門戸が開放された19世紀の朝鮮。波のように押し寄せてくる西欧列強。そんな中、米国人宣教師たちは未知の国「朝鮮」で開花に向けた種を蒔いた。
貧しさと病に悩まされる人々のために医療施設を設置して病気を治療し、学びたくても学べない若者たちに西洋学問を教えた。そして、教会を建て、人々を宗教の道に導いた。
その中心にいたのが米国人宣教師アペンゼラーだった。彼は朝鮮初の西洋式の学校を建て、子どもたちを教育した。
彼が建てた学校や教会は、ソウル都心チョンドン(貞洞)の路地に建ち並んでいる。現在、「チョンドンギル」と呼ばれている。
シチョン(市庁)駅の1番または2番出口を出てトクスグン(徳寿宮)の石垣道を歩いていると、西洋風の古い建物と教会が目を引く。このチョンドンギルには、米国人たちが韓国に西洋風の教育機関や宗教・医療施設などを建てた約100年前の痕跡がそのまま残っている。
このチョンドンギルは、近代化の波が押し寄せた現場であり、100年前にタイムスリップできるスポットだ。
当時、ここには米国だけでなくロシアやフランスなど西欧列強の公司館もあり、朝鮮との関係を深めていた。今当時の痕跡はあまり残っていないが、まで当時の姿を維持している近代文化遺産があり、まるで過去にタイムスリップしたようだ。
トクスグンの石垣道の一番端に旧米国公司館がある。韓国と米国の関係を語るには欠かせない場所だ。1883年に貞洞に米国公司館ができて以来、チョンドンはソウルを代表する外国人街であり、近代の西洋文化が入る窓口となった。
赤レンガが目を引くペジェ(培材)学堂歴史博物館は、韓国初の西洋式学校で、韓国初代大統領イ・スンマン(李承晩)や1920年代の韓国を代表する文学者で小説家のナ・ドヒャン、詩人のキム・ソウォルらを輩出した学校である。この建物は現在、ペジェ学堂を建てた米国人宣教師アペンゼラーとその妻を追悼する記念館として使用されている。
アペンゼラーは韓国にメソジスト教会を伝えた米国人宣教師で、教育や医療活動で大きな業績を残した。
アペンゼラーの痕跡は隣にあるチョンドン(貞洞)第一教会にも見られる。彼は一時期、そこで暮らしていたという。西欧様式でありつつ韓国の要素が多く取り入れられた建物で、韓国初のメソジスト教会として知られている。
イファ(梨花)博物館は韓国初の女性教育施設である。梨花学堂が建てられた1886年頃の韓国社会では、女性は教育を受ける対象ではなかった。たった1人から始まったが、やがて韓国女性教育の拠点となる。
近代化期の韓国に西洋学問を伝えた米国人宣教師の中で自国に戻れないまま生涯を終えた人は、ヤンファジン(楊花津)外国人宣教師墓地で眠っている。韓国の近代化を主導した主役たちの名残りが感じられるこの墓地は、観光名所に定着した。