2016年 ソウル市長年頭挨拶
花咲けソウル!
成長‐雇用‐福祉の「トライアングル成長」 で市民の暮らしをお守りします
敬愛なるソウル市民の皆様。ソウル市職員の皆様。
明けましておめでとうございます。
皆様のご健康とご多幸を心よりお祈りいたします。
市民中心の市政を始めて今年で5年目を迎えます。
この4年間、ソウル市政には大小様々な変化と革新がありました。市民一人ひとりが市長であるというガバナンス(協治)が市政の基本となりました。革新は誰も拒むことのできない市政の原則となりました。今やガバナンスと革新は、名実ともにソウル市政の象徴となりました。
英国の著名な革新家は、英ガーディアン紙で私を世界の5大革新市長の一人に挙げてくださいました。すべては皆様が革新の最前線に立っておられたからです。ガバナンスと革新へ向かうソウル市の取り組みと成果は、これからさらに国内外で評価されることでしょう。
1.当面する問題の解決に取り組み、挑戦に堂々と挑みます
私たちはこのガバナンスと革新の旗を掲げ、古い時代の川はすべて流してしまいました。新しい時代の川を開く転換の新たな波をつくりました。この時代が当面する問題を解決しました。新たな挑戦に堂々と挑みました。
その結果、放漫な市政運営が生んだ債務を減らしました。大規模で華やか、しかし無駄な土建事業は放棄しました。その代わり、市民の暮らしをに実質的に支える福祉を充実させました。地域共同体と町の共同体を生かし、社会的経済を振興させました。時代錯誤の全面撤去方式とも思い切って決別しました。人を生かし、地域を生かす都市再生の新たな道を切り開きました。外的成長、土建開発、市長万能一辺倒を抜け出し、人が中心の新たな成長の道を模索しました。公平と正義に基づく共同成長、包容的成長、経済民主化の道を歩んできました。ジェントリフィケーションの防止、伝統市場や路地商圏の保護など、経済的弱者の保護に努めました。非正規雇用の正規雇用への転換や生活賃金制度の導入、若者の活動への支援など、人と未来への投資も惜しみませんでした。
能動的で積極的な福祉政策への思い切った転換も実現させました。2倍に増えた社会福祉人材は、福祉の行き渡らない人々を訪問し、市民一人ひとりの暮らしを守る福祉の拠り所となっています。深夜バス、国公立保育所、患者安心病院、重度障害者24時間活動補助員への支援、賃貸住宅8万戸建設は、市民の暮らしに大きな変化をもたらしました。
中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染が拡大した時は、迅速な先行措置で市民の暮らしを守ることに全力を尽くしました。「手遅れよりも過剰対応のほうがまし」「情報公開こそMERS撲滅の特効薬」という言葉は時代の名言となりました。こうしたソウル市の先行措置は、MERSの全国的な拡大食い止めに一役買いました。これは、セウォル号沈没事故を機に、市民の生命と安全を守るという堅い約束があってのことです。また、ウミョンサン(牛眠山)での土砂崩れ以降、土砂崩れ防止、浸水被害防止、工事現場の安全のための投資に心血を注いだ結果、ソウル市は災害に強い街に変わりつつあります。
こうした成果を得ることができたのは、1千万市民の皆様がソウル市を信頼し、ソウル市に協力してくださったからです。また、ソウル市職員の皆様が心をひとつにして協力してくださったからです。
敬愛なるソウル市民1千万人の皆様。ソウル市職員の皆様。
しかし、私たちはいつまでも過去の成果に甘んじてはいられません。まだ、解決すべき課題は少なからず残っています。成果は成果として、過ちは過ちとして継承し、新しい未来への道を切り開かなければなりません。再び新時代の川を開く大転換の波を起こすべきときです。新たな変化へ向かう新しい大長征に乗り出すべきなのです。新年は、私たちが解決すべき新たな時代的課題を投げかけています。
何よりも、市民の暮らしが厳しいです。民生が厳しいです。経済がきびしいです。
低成長が常態化しています。低成長は韓国経済に深く暗い影を落としています。雇用なき成長は市民から職場を奪い、市民の将来を不確実で希望のないものにしています。少子高齢化の沼から抜け出す出口はいまだに見えません。家計負債は1,300兆ウォンを超えて過去最高となり、公共負債は1千兆ウォンを超えて久しいです。不平等と不公正、不安な時代の川を渡る市民のため息と嘆きの声が至るところから聞こえてきます。
こうした苦難の時代だからこそ、市民の暮らしを支え力になる福祉を充実させなければならないにもかかわらず、それを現場で実行する地方政府の収入は横ばいの状態です。地方自治になって20年過ぎた今も、地方政府は中央政府の支援に頼らなければならないのが現実です。しかも、政府は地方政府の財政が厳しいにもかかわらず、クリエイティブで補完的で現場のことを考える福祉政策を行うどころか、妨害し中断させようという時代錯誤の行動を見せています。若者の雇用の壁を取り除こうとソウル市が当事者の若者たちとともにまとめた若者保障政策、若者活動支援政策に文句をつけるのがその一例です。実に嘆かわしいことです。
2.一に民生、二に民生、三も民生、「とにかく民生」です
敬愛なるソウル市民の皆様。ソウル市職員の皆様。
私たちの前に横たわる経済的不確実性の波は高いです。「バカ野郎、問題は経済だよ」という言葉が今ほどぴったりな時期はありませんでした。今こそ「失われた10年」を終わらせるべきときです。停滞と後退、無能と無気力の時代に終止符を打つのです。新しい民生の道を切り開かなければなりません。力を失いつつある成長エンジンにもう一度火をつけることが不可欠です。これまでの「収穫型経済」のパラダイムを「革新に基づいた経済」「革新主導の成長」に転換する。そうして新たな価値、新たな産業、新たな市場、新たな雇用を生み出すことが求められているのです。
ソウル市はその先頭に立ってまいります。ソウル市は新たな成長と民生第一主義の旗を掲げます。
成長と雇用と福祉が好循環する「トライアングル成長」で市民の暮らしを守り、ソウルの新しい未来を切り開いてまいります。
いかに大きな困難が私たちの目の前に立ちはだかろうと、ソウル市はひたすら前進してまいります。市民のためなら、新しい未来のためなら、いかなる困難も突破してまいります。私たちは謙虚な姿勢で、そして市民は尊ぶ「民貴君軽」の精神で、空理空論と卓上行政を排斥し、実質を重視して実行に移す「務実力行」の姿勢で、ひたすら市民の暮らしと民生を生かすことに邁進してまいります。
2016年のソウル市政は、一に民生、二に民生、三も民生です。
ひたすら民生、「食べていく問題」の解決に市政のすべてをかけてまいります。
3.成長‐雇用‐福祉が好循環する「トライアングル成長」で未来に備えます
そのために、まず未来の糧となる新しい成長エンジン産業の育成に取り組みます。マゴク(麻谷)、ヤンジェ(良才)・ウミョン(牛眠)、ホンヌン(洪陵)、ケポ(開浦)、Gバレー、東南圏国際交流複合地区、チャンドン(倉洞)・サンゲ(上渓)、ナムサン(南山)アニメーションセンター、トンデムン(東大門)ファッション地区などを、R&Dやバイオ・医療、IT、文化コンテンツなどの最先端融合・複合産業、有望産業の成長拠点にします。これは質の良い雇用創出につながるでしょう。近く始まるソウル型創造経済は市民の暮らしを守り、ソウルの未来を切り開く原動力となるでしょう。
一、2018年にマゴクにR&D施設が建設されれば、12万人以上の雇用が生まれます。3兆ウォンが投じられたLG SCIENCE PARKを中心に韓国最高・最大のR&D地区が造成されます。
二、ヤンジェ・ウミョン地区の既存のR&D施設を拡張し、πシティソウル市糧穀倉庫一帯の敷地をR&Dタウンに転換します。
三、ホンヌンバイオ・医療アンカーを造成して企業、大学、医療機関の産学研協力体制を構築し、バイオ・医療産業への積極的な支援により、地域経済活性化と東北圏の均衡発展を実現させます。
四、2016年9月にオープンするケポ・デジタル革新パークは、クリエイティブなデジタル人材の育成のみならず、アイデアとソリューション中心のICT起業の拠点となります。2016年はソウル市がグローバルなデジタル首都に飛躍する元年となるでしょう。
五、Gバレーは、文化やレジャー、住居、福祉などが充実した先端融合・複合産業団地に生まれ変わり、モノのインターネットや情報通信技術(ICT)、電気自動車といった有望分野が成長できる支援システムが構築され、長期的に成長できる産業エコシステムが築かれます。
六、コエックス(COEX)~チャムシル(蚕室)運動場一帯は、国際業務、MICE、スポーツ、文化・エンターテインメントの4大産業が調和した国際交流複合地区となります。国際交流複合地区が造成されれば、年平均約15兆ウォンの経済波及効果と約8万人の雇用創出効果が生まれます。グローバル・ビジネスセンターだけでも、経済波及効果は27年間で総額264兆8千億ウォン、雇用創出効果は121万5千人に上る見通しです。
七、チャンドン・サンゲ地区は、首都圏東北部320万人のための文化経済ハブとなり、8万人の雇用を創出して首都圏の均衡発展の中心地となります。2016年3月、チャンドン駅近隣に「プラットフォーム・チャンドン61」が造成されれば、様々な文化プログラムが開かれ、音楽・公演を創作し楽しめる文化の街が誕生します。さらに、2020年完成予定の韓国唯一の大規模専門公演施設「ソウル・アリーナ」は、ソウル東北部を世界的な音楽産業のメッカ、韓流の中心地、文化・公演産業の隆盛地にするでしょう。また、チャンドン車両基地が移転する2019年を目処に、この地域を人材と企業が集まる先端産業集積団地にする計画を着実に進めてまいります。
八、ナムサン・アニメーションタウンは、アジアを越え、新たな韓流アニメのブームを世界的に巻き起こすでしょう。既存のアニメタウンを幻想的な建物にリノベーションし、周辺一帯に韓国内外のアニメ関連企業を誘致する計画です。
九、衰退しつつあるファッションの街ソウルの存在感を再び高めます。ファッション界の世界的巨匠スージー・メンケス氏が主管する「コンデ・ナスト・インターナショナル・ラグジュアリー・カンファレンス(Conde Nast International Luxury Conference)」を成功させ、ソウルのファッション産業の活性化とファッションの街ソウルのイメージアップを図り、K‐ファッションをアジア・ファッションの中心にします。
十、放置されていたゴミの山から、メディア・エンターテインメント企業及びIT企業約450社が入居(従事者3万6,167人)する先端デジタル・メディア・クラスターに生まれ変わったサンアム(上岩)DMCは、ランドマークビルの建設事業者を誘致し、DMCで生産される様々な新技術と韓流文化コンテンツの開発及び商用化への支援、周辺のスセク(水色)駅勢圏の開発を拡大することで、クリエイティブ産業の中核拠点としての育成を完結させます。
私たちは新しいものを創造すると同時に、伝統資産を賢く活用する知恵を持たなければなりません。世界的にも稀な伝統的・歴史的資産で韓国の宝であるトンデムン韓方やチョンノ(鐘路)ジュエリー、ソンス(聖水)ハンドメイドシューズなど、ソウル都心の特化産業も、新たな復興期を迎えるでしょう。2016年12月、チョンノ・ジュエリー第2センターとトンデムン韓方産業振興センターがオープンすれば、ソウル型都心産業の第2の全盛期が始まるのです。
観光・MICE産業は、ソウル市の未来の成長エンジンであり、雇用創出の宝庫でもあります。昨年、ソウル市の観光産業は中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染拡大の影響で大きな打撃を受けました。しかし、「雨降って地固まる」のことわざ通り、飛躍するきっかけにもなりました。ソウル市は2016年を「ソウル観光革新元年」とし、ソウル観光の全領域に変化と革新を根づかせてまいります。「観光客不満ゼロプロジェクト」を通じて旅行者が一人でも安心して気軽に旅行できる環境を整備し、ソウル観光産業エコシステムの基盤を強化するなど、外国人観光客2千万人時代を目指して取り組んでまいります。2015年はMERS感染拡大の影響を受けた厳しい一年でしたが、ソウル市は「ビジネス・トラベラー」と「グローバル・トラベラー」が選定する世界最高のMICE都市に選ばれました。そうしたソウル観光の根本的な体質改善を通じ、ソウル観光2千万人時代を築いてまいります。2018年までに外国人観光客2千万人という目標を達成し、ソウル市が世界MICE3大都市の一つになれば、ソウル市は年間63万人の雇用効果と25兆ウォンの付加価値を創出することになります。ソウル市は、名実ともに世界的な観光都市、世界的な歴史文化都市、世界的な競争力を備えた都市になります。ソウル市民としての誇りもそれだけ高まることでしょう。
4.成長が質の良い雇用創出につながる雇用特別市を目指します
敬愛なるソウル市民の皆様。ソウル市職員の皆様。
すべての成長の目標は人であるべきです。すべての成長の結果は、人の幸せであるべきです。
ソウルのすべての成長の果実は、市民1千万人みんなが享受できるものでなければなりません。働きたい人は皆働ける雇用創出につながり、成長した分だけ質の良い雇用が増える雇用特別市を目指すべきです。
しかし、中央政府に比べ、ソウル市の経済政策・雇用政策・労働政策手段の限界は明らかです。また、雇用なき成長のパラダイムを崩すのが難しいのも現実です。だからといって黙っているわけにはいきません。ソウル市は、政策手段や財政投入、革新的方法などあらゆる手を尽くして、雇用創出に全力を尽くします。
昨年10月の1カ月間にわたって行った雇用大長征を通じ、私はそれが可能であることを実感しました。地域経済主体の渇望と若者の情熱こそ、雇用創出の根源であることを確信しました。そこに、ソウル市が都市計画的・空間的・財政的支援さえすれば、雇用はいくらでも生まれることを悟りました。大手企業はいつでもソウルに投資する用意があることを、約60の大学も卒業生のために協力する姿勢ができていることを確認しました。やはり答は現場にありました。私は年明けからまた雇用創出のために現場へ向かいます。企業各社との会議、大学総長らとの懇談を通じ、いかに雇用を生み出すか知恵を出し合います。良い構想はすぐ実行に移します。民間企業や産業界、労働界、大学界などを一堂に集め、質の良い雇用を生むアイデアを議論します。2016年のソウルは、経済成長が質の良い雇用の創出につながる一年となるでしょう。
また、2016年は「労働尊重特別市、ソウル」が定着するでしょう。「労働者の権益保護」「模範的使用者の役割の定立」など、市民の労働基本権が保障される環境が構築されます。経済と社会の根幹を安定化させる人への投資も一層強化します。生存するための最低賃金にとどまらず、人間らしい生活を保障する生活賃金制度を民間分野にも広げ、2017年までに非正規雇用の正規雇用への転換を100%完了させることにより、労働の常識を取り戻し、雇用の質は大きく改善されるソウルを目指してまいります。
さらに、2016年は経済成長の恩恵があまねく行き渡る「経済民主化都市、ソウル」を目指してまいります。開発利益が建物の所有者と商業資本に回るジェントリフィケーションの防止に取り組み、不公正な取引慣行を見直すことで、公正な賃貸制度を定着させる経済環境を築いてまいります。経済的弱者を支え、経済主体同士の葛藤解消に向けた経済民主化条例を制定する一方、中小企業に適した業種は保護します。均衡発展に向けて流通共生協約を支援し、フランチャイズ認証制度を導入します。庶民を泣かせる者は、新たに発足したソウル市民生司法警察団が厳しく厳罰します。
5.福祉は人と未来に対する最高の投資であり、もう一つの成長エンジンです
敬愛なるソウル市民1千万人の皆様。ソウル市職員の皆様。
人と未来、幸福への投資である福祉は、誰が何と言おうと、共同体の持続可能性と質的成長ために欠かせないものです。個人が幸福であってこそ社会が幸福になるのです。福祉は幸福の最低限の条件であり、共同体維持の力です。福祉は選択ではなく必須です。ソウル市はこれまで福祉を絶えず強化してきました。これからは、乳幼児や青少年、高齢者、女性、障害者、生活の厳しい家庭などのための福祉を乗り越えます。若者やベビーブーマー世代をも含めることで「普遍福祉」を完成させ、市民の福祉権を完全に実現させてまいります。
ソウル市には現在、人口に占める割合が最も高い50+世代、いわゆるベビーブーマー世代が214万人に上ります。50+世代のための福祉が急がれています。ソウル市は、50+世代が退職後の老後に備え、再チャレンジできるよう、「50+財団」を通じて中高年支援政策を推進し、「50+キャンパス」を通じて第2の人生設計教育はもちろん、起業や就職、社会貢献の機会を提供することで、経済活動への意欲と生きがいを持ち続けられるようサポートします。
また、韓国社会の未来である若者のための政策も急がれます。若者は私たちの未来です。今の若者の姿が未来の私たちの姿です。「ソウル若者保障プラン」を一日も早く稼働させなければならない理由はそこにあります。ソウル市は、若者の社会活動のための費用、住居、場所の支援はもとより、若者が韓国社会と未来の希望となるよう、より積極的に支援してまいります。
福祉伝達体制の革新は、新たな共同体と連帯への夢の種となるでしょう。2015年は80カ所だった「訪問洞住民センター」は、2016年は282カ所、2017年にはソウル全域に広がり、市民一人ひとりに希望を与える希望福祉センターとなるでしょう。福祉の死角地帯がない決め細やかなソウル福祉が実現するのです。
福祉は決して浪費ではありません。むしろ人と未来のための最高の投資です。ソウル市が2013年支出した6兆ウォンの社会福祉予算は、14兆ウォンの生産誘発効果と15万4千人の雇用創出効果を生んだという分析があります。福祉はもう一つの成長エンジンなのです。成長‐雇用‐福祉が互いに好循環を生むという「トライアングル成長論」の根拠がそこにあります。
2016年は、こうして成長エンジンに火をつける一年、成長する過程で雇用を創出する一年、 成長の成果を福祉に投資し、市民の暮らしを守り、また新たな成長と雇用を生み出す一年となるでしょう。2016年のソウルは、成長と雇用と福祉が好循環する「トライアングル成長」で、「誰もが幸せな暮らしの特別市、ソウル」に近づく一年となるでしょう。
6.市庁と区庁‐読み方は違っても名前は同じです
敬愛なるソウル市各区庁職員の皆様!
2016年は、「自治分権特別市ソウル」のビジョンが実現する一年となります。「市民は区民、区民が市民」「市政は区政、区政が市政」。これが私の哲学です。
自治分権の中核は自主財政権です。財政が十分でなければ、自治は成り立ちません。約束した通り、ソウル市は、自治区の基準財政需要充足率を現在の97.1%から100%に近いレベルまで支援します。2016年度に追加交付される2,728億ウォンは、自治区の財政分権を実現させるためのシードマネーとなるでしょう。
区庁職員の皆様。私たちの心はひとつです。今後、その輪はさらに大きくなるでしょう。関係者全員一丸となって頑張りましょう。
7.みんなで道をつくり、橋をかけていきましょう
敬愛なるソウル市民の皆様。ソウル市職員の皆様。
昨年12月、私は某出版社の出版記念イベントに出席しました。
正本 『白凡日誌』 の発刊を記念する場でした。その席で 『白凡日誌』の原稿をしっかり整理し、納棺する式が行われました。そのとき私は、 独立から70年経っても「ペッポン(白凡)」キム・グ(金九)先生の魂を癒やすことはまだ十分に実現していないと思いました。
記憶できない歴史は繰り返されます。
この分断された歴史、分断された祖国をどうしたら良いのでしょうか。地域、イデオロギー、貧富、世代によって分裂したこの国をご覧になって、キム・グ先生は何とおっしゃるでしょうか。白丁(農民)も凡夫(凡人)も愛する国を築こうと、金先生は自ら「孝道白凡」という号をおつけになりました。しかし今、韓国の若者はこの国を「ヘル(hell;地獄)朝鮮」といい、他国への移住を考える人もいます。
セウォル号は、まだ暗く冷たい海の中に沈んだままです。民主主義は後退するばかりです。国民を統合すべき政治は、むしろ国民を分裂させています。共存・共生の道はまだまだ道半ばです。多くの国民が絶望と挫折の悪循環からなかなか抜け出せないでいます。金持ちも、貧しい人も、高齢者も、若者も、大人も、子どもも、誰も幸せを語らない時代。私たちは何をどうしたら良いのでしょうか。人生に疲れた国民、疲労感に疲れた市民が慰められ、頼りにできるのはいったいどこでしょうか。
我がソウル市を、その役目を果たす拠り所にしていきましょう。みんなでもう少し情熱を注ぎましょう。ソウル市が市民の希望となれるよう、もう少し頑張りましょう。「憂国為民」こそ私たちの使命であり、自慢であり、誇りではないでしょうか。
敬愛なるソウル市の皆様。
希望は空から降ってきません。私たち自ら希望をつくりましょう。
もちろん、障害はあるでしょう。
しかし、「逢山開道、遇水架橋」ということわざがあります。山に逢ったら道を拓き、川に逢ったら橋を架けましょう。互いに手を取り合い、困難を乗り越えていきましょう。昨日よりも今日、今日よりも明日が住みやすい、希望に満ち溢れたソウル市を築いてまいりましょう。私たちはこれまでうまくやってきました。これからもやっていけるはずです。希望の春に、ソウルの花をみんなで咲かせましょう。ともに頑張りましょう。ともに歩みましょう。ありがとうございました。