去年、ソウルのある賃貸住宅団地で連続6人の自殺者が発生したという衝撃的なニュースを耳にしました。
私はすぐ、賃貸住宅団地で何が起こっているのか現場調査を始めました。
去年9月11日から13日までの3日間、江東区(カンドング)の高徳(コドク)リエンパーク、清凉里(チョンニャンニ)の韓信(ハンシン)アパート、江西区(カンソグ)の加陽(カヤン)5団地などを訪ねて500人余りの住民に会い、話を聞きました。ある所では一晩泊まったこともあります。
その後、ソウル市の各部署及びSH公社などと協力して仕切りを取り除くなど、賃貸住宅問題を解決することに没頭してきました。
TFチームを構成し、関連の専門家、地域活動家、社会福祉士、関連の団体など年間200人以上の人々から寄せられた多彩な意見を分析・検討するため、20回以上の論議会を開きました。
それで去る4月11日、参加 ・活力 ・自立を中心とした「公共賃貸住宅総合改善対策」を発表しました。
これまで賃貸住宅に関する問題解決は、事案別かつ個別に行われてきました。しかし今後は、住居福祉共同体の具現というビジョンのもと、「共存共栄する賃貸住宅、温かい情を交わす共同体住宅の形成」という推進目標を掲げ、2014年までに対策を具体化し、ソウルの賃貸住宅を「住みたい福祉共同体」に作り変えようというわけです。
代表的な政策をいくつか紹介します。
ソウルの住宅総数の約5.6%にあたる19万3千戸余りが公共賃貸住宅です。
ですから賃貸住宅の問題解決は、多くのソウル市民の生活に大きな影響を与える重要な政策です。
今回の政策のポイントは「創造的な革新」「大きな変化」です。
例えば、SH公社が独占してきた賃貸住宅の管理に競争体制を導入し、アパートのような共同住宅には入居者の管理参加を拡大するのです。
家賃については、永久賃貸団地の家賃との差額の20%を免除します。また雑収入の活用、総合管理室の運営などを通じて管理費を最高30%引き下げます。
低所得の一人暮らし高齢者に対して一日に一食無料給食を提供したり、障害者補装具修理センターを拡充するなど、体感型支援を増大します。
基礎受給者の世帯主が死亡したなどの理由で入居資格を失い、退去の危機に直面している世帯に対しては、名義の相続または他の賃貸住宅への移住などを支援します。
賃貸住宅への入居資格を基礎受給者や障害者などの低所得・脆弱階層に優先して付与します。こうすることで賃貸住宅の高齢者増加及びスラム化の原因になっていた永久賃貸住宅に、新婚夫婦や子供が三人いる家族など若年・ファミリー世帯が居住できるよう改善します。
すなわち「永久賃貸住宅 = 低所得・脆弱階層専用住宅」という固定概念を壊し、さまざまな世代と階層が共に生活する、そんな真のソーシャルミックスを推進するわけです。
特に賃貸住宅団地の住民一人一人の事情をよく理解している地域住民や統班長(地域責任者)、さらに住居福祉士や住民活動家などを「精神健康ヘルパー」や「分かち合う隣人」などという住民密着モニタリングとして育成し、専門機関と連携する架け橋の役割を果たすようにします。
また精神健康増進センターを主軸とし、▴自殺高危険群の早期発見システムの強化、▴開かれた相談窓口による精神健康相談、▴生命を保護するための迅速な対応、▴対象者オーダーメイド型事例の管理などを運営します。
それだけでなく、永久賃貸住宅団地内にある閉鎖中の商店街を示範的に選定し、公共性のある社会的企業に管理権を委託するか、住民にサービスを提供する空間または住民同士のコミュニティの場として活用したり、産地直送の直売市場など地域企業が入居することで雇用を創出するという方案も推進します。
高齢者の集まり処になっている永久賃貸住宅内の敬老堂を地域の条件及び利用者の特性に合わせた共同作業場として利用する予定です。
放置されていた遊休空間を利用した小さな図書館、地域共同の台所、ブックカフェなど住民のニーズに合わせたコミュニティの場を造成します。
今年9つの団地に図書館を造成します。そして一緒に料理を作りながら料理の方法を教えあったり、作った料理を一緒に食べたりする「地域共同の台所」は、2ヵ所の永久賃貸住宅団地で試験的に運営する予定です。
このようにして賃貸住宅団地が、自活力を持つ福祉共同体となるための第一歩を踏み出すのです。