「ソウル市の未来100年、都市計画基盤づくり」発表
月日:2013年4月1日 会場:ソウル市庁ブリーフィングルーム
本日の記者発表会が、これから先100年を見据えた本格的な議論のスタートになればと願います。「ソウル市の都市計画をどう展開すべきか」という問いかけに対する総合的な回答と省察が盛り込まれています。では、「ソウル市の未来100年、都市計画基盤づくり」を発表します。
都市計画は土地利用に関することだけでありません。福祉や産業、教育、文化といった市政のあらゆる分野を網羅しています。ですから、都市計画は地方自治行政の全てだとも言われます。
本日発表する内容は、主に空間利用の秩序に関することです。過去の都市計画を振り返り、ソウル市の未来をどのように準備していくかに関する内容です。
市長に就任してからこれまで、都市計画に関する様々な問題と葛藤を経験してきました。パイシティ、ニュータウン事業、ファインツリー、そして最近のヨンサン(龍山)開発に至るまで、どれも大きく深く複雑な難題です。こうした敏感な問題と葛藤を解決しようと、ヘリコプターに乗ってソウル市を上空から見下ろし、ハンガン(漢江)の船の上で討論会を行い、専門家とともにハニャン(漢陽)を視察しました。その過程で解決策を見出すための政策熟議を何度も行いました。個別の事案それぞれに複雑に絡み合う複合的な問題がありました。
そうして気づいたことは、根本的に都市計画の哲学と原則に対する韓国社会とソウル市民の合意が必要だということでした。個別事案ごとに原則に即して正常化しつつ、根本的な対策を立てなければなりません。
私は常に「何もしない市長として記憶されたい」と申し上げてきました。すぐに現れる目に見える成果に執着しないという意味です。より根本的に必要なこと、たとえそれが100年かかることであっても、絶対に必要なことなら私たちみんなで、市民が一緒になって黙々と取り組んでいけたら良いと思います。
では、なぜ「都市計画100年」なのでしょうか。一度開発したら後戻りできない「開発の非可逆性」があるからです。一度築いたら100年は続く都市にしたいと思いませんか。100年後のソウル市を考える本日の都市計画は当然のことなのです。
それでは、過去100年間のソウル市の都市計画はどうだったのでしょうか。日本の植民統治下にあった1912年、「京城市区改修計画」という整備計画が発表されました。その恥辱の歴史を乗り越えて、ソウル市はひどい貧困と戦争の廃虚から輝かしい経済成長を成し遂げました。名実共にグローバル都市となりました。また、このような圧縮成長の過程で、都市計画によって住宅や道路、上下水道といった都市インフラが迅速に供給されました。ソウル市の物理的基盤を構築するのに大きく寄与しました。
その一方で残念なことは、これまで私たちが軽視してきた価値です。今ソウルで起きている様々な問題はそこに原因があると思います。つまり、経済社会的インフラは近代化を遂げましたが、都市計画の近代化については議論されることがありませんでした。
空間的には自然環境と景観、歴史文化遺産に対する考慮が不十分で、人という観点では共同体とその中で暮らす人々への配慮が足りませんでした。また、私たちの将来、ソウル市の未来の姿に対する市民の合意、それを後押しする都市計画の枠組みは、ソウル市の成長と足並みを揃えることができませんでした。
では、新しい100年都市計画はどうあるべきでしょうか。基本的には、人の価値を高め、「ソウル市のアイデンティティ」を取り戻さなければなりません。低成長時代の固定化や急速な人口高齢化、1~2人世帯の増加といった様々な社会的ニーズに対応し、気候変動など将来の問題に対応できなければなりません。
例えば、ハンガン(漢江)のほとりで再開発を行う場合は、建物のオーナーの意見だけでなく、漢江の将来の姿やアクセスのしやすさ、スカイラインといった様々な価値を考慮しなければならないということです。そこで、ソウル市は多様な価値を反映させた計画の枠組み、そして市民が参加できる参加の枠組みをつくり、計画の具体的な内容を市民と共につくります。その結果は次の世代が引き続き享受することでしょう。
これは、今回の発表を象徴する絵です。100年都市計画の基盤づくりの中核は、時代が変わっても変わることのない都市計画のプラットホームを構築することです。ソウル市の100年先を準備する計画の枠組みと、市民、専門家、公共が一緒に話し合う場を設けるということです。市民の共感と社会的合意をもとに、原則と基準に従って予測可能な都市管理を実現する、精巧な計画の枠組みをつくり、ソウル市の持続可能な再生と限られた土地資源の積極的な管理を行い、事業を実現することが計画の柱となっています。その内容は、様々な構成員が直接参加する話し合いの場が設けられ、協力的ガバナンスを通じて完成します。
ソウル市のアイデンティティの回復や市民の暮らしの質の向上、地域のバランスのとれた発展、持続可能な発展、都市競争力の強化など、ソウル市が長期的に取り組む目標と価値は、都市計画の枠組みと協力的ガバナンスという都市計画のプラットホームを通じて実現されるでしょう。
そうして都市計画の基盤が強固になれば、ソウル市が目指す多様な価値を、方向性と予測可能性、市民の合意に基づいて実現できると確信します。
では、具体的に何をするのか説明いたします。
まず、市民の合意をもとに、ソウル市の都市計画に関する持続可能な原則と基準を策定します。都市計画憲章や2030都市基本計画、公共寄与原則など、様々な管理計画基準に対する社会の合意を導き出します。その中でも都市計画憲章は、変わることのない、時代を超えたソウル市の価値を反映するものにします。昨年8月から都市計画政策諮問団に憲章分科を新たに設け、憲章制定の必要性や構成形式、盛り込むべき価値などを議論してきました。より具体的な内容は、広範囲な意見の取りまとめと議論を経て完成させてまいります。市民の皆様のご関心とご参加をお願い申し上げます。
「都市計画憲章」が完成すれば、市民がソウル都市計画の哲学と認識を共有することになり、都市管理の予測可能性が高まるでしょう。個別事業は方向性が明確になって事業期間短縮効果があるでしょうし、行政には一貫した意志決定の根拠ができて都市計画の一貫性と連続性が保障されるでしょう。
2030都市基本計画は、ソウル市の最優先の都市空間計画です。多様な人文的・社会的価値を反映させ、市民自らソウル市の未来像を決める最初の計画になります。市民がつくった未来像は、「コミュニケーションと思いやりに満ちた幸せな街ソウル」です。この未来像を実現する中核課題や目標・戦略など計画案6分科において109人の市民、専門家、ソウル市職員が共同で作成中です。5月中にその素案を発表する予定です。
ソウル市都市計画の原則と基準を確立する都市計画憲章の制定及び2030都市基本計画の策定と共に、わかりやすく予測可能な都市計画にすべく、地域別の都市計画を綿密に策定してまいります。
これまでのソウル市の都市計画の枠組みは、人口10万人の都市と大きな違いがありませんでした。
人口1千万人の都市にふさわしい、2~3洞の小生活圏単位まで緻密な都市計画を策定し、漢陽都城の中や漢江の周辺など重要地域については別途の管理計画を策定します。
中でも漢江周辺の管理基本計画は、都市計画政策諮問団が昨年作成した漢江周辺管理の方向性をもとに、漢江周辺全体に対する具体的な管理計画を盛り込み、2015年上半期を目処に完成させます。生活圏計画は、都市基本計画を地域の小生活圏単位まで具体化し、生活密着型の計画課題を示す綿密な管理に向けた新しい都市計画の枠組みです。ソウル市の東北、西北、都心、西南、東南の5つの圏域において、各自治区の計画、その中の2~3洞の小生活圏単位計画から洞管理計画まで緻密な都市計画を策定します。昨年から基礎研究とモデル計画を検討しており、今年下半期から実際に計画策定に着手して2015年末を目処に完成するソウル市の都市計画の枠組みはより一層綿密なものになるでしょう。
参考までに、生活圏計画を実感できるよう作成した数枚の図面をお見せします。この図面は、カンブク(江北)区、ソンブク(城北)区、トボン(道峰)区、ノウォン(蘆原)区の東北4区を例に挙げ、圏域レベルの総合構想図を示しています。この図面は、その圏域のうち城北区のポムン(普門)洞一帯を含む「動線小生活圏」の自治区と住民の意見を表した図面で、次の図面は「動線生活圏」の総合発展構想を示したものです。
原則と基準づくり、計画の枠組みの補強に続き、ソウル市の持続可能な発展に関して申し上げます。これからは、ソウル市の都市管理のパラダイムを物理的環境が中心の開発・整備から、人を中心とする都市再生に転換します。限られた土地資源を体系的に管理し、良い開発を実現していきます。これは低成長の中でも持続可能な都市再生戦略となるでしょう。都市化に関するノウハウがソウル市よりも豊富な英国などの諸都市では、既に80年代以降、単純な「再開発(redevelopment)」に相対する概念として経済的・社会的改善も含む「再生(regeneration)」を目標としてきました。
これからソウル市は、これまでの都市開発・整備の経験と町の共同体など新しい都市管理の方向性を融合させ、ソウル都市再生の目標と推進の方向性を確立してまいります。地域の物理的環境の改善だけでなく、人と共同体に対する配慮を優先させ、地域経済の活力を回復させるなど、地域の統合的な改善を目標とする都市再生戦略を策定・推進してまいります。
ソウル市は開発可能地が枯渇した状態です。限られた土地資源を体系的に管理し、未来の発展を牽引できる適正な用途で開発を実現させることは、未来100年都市計画の中核課題です。各種開発可能地を調査してデータベースを構築し、各用地の特性を生かした開発優先順位を判断していきます。活用方向の設定など土地資源全般に対する体系的な管理を推進します。
これまでの都市開発過程において、公共は民間が提案する事業を検討・審議する許可・認可権者としての限られた役割にとどまっていました。これからは専門家との協業(co-work)、官民協力(partnership)、市民の共感(communication)に基づく公共ディベロッパーとしての役割を果たしてまいります。公共開発センターを新設し、専門組織としての力量を強化したのも同じ理由です。
最後に申し上げたいのは、これらすべてのものを共につくっていこうということです。これまでの都市計画の策定と実現の過程は、政治家、専門家、土地所有者を中心に進められ、市民の共感を得ることができないケースが多くありました。持続可能なソウル市の都市計画実現のためには、全過程において「協力的ガバナンス」の枠組みを構造化することが重要です。政策方向を設定する段階から参加の機会を拡大し、具体的な利害関係がある地域住民はもとより、その影響を受ける周辺地域の近隣住民、さらにはより広い範囲の一般市民に至るまで参加の幅を広げていきます。
今後策定される計画は、基本的に「市民参加型」になるでしょう。私たちは既に最優先の都市計画である都市基本計画を策定する際にも、市民の直接参加によって20年後のソウル市の未来像を描いており、先ほどご説明した綿密なソウル市の各種都市計画も市民と共に策定してまいります。開発事業を推進する際も、専門家フォーラムを通じて妥当性を検討し、政策方向を確立すると同時に、アイディア公募や国際デザインコンペティションも積極的に実施する計画です。
「ソウル市の未来100年、都市計画基盤づくり」の推進スケジュールです。2013年末までに「都市計画憲章」や「2030都市基本計画」などソウル市の都市計画に関する主要な原則と基準を確立します。そして、2015年末までに小生活圏単位まで緻密な都市計画をつくり、漢江周辺と歴史都心の管理基本計画を策定することで綿密な都市計画の枠組みを完成させる予定です。本日は「100年都市計画」と午後に「緑の都市宣言」を発表し、明日は漢江周辺の管理方向、続いて土地資源管理を強化して良い開発を実現する「ソウル市公共開発センター」の本格的な運営及び「2030ソウル都市基本計画(案)」と、計画が相次いで発表される予定です。
尊敬する記者の皆様。今年は過去100年とは異なる新しい100年の都市計画がスタートする元年です。ソウル都市計画における真の近代が始まります。短期的な目に見える成果よりも、種を蒔く農夫の心でソウル市の100年都市計画の基盤を黙々と築いてまいります。
これらの内容は徹底して市民の参加と社会的合意をもとに行います。最後に一番強調したいことは、都市計画に対する市民の皆様のご関心とご参加です。それがあってこそ、ソウル市は「良い都市」にとどまらず、「偉大な都市」になることができます。