MERS第7次対策会議
日付 2015年6月12日 | 場所 ソウル市庁
6月5日、今回のMERS非常事態に臨む我々の姿勢を「準戦時状態」と定め、一千万人のソウル市民の命と安全のために頑張ってまいりました。この一週間、我々ソウル市公務員は必死に対応に取り組んでまいりました。総力を挙げてまいりました。
それにもかかわらず、昨夜、再び4人の感染確定患者が発生しました。今まで感染が確定された患者数は、累計126名に上っています。昨日、このような新聞記事を読みました。「母の最期を看取れなかった娘の涙(ハンギョレ、6月11日付)」という記事です。脳梗塞で入院中の病院で感染した老母と、お見舞いに行った婿が感染して入院し、娘は他の病室で母親に会うこともできずに外出禁止措置を受け、二人の息子は自宅に隔離されたとのことでした。老母と娘の涙を見ながら、MERSで家族が会えないでいることに心が痛みました。妊婦の方が感染したという悲しいニュースも伝えられました。妊婦が病室で一人でMERSと闘っていることを思うと、気の毒でやるせない気持ちになります。一日も早くMERSから安全なソウル市をつくるために、最善を尽くしていく覚悟を新たにしました。
今、我々はこのようにMERSとの戦争を繰り広げています。戦争の時は、戦う相手と守る対象がはっきりと存在します。今我々が戦うべき相手はMERSであり、またMERSがもたらした過剰な不安と恐怖です。我々が守るべき対象は市民の命と安全であり、市民の暮らしと幸せです。私は政府と自治体、民間の3者が一丸となって、この戦いに臨むべきだと思います。その過程で行き過ぎた楽観と過剰な恐怖は禁物です。こう思うようになったときこそ、我々はMERSとの戦いで勝利を収めることができると思います。
ソウル市はメディヒール病院の閉鎖措置、疫学調査、全数調査など、病院を中心とする感染拡大に対し、強力な措置を講じています。また、これと同時に市民の日常生活も守るべきだと思っています。MERSへの対応は迅速かつ徹底的に行い、市民の暮らしは安全に守ります。ソウル市は、このようなツートラックの戦略を取っています。ソウル市公務員試験を決行したのも、このような判断があったからです。これまで数回にわたって専門家と議論し、悩んできました。多くの方々の意見を参考にしました。その結果、MERSの危険から安全だという判断を下し、予定通り試験を行うという結論を出したのです。受験生は厳しい経済状況の中で、公務員を夢見て頑張ってきた青年たちです。貧しい家計の中、合間を縫ってバイトをしながら勉強していた青年たちです。彼らの人生計画と夢を、台無しにするわけにはいきませんでした。13万人の夢をMERSから守らなければならないと思いました。13万人の青年たちの夢を守り、実現できるように支えるのも、ソウル市庁の役目です。そこでソウル市は、試験を受けたい人であれば、誰でも受けられるように支援し、最大に配慮するということを原則にしています。
ソウル市は、全員が無事に試験を受けられるよう、徹底した準備を行っていきます。受験生らがこれまで磨き上げてきた実力を存分に発揮できるよう、最善の環境をつくり、配慮していく方針です。防疫のための万全な備えを図っていきます。
ソウル市は2009年11月、新型インフルエンザが猛威を振るったときも、ソウル市内の237学校で約16万8,000人が受験し、無事に試験を終えた経験とノウハウを持っています(2009年11月11日危機段階の引上げ、11月12日大学修学能力試験)。ソウル市は、いわば「網目状の防疫」で受験生の事情を考慮し、3つのタイプの試験場を設けます。一般試験場と隔離試験場、自宅隔離者のための自宅試験場です。自宅隔離者として自宅試験場で受験する人は現在2名です。一部では自宅隔離者を優遇するのではないかという不満の声もありますが、障害者の場合も別途の場所で受験する例があり、これは自宅隔離者の公務担任権を保障するという意味で行われるものです。
モクミンシンショ(牧民心書)第6条には、このような一文が書いてあります。「災害と災難が発生し、燃えているものがあればそれを助け出し、水に溺れるものがあれば、それを救い出さなければならないが、まるで自分が燃えて溺れているように急ぐべきであり、遅らせてはならない」。これは、公職者は本来苦境に陥っている民を、強い決意をもって速やかに助けなければならないということを強調しています。自宅隔離者に自宅で受験してもらうことを批判する声に、次のような考えが脳裏をよぎりました。「自宅隔離者」も他の人と同じく、自分の人生をかけて勉強に励んてきた人たちです。自ら望んだわけでもないのに、偶然感染者に接触し、行政当局の命令によって自宅に隔離される不便を強いられています。にもかかわらず、自分や家族、周りの人々のために、それを快く受け入れているのです。彼らから受験する機会を奪うことこそ、不当ではないでしょうか。
先日、MERS患者は受け入れないというSMSを送ったソウル医療院の関係者を、直ちに更迭しました。市民の苦しみに背を向ける人は、公職者として資格が足りないと判断したからです。公職者は専門性と能力よりも、人への配慮と愛情を持つことが大事です。共同体精神に基づいた、人間としての最小限の礼儀は必要です。私がソウル市公務員に、常に強調していることでもあります。牧民心書の言葉のように、私とソウル市公務員は、今回のMERS事態を我々の家族のこと、自分のことだと思い、対応に取り組んでいます。
本日の午後からは、医療界との協力をさらに強化していく方針です。7ヵ所の民間病院を含め、20ヵ所の病院と実効性のある対策を推進するための官民合同対策会議を、市庁で開催します。民間企業もMERS対策に積極的に参加しています。本日、ユハン(柳韓)キンバリー社が高齢者のために使い捨てマスク2万枚を、大韓老人会ソウル市連合会に寄付してくださる予定です。
昨日からソウル市人材開発院を隔離施設として利用しています。昨日2名が入所、最大30人を受け入れることができます。ソウル市は、市民の不便を最小限に抑えて生業に専念できるよう、昨日から(6月10日)対策本部の傘下に5つのチーム、27人で構成された「市民不便解消班」を立ち上げました。ここでMERSと関連した全ての苦情を、迅速に処理する予定です。
改めて申し上げます。ソウル市は、市民の皆様が安全な日常生活を営み、生業に専念できるよう最善をつくしています。警戒心は必要ですが、恐怖心は禁物です。普段のように日常生活を送っていただければ、MERS事態は必ずソウル市が収束させます。
ソウル市公務員の皆様にお願い申し上げます。今回のMERSとの戦いは最初から戦略を立てていたり、退路を設けて戦っているわけではないということ、よく認識されているでしょう。1名たりとも、市民の中に患う理由のある人や命を失ってもいい人など、存在はしません。1名残らず、市民がMERSの不安と恐怖に怯えることなく、暮らしの安全と幸せを確保できる日まで、我々の役割と役目は終わりません。ソウル市MERS対策本部長、パク・ウォンスンの役割と役目も終わりません。みんなで一緒に、この危機を乗り越えていきましょう。市民の暮らしと幸せを守りましょう。ありがとうございました。