「朴元淳(パク・ウォンスン)市長を招待します」というキャッチコピーの芝居があるという話を聞きました。
若いアーティストたちの作った「ソウルの人々」という舞台です。タイトルに惹かれて、さっそく劇場を訪れてみました。
私が行った日は、ちょうど公演の最終日でした。毎日忙しく、明日、また明日と、先延ばしにしていたからです。
舞台はソウルの考試院(コシウォン、狭小ワンルーム)、ストーリーはそこに住む若者の生活模様です。
就職が決まらず極度に神経質になってしまったチュンヒ。学費や部屋代と、一日中アルバイト漬けになってもいつも一文無しのラム。慶尚南道(キョンサンナムド)・馬山(マサン)から上京し晴れ晴れデパートに就職したが、足が腫れるまで働いても自分の売っているカバン一つ買えないタジョンイなど。他郷のソウルで孤軍奮闘している若者たちの物語です。
故郷を離れ、ソウルに上京した人なら誰しもこの内容には共感を覚えるでしょう。
私も自分の学生時代を思い出しました。
私は中学を卒業してはじめて上京しました。
住む場所がなかった私は、新道林洞(シンドリムドン)にあった姉の部屋に居候になりました。
バス停から間借りしていた部屋までは風俗街が続いていました。いつもそこにいた化粧の濃いお姉さんたちは、時々坊主頭の私の学生帽を外すなど、悪戯をしました。
私はそれが怖く、また恥ずかしく、帽子を捨てて逃げ出しました。
山の上にあった部屋まで全力疾走すると、華やかなソウルの夜が眼下に広がりました。
私が住んでいた田舎の昌寧(チャンニョン)とは比べものにならないほど華やかな都市のネオンサイン。
明かりの絶えない都市の中で、私だけが取り残されているようで、どこか寂しい気持ちになりました。
それでも私が「冷たいソウル」に耐えられたのは、芝居の主人公と同じく、ここソウルには私の夢があったからでした。
夢見る人には道が開けるソウル。それが私の望むソウルです。
ソウル出身者と地方出身者、江南(カンナム)と江北(カンブク)、裕福な人と貧しい人の格差が、そのまま夢の格差にはならない社会。それが私の望むソウルです。
家が貧しいため、外国での語学研修もできず、修士号も持っていないけれど、一生懸命勉強するチュンヒが夢を叶え、また、学費が今の半額になり、ラムがバイト先ではなく学校に通えることを、切に願っています。
舞台にも登場した歌、チョー・ヨンピルの「夢」
今この瞬間にも、ソウルで自分の夢を実現するため寂しさに耐えている若者たちに、少しでも慰めになれば、と思います。
「夢」
1.華やかな都市を胸に描き、ここまでやって来た
ここは寒く、厳しい場所
道に迷い、みすぼらしい部屋の前に跪き、
熱い涙を流す
遠くから希望を求め、夢を求め、
苦しく、孤独なこの道を歩いてきた
どこが森なのか、どこが沼なのか、
誰も話してはくれない
2.人々は皆故郷に帰る
私は今一人ここに残って
ビルの中をさ迷い、みすぼらしい路地に佇んで
熱い涙を流す
あの星は私の胸の中を知っているのだろうか、私の夢を知っているのだろうか
苦しい時は哀しい歌を歌おう
P.S. 若い時にソウルに上京して他郷での暮らしの厳しさを知っている中年たち、そして今も厳しい暮らしの中、夢を忘れないソウルの青年が、この舞台を通じて少しでも癒されればと、最終公演を見て思いましたが、幸いにも公演の延長が決まったそうです。
この芝居が多くの方々への癒しと激励になれば、と願います。