あそこを通るたび、いつも胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちでした。国宝1号の崇礼門(スンネムン)が火災で焼失した後、私たちはみな、まるで罪人になったかのような心持ちでした。先日の土曜日、崇礼門の復旧イベントに全国各地からたくさんの人が集まり、長い列を作っているのを見ながら、再度、静かに決意を新たにしました。
本日、ソウル市は、文化財庁と「文化遺産保存に関する業務協定」を締結しました。
ご存じの方はあまり多くないと思いますが、ソウルにある文化財について、保存や管理などに関する1次的な責任は、実は文化財庁が受け持っているのです。しかし、私たちの大切な文化遺産を守るのに、私の責任、あなたの責任と区別することができるでしょうか。
ソウルは漢城(ハニャン)百済時代(BC18年~AD475年)から首都の役割を果たしてきた由緒ある都市です。それだけに、私たちが守り保存しなければならない文化遺産も数多くあります。
ソウル市長に就任した最初の冬、私は、漢陽都城沿いの雪の積もった道を歩いてみました。ここは、別名「ソウル城郭 」とも呼ばれ、史跡10号に指定されています。所々崩れたり、道が途切れたりしていましたが、その道を歩きながら、今は亡きわれわれの先祖と心で会話をしました。
「ソウル市のランドマークは何か」とよく聞かれます。私はこの漢陽都城こそがソウル市のランドマークだと思います。高くそびえる華やかなビルではなく、われわれの先祖の知恵と暮らしが染み込んでいるこの文化財こそが、ランドマークにふさわしいでしょう。漢陽都城をきちんと復元・保存し、整備すれば、どのような国や都市と比べても、見劣りすることのない立派なランドマークになると思います。
世界各国の人々に漢陽都城の美しさを満喫してもらえるよう、ソウル市は、ユネスコの世界文化遺産への登録を推進しています。また、現在はまだ文化財に指定されてはいませんが、韓国の歴史が刻まれている近代文化遺産も、未来遺産に指定・保存していこうという努力も続けています。漢陽都城の周辺地域も新しく生まれ変わることでしょう。
今日行われた文化財庁との業務協定締結により、ソウル市にある文化遺産を守るために必要な、文化財庁の経験と知識、さらには人力と知恵を分かち合うことができるようになりました。本当に心強く思います。文化遺産を守り保存することは、まさに韓国の伝統を保存することだと思います。そして子孫として先祖に対する当然の義務でもあります。今日は、そのための心強い同行者に会えたかのような気分です。
今後は、文化財庁と力を合わせ、ソウル市の文化遺産を守っていきます。