2015年新年の挨拶
「市民の暮らしに寄り添います」
– 「利用厚生」の旗を高く掲げ
敬愛なるソウル市民の皆様、親愛なるソウル市関係者の皆様!
乙未年の2015年が明けました。融合と統合を象徴する羊の年を迎え、今年一年の皆様と皆様のご家庭のご健康とご多幸を心よりお祈りいたします。
昨年は実に多事多難で厳しい年でした。景気後退局面に突入して久しいなか、1千兆ウォンを突破した家計負債と公共負債、高まる失業率、家賃上昇と物価上昇は、市民の暮らしを苦しいものにしています。
何よりも昨年は、悲しみと苦痛、反省の一年でした。私たちが自分自身に問いかける一年でした。私たちはいったいどこへ向かっているのか。私たちは今幸せなのか。国と政府の存在理由とは。政治とは何か。真の公職者の姿とは、という根本的な疑問を何度も投げかけました。
変化を望みました。革新を望みました。改造を望みました。人間らしい暮らしを望みました。
そして、今私たちは新年を迎えました。私は自分自身に、また私たち全員に改めて問いかけたいです。私たちはいったい市民の問いかけにしっかり答えていますか。これまでとは違う変化の道を歩んでいますか。
私がまず深い反省の念を表明します。
乙未年の年明けの朝、私は朝鮮時代を生きていた先祖の暮らしを思い起こしました。名分論と観念論に縛られすぎて戦乱に巻き込まれ、現実を直視できずに「サムジョンド(三田渡)の屈辱」を味わっても、現実を恐れて変化を拒みました。政派の党利党略と政争に明け暮れて民生を無視した政治は、民族を塗炭の苦しみに追いやりました。
新たな変化は、志を持つ数人の実学者から始まりました。「磻溪」ユ・ヒョンウォン(柳馨遠)を元祖とする「星湖」イ・イク(李瀷)や「茶山」チョン・ヤギョン(丁若鏞)といった実学者は、当代の主流政治が度外視した民族の生計問題、民生問題を経済の最優先課題に据えました。民族の暮らしを改善できない政治・学問・思想は、彼らの前に決して存在することができませんでした。身分も官職も財産も政派も重要ではありませんでした。民族の暮らしを変える革新と国家改造だけが彼らの至上命題でした。朝鮮は最終的にそれを受け入れませんでした。その結果、政治は混乱し、経済は衰退し、国は滅びました。
それから数百年経った今、私たちの姿はどうでしょうか。実学者らが夢に抱いて提示した「民生第一」と「国家改造」は、いまだに遠い時代の成し遂げられなかった出来事として歴史に綴られているだけで、私たちの現実とは無関係のままです。
理念と政争にとらわれ、貪欲と陣営の幕の中に閉じ込められ、「民生」の道、「人間」と「共同体」の道、「未来」への道へ進めずにいるのです。問題を解決すべき政治が問題の根源となっており、巨大な官僚組織の塀と壁は高くて厚いです。
真の政治と行政の道、公職の道とは、市民の暮らしに寄り添って民生問題を解決し、共同体の幸せと持続可能な未来への道を切り開くこと。それが使命であり、役目であり、責任です。
ソウル市の関係者の皆様。今こそ私たちがその幕を取り払い、市民の暮らしの中に飛び込んでいきましょう。私たちが21世紀の実学者となり、協力して民生の道を切り開きましょう。
■ 民生を優先する「利用厚生」と「先憂後楽」の市政を展開してまいります
敬愛なるソウル市民の皆様、親愛なるソウル市の関係者の皆様。
2015年を迎えた今も、決して希望に満ちあふれているわけではありません。政府が発表した経済見通しは明るいものではなく、民生指標が好転するという期待も大きくありません。家計負債1千兆ウォンが私たちの目の前に横たわっています。
だからこそ、ソウル市は市民の暮らしに寄り添い、民生を最優先する市政を目指します。ソウル市の全精力を民生や経済、雇用など、市民の家計と暮らし、生計問題を解決することに集中してまいります。さらに、ソウル市の新たな成長、みんなが一緒に成長できるよう変化を誘導し、その恩恵を全ての人が享受する福祉を充実させる元年にしてまいります。
簡単なことではないでしょう。多くの障害が私たちの行く道をふさいでいます。しかし、私たち全員が協力するなら十分に成し遂げられると思います。私たちは、誰もが不可能だと思っていた債務7兆ウォン削減と賃貸住宅8万戸建設を同時に成し遂げました。市民と対話し、ソウル市の職員全員が一丸となり、ソウル市の問題を一つひとつ解決してきた知恵と経験があります。
この3年間、市民に寄り添う「協治」と「革新」によって、古いもの、慣行的なもの、不便なことを一つひとつ解消してきました。
原則が無原則に勝ち、常識が非常識を崩し、正常が非正常を追い払いました。対話によって葛藤を解決しました。原則と常識、合理とバランス、協治と革新の市政は、決して揺るがない市政の根となりました。
これを基に今年一年、ソウル市は市民の暮らしに寄り添い、市民の生計問題を解決する「利用厚生」という実事求是の市政を展開してまいります。
抽象的な観念や非現実的なスローガンだけの政策ではなく、実質と内容を尊重し、現場を重要視する政策を展開してまいります。市民の暮らしに変化を与え、民生問題を解決していくことで、市民の悩みを解消して市民を喜ばせる「先憂後楽」の市政を展開してまいります。
敬愛なるソウル市民の皆様。
この3年間、ソウル市は新たな変化の中心にありました。市民の暮らしを変えた最初の市長になるという誓いと取り組みが実を結び始め、市民の暮らしに変化の花が咲き始めました。
ソウル市庁で非正規雇用の清掃員として働くイ・ギョンジャさんは、念願だった正社員になりました。65歳まで定年が保障される正規雇用となり、「準公務職」と書かれた名札を受け取って涙を流しました。暮らしに大きな変化が訪れたのです。同じ立場にあったソウル市職員約7千人が同じ喜びを味わいました。
脳卒中を患っていたイ・ジョンジャさんも、新たな暮らしに希望を見出しました。一般の医療機関に長期入院しても介護者を雇う費用を賄えず、しっかりとした治療を受けられないでいましたが、ソウル医療院の患者安心病院に移って以来、健康にも暮らしにも希望を見出しました。患者安心病院を受診した約9千人の市民は、公共医療の恩恵が自分自身の暮らしに及ぼす影響を深く実感しました。
クムチョン(衿川)区に住む主婦のイ・ジョンヒさんも暮らしが変わりました。考えたこともなかった育児事業を始めたのです。ソウル市の「町の共同体育児」支援事業を通じ、共同で育児するだけでなく、近所の人とともに暮らす楽しさを味わっています。約2千人の市民がイさんと同様に暮らしの中で活力を感じています。
こうして今、ソウル市では暮らしの変化を経験した多くの市民とそれにまつわるエピソードが無数の実を結び、花を咲かせています。しかし、本当のスタートはこれからです。私もソウル市も、まだ満足はしていません。私たちにはまだやるべきことが多く残されています。
ソウル市は、今後も市民の暮らしの変化を誘導すると同時に質的完成度を高め、持続可能な未来に向けて新たな経済エコシステムを構築してまいります。未来の成長エンジンとして経済と暮らしの安定を確保し、これを基に市民一人ひとりの暮らしの質を高め、共同体が幸せに暮らせる「人間化」の街、ソウル市を目指してまいります。
■ 創造経済と特化産業活性化によってソウル市の経済地図を変えます
敬愛なるソウル市民の皆様。
その土台となるのはソウル型創造経済です。がっちりとした基盤としっかりしたエンジンでソウル市の未来100年をリードする力となるでしょう。ソウル市は、世界の創造経済の首都、大韓民国の創造経済特別市を目指します。
ソウル型創造経済の中核となるのは、ソウル市が有する様々な産業インフラと人に対する投資を通じた、ソウル市の未来の成長エンジンの構築です。R&Dや観光、MICE、レジャー、スポーツ産業、ファッション・衣料品産業、バイオ医療産業、ICT、教育サービス産業などが、ソウル市独自の競争力のある新たなクリエイティブ産業として集中的に育成されるのです。ヤンジェ(良才)、チョンドン(倉洞)・サンゲ(上渓)、サンアム(上岩)DMC、マゴク(馬谷)、Gバレー、シンホンハプ(新村、ホンデ、合井)バレー、ケポ(開浦)、ホンルン(洪陵)、トンデムン(東大門)などが、ソウル型創造経済の拠点となり、ソウル市の新たな産業中心地として発展するでしょう。
ヨンドン(嶺東)圏のMICE産業地区やチャンドン(倉洞)、サンゲ(上渓)の新経済中心などは、短期間での発展は期待できず、もしかしたら私の任期中には実を結ぶことができないかもしれません。しかし、目の前の成果や利益ではなく、長期の目標とビジョンを見据えた計画は、ソウル市の10年後、100年後をより豊かにするでしょう。
ソウル市は44の業種、136の伝統的な地域特化産業が集中する街です。ソウル市は、市の特化産業を成長エンジンの軸に据え、これを生かしてまいります。特化商圏活性化地区である特化地区を支援し、不景気と大手スーパーの出店で危機的状況にある伝統市場、地元企業、商店街、専門商店街団地の活性化に向けた総合的発展戦略を立ててまいります。小規模商工業者と地域産業の復興と新たな全盛時代を切り開く基盤を築いてまいります。
ソウル型創造経済と地域特化産業、ソウル市をリードするこの2つの柱がダイナミックに躍動するとき、ソウル市の新たな経済エコシステムは稼働し、ソウル市の経済地図は書き換えられるでしょう。
■ 市民全員が株主の「株式会社ソウル特別市」を目指します
そのためにソウル市は、投資するものには思いきって投資し、誘致するものは確実に誘致し、支援するものははっきりと支援してまいります。
国内の強小企業と海外のグローバル企業との連携、海外及び他自治体に移転した企業のリターン誘致など、思い切った投資誘致を通じて経済エコシステムを多元化してまいります。チャレンジ1000プロジェクト、起業センターの運営及び起業プログラム支援、起業金融支援をはじめ、起業支援や販路・マーケティング支援などの流通支援は経済エコシステムづくりに向けた土台となるでしょう。
雇用政策も中核推進事業となるでしょう。良質の雇用を発掘し、働きたい人は誰でも働ける能力を開発するだけでなく、制度的基盤の拡充に全力で取り組んでまいります。
ニューディール雇用や公共労働、地域社会雇用といった公共の働き口だけでなく、クリエイティブな専門人材の育成や技術教育院の運営などを通じて業務能力を養うほか、雇用特区の指定と雇用財団・委員会の設置により制度的基盤を構築してまいります。
財政投資を通じて良質の雇用を創出してまいります。チェムルポ(済物浦)大路や西部幹線道路などの都市高速道路の地下化と上部公園化事業、首都圏広域鉄道と第3期都市鉄道の建設、水防施設、ハンガン(漢江)開発など、都市インフラ事業を積極的に推進し、関連産業の雇用を創出してまいります。
また、協同組合や社会的企業、地元企業など社会的経済を集中的に育成して良質の地域生活サービスを提供するとともに、国公立保育所と老人ホームの施設拡充などを通じて社会的雇用も創出してまいります。
さらに、観光客と外国人の誘致にも全力で取り組んでまいります。100人の観光客がソウル市を訪れれば、2人の雇用が生まれます。観光客2千万人時代が到来すれば、22兆ウォンの経済効果だけでなく、約44万人の雇用が生まれる効果も得られます。
ソウル市は、世界一の観光MISE都市、魅力的な観光一流都市を目指し、地域別・テーマ別コンテンツとストーリーを発掘するとともに、体験型韓流観光など、ストーリー満載、見どころ満載、人情いっぱいの街づくりをしてまいります。
敬愛なるソウル市民の皆様。
これらの成長の恩恵の全てをソウル市民全員で享受しなければなりません。経済民主化を実現し、共同成長を通じて共生する街。これこそ市民全員が株主の「株式会社ソウル特別市」を目指すソウル市のビジョンです。共同成長を通じて市民全員が主人公になる道。今年一年のソウル市の歩みはその第一歩となるでしょう。
■ 民生安定と福祉強化、女性と労働が尊重され、差別なく幸福を享受する特別市、ソウル市を目指します
敬愛なるソウル市民の皆様。
都市の成長に暗い影を落としていた再建築・再開発地域も、新たな見通しが可能になりました。ソウル市の新たな100年を見据え、人が中心の、家庭も職場も充実する都市再生への転換が実現するのです。
2015年1月1日に新設されたソウル市都市再生本部は、開発利益や物理的整備を優先するのではなく、対話と思いやり、統合と共有、地域の歴史が市民の暮らしの現場に溶け込む都市再生の道を案内するのです。ともに暮らしてきた場所でこれからもともに暮らし、幸せを享受する街をつくるのです。
「訪問福祉」はソンパ(松坡)区で発生した親子3人無理心中事件のような胸の痛む出来事を未然に防ぐ効果を発揮し、洞住民センターの福祉機能を強化した町の福祉センターは、生活の厳しい家庭が柵から抜け出す大きな力になるでしょう。
金融福祉相談と公共医療費支援は人生をあきらめずにもう一度やり直そうという希望を与え、生活費のほとんどを住居費として支出する低所得層のための住宅バウチャーや希望の家修理といった住宅福祉支援体制の強化、様々な類型の賃貸住宅の供給、ソウル型家賃制度は、住居安定の土台となるでしょう。
民生侵害10分野に関する総合的撲滅対策の強化は、貸金業やマルチ商法、相助、電子商取引など、庶民と低所得層を対象とした民生侵害被害を最小限に抑える砦となるでしょう。ソウル市は、市民を泣かせる犯罪者は決して許しません。民生侵害頻発業者を徹底的に摘発し、民生侵害業者を根絶してまいります。
生活賃金制度は、ソウル市とソウル市傘下の投資・出捐機関から導入し、段階的に公共調達部門まで拡大させ、最終的には市民の暮らしを守る最後の砦となるでしょう。ソウル市傘下の投資・出捐機関で試験的に実施する「参加型労使関係モデル」は、対立・闘争の労使関係を協力と対話の真のパートナー関係にするでしょう。今こそ労働が尊重されるソウル市に生まれ変わるるのです。
ソウル市は、女性が幸せに暮らせる街になりつつあります。しかし、まだ不十分です。若年女性や経歴断絶女性など女性雇用10万人創出、国公立保育所1千カ所増設、女性が安全に暮らせる街づくりは、女性安心特別市を目指すソウル市を目標に一歩近づけるでしょう。
こうしてソウル市は、ともに暮らす都市再生と様々な生活支援、実質的な福祉支援政策と民生対策、生活賃金制度の導入と女性幸福政策により、市民1千万人がともに幸せに暮らす特別市を目指してまいります。
■ 経済と生活の安定を基に「人間化の街、ソウル市」を目指します
敬愛なるソウル市民の皆様、親愛なるソウル市の関係者の皆様。
ソウル市が変われば大韓民国も変わります。この半世紀の間、ソウル市は先頭に立って大韓民国の産業化と民主化をリードし、世界の中の大韓民国を築いてまいりました。その底力を基にソウル市は今、ソウル市の新たな未来を築こうとしています。産業化と民主化の基盤を土台に、これからはともに暮らす「人間化」の時代を切り開いてまいります。
「市民が市長」という民主市政、開かれた市政、参加市政の土壌の中で、経済と生活の安定が根となり、人と共同体という丈夫な幹に、幸せの実が結び花が咲く「人間化の都市」ソウル市を目指してまいります。市民は誰でも差別を受けることなく、人間らしく幸せに暮らせる街です。
これら全てのことを成し遂げるのは、私一人の力では無理だと思います。ソウル市の関係者の皆様とこの場にお集まりの皆様が市長となり、主人公となってこそ成し遂げられることです。これまで皆様一人ひとりが市長となって導くことで、今日のソウル市が築かれました。私は、ソウル市の公職者の皆様の偉大な力を信じます。皆様のご苦労に感謝申し上げます。
皆様、私一人の夢は夢に終わるかもしれませんが、ソウル市の関係者と偉大な市民1千万人の皆様が協力してくださるなら、夢は叶うと思います。偉大な市民の皆様と同じ夢を抱き、ともにその夢に向かうなら、私たちに不可能はないでしょう。
「社会が変わることを望むなら、あなた自身が変わりなさい」という言葉の通り、ソウル市を過去のソウル市よりもっと住みやすく、もっと幸せに暮らせる街にするためには、今の変化を止めてはいけません。私たち全員がまた変化の主人公にならなければならないのです。
敬愛なるソウル市民の皆様、ソウル市の関係者の皆様。
仕事始めとなる本日、皆様とともに誓おうと思います。初心忘るべからず。「市民が市長です」という揺るがない市政原則の下、市民とともに夢を抱き、ともにつくり上げ、ともに享受するソウル市を目指してまいります。市民の暮らしに寄り添ってまいります。
片手には協治と革新の火を掲げ、片手には民生と統合の火を掲げてまいります。暗く冷え切った時代の川を灯し、前へ前へと進んでまいります。市民に寄り添い、世界の人々に寄り添う「ともにソウル」を合言葉にしてまいります。皆様、ともに頑張ってまいりましょう。
ありがとうございました。