外国の先進都市を見て回るとき、私はいつも「韓国ではどうしてあのような美しく素晴らしい建物を建てることができないのか」と考えていました。
そこで調べたのですが、制度にも問題があるし、若くて創造力を持つ建築家が参加しにくいシステムになっていました。
それでソウル市は、公共建物のレベルアップが都市の競争力強化に直結するという認識のもと、公共建築家などの専門家シンポジウムや建築聴策ワークショップなど、約50回にわたる論議を経た末、「公共建築物発注制度の改善方案」を準備し発表しました。
要旨は、今後ソウル市の公共建築物を発注する時、80%以上の割合で採択してきた「低価格入札」をなくし、「デザイン公募」による採択に全面変更するという内容です。
今までは入札参加業者の中から価格が最も安い業者を採択してきました。
しかしこれからは、公募した中から審査して、空間配置・審美性など利便性と独創性を兼ね備えたデザインを選定します。
これは25の自治区で発注するすべての建築物にも全面的に適用されます。
このようにする理由は、公共庁舎のような大規模な建物はもちろん、洞住民センターや図書館などを建てる場合にも、公共建物の品質とデザインのレベルを高めるためです。
さらにこれからは、公共建築物を企画する段階から市民と専門家の意見を取り入れ、デザイン公募においてもフレッシュなアイデアを持つ実力のある新人建築家たちが参加できるよう提出書類などを大幅に簡素化する予定です。
審査の全過程を公開して透明性を確保するとともに、建物が完成されるまで設計者が継続的に参加できるようにします。
これまでソウル市は、大規模な公共庁舎に関してはデザイン公募方式を採択してきましたが、市民の意見、設計者の施工参加などという一連の過程を無視しては今後も公共建物のレベルアップを図ることができないと判断し、企画から施工までを一括した制度の改善方案を模索したのです。
「公共建築物発注制度の改善方案」は、▴価格入札の全面廃止→デザイン公募に変更、▴若くて実力のある建築家のための公募方式の改善、▴審査の全過程を公開、▴企画の段階から市民や専門家、そして公務員などが共に参加するガバナンス体系の構築、▴工事の全過程に設計者の参加を保障、▴建築専門サイトの構築、▴ソウル型総括建築家制度の導入などが骨子です。
また設計公募の際には参加する審査委員の名簿を事前に公開し、審査の全過程をインターネットでライブ中継して、審査の透明性を確保する計画です。
さらに設計者には、本人の作品に対するコンセプトや計画した内容などについて説明する機会を提供します。
そして「事後設計管理制」を取り入れ、今までとは異なり、施工に設計者が参加できるようにします。
また、今年の下半期までに建築専門サイトを構築して市の年間発注量、発注時期、予定金額などをサイトに掲載し、設計者が事前に情報を共有することで発注時期に合わせてコンセプト案を準備するなど準備期間を持てるようにする計画です。
一方ソウル市は、来年から、民間の専門家が責任と一貫性を持って公共で発注するすべての公共建築物を体系的かつ総合的に管理する「ソウル型総括建築家」制度を取り入れる方案も検討しています。
総括建築家は、ソウルが1年間に発注する公共建築物の機能などが偏らないように調整・分配するなどの大枠を整える役割を担当することになります。
「公共建築物発注制度の改善方案」が定着して運営されるようになれば、ソウルは大きく変わるでしょう。
600年の都としての歴史と伝統、そして1000万人のソウル市民が暮らす現代との調和が図れるはずです。
そして公共建築物の主人である市民が直接参加することで「共に作るソウル」「共に享受するソウル」の夢が実現するのです。