲団体を積極的にサポートします。また、報勲団体が「社会的弱者企業」の対象に含まれるよう推進します。 傷痍軍警の皆様にも格別な配慮をいたします。特に、傷痍軍警福祉館への支援を拡充します。一日約1,600人の方、昼食の時間に限ると約400人の方が食事をしますが、給食費の支援を受けられず困難を強いられる方が大勢いらっしゃると伺っております。そうした方々が安心して食事ができるよう、来年に4,000万ウォン、2014年には8,000万ウォンを支援します。また、老朽化した建物の増築とリフォームにも支援いたします。 ソウル市報勲家族のための予算も拡大します。現在203億ウォンに及ぶ報勲関連予算を、2014年までに360億ウォンに増やします。 日本の植民地時代から朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして民主化運動に至るまで、国のために命を惜しまなかった国家有功者の皆様、皆様こそが韓国の誇りです。ソウル市は皆様のご功労を永遠に忘れません。そして敬意の意を表します。 国のために犠牲を厭わず献身された国家有功者の方々に恩返しをするため、本日ソウル市がその一歩を踏み出しました。始めたばかりなので、まだまだ不十分な点が多々あるかと思います。しかし、国家有功者への尊敬の念を抱き、その高貴なる志を称えるためのソウル市の歩みは、これからも絶えることなく進めて行きます。国のために尽くされた国家有功者の皆様には、ただただ頭が下がるばかりです。改めて心より感謝申し上げます。
SMG 3,209

共に作り上げる人権尊重都市、ソウル

「ソウル市に望む人権政策」現場ヒアリングツアー政策討論会 日付:2012年7月24日 場所:ソウル市庁・西小門庁舎大会議室 本日は皆様のたくさんの貴重なご意見、ありがたく承りました。中央政府でない、地方政府ならではの限界も多いのではないかと思います。特に、条例など権利と義務を定めることはなかなか難しいのが事実です。そのため、もっと強く推し進められない部分もあります。頂いたご意見については、私が今この場ですべてお答えすることは難しいと思います。 先ほどご意見がありましたが、非正規雇用問題については、ソウル市がすでに政策を打ち出しており、継続性のある業務については出来る限り最初から正社員として採用するという原則を定めました。これはソウル市だけではなく、ソウル市とかかわりのある機関についても、正社員採用を勧める、さまざまな措置をとっております。次に労働権や交通権についてのご意見もありましたが、労働権はすでに韓国の憲法に定められた権利です。また、冠岳山(クァナクサン)を例に挙げられましたが、自然環境権というのも本当に大事だと思います。それに加え、私は次世代の人々が豊かな自然環境を享受する権利もあると思います。そして、エイズ患者の権利、外国人労働者や移民の権利、障害者や児童の権利などもあります。また、情報人権の問題についてもお話があったのですが、我々が個別的な政策として別途行っているものもあります。 障害者の人権についても、まだまだ足りないという皆さんのご意見がありましたが、我々は障害者団体や専門家など数百人もの方々から数カ月にかけて意見を聴取し、最善の政策になるよう頑張っています。それら全てを実現させるのは現実的に無理かもしれませんが、それでも専門家や障害者団体からはそれなりの評価をいただいた政策です。 次に情報人権というものについては、印鑑証明書や監視カメラにおける個人情報保護に関するご意見がありましたが、印鑑証明書の場合は行政上、中央政府が決めなければならないことです。しかし、ソウル市レベルでは何ができるか、もっと工夫を凝らしてみます。監視カメラの場合は、市民の安全のためにも必ず必要なものだと思います。監視カメラに反対するイギリスの関連団体によると、犯罪予防効果があまり大きくないということですが、それについては我々が科学的な検討を行う必要があると思います。それに、我々は今セプテッド(CPTED)という防犯環境設計の導入を進めています。これは監視カメラを一つの手段ではなく、犯罪者の心理や行動パターンまで考慮した上で施したデザインを通じ、犯罪を予防するのが狙いです。そのデザインをソウル市傘下のデザイン財団に依頼しておりますが、そのほかにも、ユニバーサルデザインの導入も推進しております。  また、浦二洞(ポイドン)のように現在ソウル市が再生に取り組んでいる脆弱な地域がいくつかあります。これについても、計画の全般的な見直しを行う予定です。私がお約束した通り、ソウル市が権限を持っている限り、できるだけ住民たちの要望や立場を十分考慮し、いかなる場合でも住民の意に反する撤去などの措置をとることはありません。ですから、住民との話し合いの場を設け、そこでの意見を十分反映するようにします。次にソウル広場のことですが、ソウル広場は完全申込制です。それでおそらく別の団体の申し込みと重なったのではないかと思いますが、それ以外の場合ならいつでも利用できるようにしております。また費用の問題については、一度検討させていただきたいと思います。清渓川(チョンゲチョン)の場合はきちんとした規定があります。たとえば非営利団体などが行う公益性の高いイベントの場合は、ソウル市が費用の一部を支援するか、それともソウル市との共同主催という形でできるだけ費用の負担がかからないように、条例などで決めておくのが良いのではないかと思います。 私は人権というのは常に変わっていくものだと思います。たとえば、昔はいわゆる市民の政治的権利がとても重要でした。もちろんそれは今でも重要ですが、いまや生活の中で様々な形で存在する人権全てが重要な時代になりました。 私はこういうことも人権ではないかと思います。数カ月間海外に滞在してから韓国に帰ってくると、例えば、うっかり誰かと肩がぶつかってしまったり、人の足を踏んだりした時、思わず「ソーリー」とか「すみません」が口から出てくるのです。ところが、韓国人はそういう場合でも一言謝りもせず去ってしまう人が多いですね。自分の人権はしっかり求めながらも人の人権はないがしろにしてしまう部分がどこかにあります。先ほど皆さんのご指摘通り、条例などを作っておしまいではなく、それがきちんと守られるよう、特にソウル市が行う政策などは関連機関を通じて、しっかりチェックしなければならないと思います。さらに行政の権限が及ぶ範囲内で、様々な保護活動を行っていくことをお約束いたします。 しかし、ソウル市だけで成し遂げられることは何一つないと思います。市民の皆様のご支援、ご協力は絶対に必要と思います。様々な人権とその要求については、人権に対する感受性というものがないと、何もはじまりません。私たち一人ひとりがその感受性を持っていると、人権ははるかに高いレベルで守られると、私は確信しています。 だからこそ人権教育や人権活動がとても重要なのですが、ソウル市がそれを政策的に支援しなければならないと思います。また、ソウル市が直接行うよりは、人権センターという中央でない中間支援機関を通じて行うことが最も望ましいと思います。それによって、より多くの人権団体が生まれ、旺盛な活動を行っていただけたらと思います。よくガバナンスという言葉を耳にしますね。これはソウル市単独で出来ることではありません。人権問題が身近に感じられるように、高校などでも人権サークルのようなものを作ったりして、人権というものを社会全般に広める必要があると思います。 そこで、皆さんからご意見がありました「市民人権保護官」というのも、調査権と救済の実効性をより高めるようにするのがいいと思いますが、先ほど申し上げましたように地方自治体では限界があるのが事実です。調査ならできるのではないかと思われますが、それも断られたら我々としてできることは何もありません。ですが、条項があるだけでも意味があるのではないかと思いますので、つくっておく必要はあるでしょう。 また、ソウル市の得意な分野は社会的、経済的な権利の分野です。私が市長になってからは基本的な福祉、最低限の福祉というものを中心に進めてきました。もちろん予算の問題もあるので、そう簡単ではありませんが、それでも今多くの方々が協力してくださっています。先ほどご提起いただいた債務者の権利やその困難さもここに含まれるのではないかと思います。そのほかにも、ちょうど今朝私が政策として発表した公共医療ですが、およそ3千億ウォンの予算が必要な分野です。病気になった時に治療を受けられる権利も、最も重要な権利の一つではないかと思います。 次に、ニュータウンのことですが、今ソウル市にはいわゆる「チョッパン」や「考試村(コシチョン)」と呼ばれる狭くて厳しい住環境にお住まいの方がおよそ40万人います。人間としての必要最低限の尊厳を守りながら暮らせるような住居を提供するのはとても重要な政策だと思いますが、問題は予算です。 現在、ソウル市は合計19兆ウォンもの負債を抱えており、一日に21億ウォンの利子を支払っています。私が市長に就任した当時は負債がおよそ20兆ウォンでした。前任の市長らがあまりにも大きな事業をいくつも繰り広げていたものですから。そのため正直私があまり大規模な事業を展開するのは難しいです。むしろ限られた予算を効率よくやりくりしなければならない状況です。それでお金をあまり使わなくてもできる事業を見つけるのに必死です。さらにその中からも慎重に選択しなければなりません。 これまでは人の暮らしに投資をした例はほとんど見られませんでした。そして今も市の財政状態を考えれば、大幅な投資をするのはとても困難な状況です。それでも我々は頑張ってやっていこうと思っております。本日ご指摘をいただいたことにつきましては、ここにしっかりメモしておきましたので、関連部署と相談した上で政策に反映するよう努めます。先ほども申し上げましたが、こういう形を取らせていただいたのは、皆様のご意見を大事にして政策を進めていきたいと思うからです。 それで条例案や基本政策を策定する過程で、もちろん条例は市議会の議員に最終的に決めてもらわなければなりませんが、それでも市民の皆様のご意見が大いに反映され、大きな影響を与えると思います。 一過性のイベントで終わるのではなく、これからも引き続きこうしたガバナンス(協治)の形を通してご意見を承り、それを政策に反映し、共に実現していく、人権を大事にする都市、ソウルを目指してまいります。皆様、本日は貴重なご意見、誠にありがとうございました。
SMG 1,803