消防士からソウル市長のもとに届いた手紙(抜粋)
「尊敬するソウル市長。本当にありがとうございます。(中略)
いつも被災現場で、市民に降りかかった不幸を目の当たりにするたび、きちんと備えができていればとか、もう少し早く着いていればとか、やるせない思いで胸が締め付けられ心の中で涙を流すことがよくあります。
時には、地下で起こった火災の消火と人命救助のため、悪魔のような真っ黒な煙の中に入っていきます。地下の狭い空間を手探りで進みながら、もしかしたら生きて戻れないかも知れないという恐怖に襲われます。しかし、我々に与えられた使命を全うするため、死地に赴いていく自分自身を発見します。
求道者のような気持ちでこの仕事を選びましたが、時には後悔することもあります。しかし、市民の皆さんが送ってくださる感謝の手紙や激励のメッセージ、そして我々に関心を持って見守ってくださる朴市長のおかげで、毎日やり甲斐を感じながら一生懸命頑張れるのだと思います。(中略)
これまで同様、変わることなく市政を営んでいかれますようお祈り申し上げます。」
(中浪消防署対応総括チーム、消防士キム・ギョンファン)
今日、ある消防士から、このような手紙が届きました。今日は「消防の日」です。そこで、いつもご苦労いただいている消防士の皆さんへ手紙を送ったのですが、それに対するお返事をいただいたのです。
消防士のキム・ギョンファンさんの手紙の、「死地に赴いていく自分自身」が「求道者のような気持ち」で仕事をしているという内容を読んで、本当に胸が熱くなりました。
彼のような消防士の献身的な働きと犠牲に対し、激励と感謝の気持ちを込めて、私は次のような手紙を書いたのです。上に挙げたのはこれへの返事です。
「始めまして。朴元淳です。
毎日寒いですね。冬に向かうこの季節、皆様お元気でお過ごしでしょうか。
今日は第50回目の「消防の日」です。まずソウルの全市民に代わって皆様のご苦労に心から感謝申し上げます。
消防署にとって今日は誕生日のような日です。しかし、おそらく今この瞬間も警戒を緩めず怠らず勤務しておられることと思います。重ねて感謝申し上げます。申し訳ない思いでいっぱいです。
消防精神とは、人間尊重と愛の最も純粋な表現です。
ソウル市の消防士の皆さんのおかげで、私はこの1年間一生懸命働くことができました。猛暑、水害、台風と相次ぐ緊急事態に対し、皆さんはいつも緊急機動隊として事故を未然に防いでくださいました。また、休む間もなくかかってくる通報の電話に、自分の家族が事故に遭ったかのように出動してくださいました。さらには、火災で生活基盤を失った低所得層の市民には、皆さんが寄付金を集め、生活環境を確保してくださいました。本当に温かい心であり、崇高なことです。もう一度心から感謝の意を表します。
親愛なる消防士の皆様。新庁舎の市長室には、12の会議用の椅子がありますが、この中には、消火活動中に殉職された皆さんの同僚が消防士になるという夢をかなえるための勉強に使っていた椅子があります。その椅子を見るたびに様々な思いが去来します。私が就任したばかりの頃、ソウル市の庁舎を売ってでも人材育成に力を入れるとお話しいたしました。その約束を、消防の分野において最初に実践いたします。消防学校を移転し、世界最高の消防行政タウンを造成するため、敷地を確保し、行政手続きおよび整備をすすめております。
皆さんが活動している場所には常に「痛み」があります。無事に業務を終えられた後も、この痛みのせいで心を落ちつけることができないのではないかと思います。そして皆さんは現場を忘れることがないために、他の人には分からない心の痛みをいつも感じておられると思います。しかし、皆さんが元気でいらっしゃってこそ、市民の幸せが守られるのだということを忘れないでください。
もう一度50周年を迎えた「消防の日」を心からお祝い申し上げます。新しい100年に向かって前進しつつ、何より皆さんの安全と健康、ご家族の幸せをお祈り申し上げます。ありがとうございます。」
2012年11月9日 ソウル特別市長 朴元淳