「これは少し恩着せがましくありませんか。」
ソウル市の非正規職員の正規職員への転換に伴い、記者会見が行われるということを聞いた私が言った言葉です。
5月1日からソウル市とその傘下機関に勤める1,054人の非正規職員が正規職員になりました。とても良いニュースです。
彼ら本人はもちろん、家族の喜ぶ顔を思うと、私まで幸せな気分になりました。
全国の公共機関でははじめての試みであり、しかも政府政策より一歩進んで、定年の近い56歳以上も正規職員への転換が行われました。今回の取り組みは単なる雇用の保証だけでなく、号俸、昇進、福祉ポイント、正月・お盆ボーナスのような処遇も改善されたのですから、意味のあることです。それは私も知っています。
何より、ソウル市のケースがモデルとなり、他の自治体、公共機関、さらには民間企業の変化を導くためには、積極的に広報しなければならないということも知っています。
しかし、心の片隅では正規職員になれなかった1,836人の非正規職員の方々に対する残念な気持ちがぬぐいきれません。今回のことを進めた労働補佐官に、今年50歳を過ぎた一人の非正規職員が「どうか助けてほしい」という電話を掛け、正規職員への転換をお願いしたそうです。ソウル市の傘下機関に勤めているその方は、残念ながら今回の転換対象には含まれていません。
私も多くの方からE-mailや手紙を受け取りました。その中にはソウル市非正規職員の家族もいます。私に直接連絡するぐらいですから、どれほど切実なのかが分かります。その方々を思うと、1,054人の正規職員への転換を、諸手を挙げて喜ぶわけにはいきません。
下半期には、派遣、間接雇用の非正規職員も正規職員に転換しようと考えています。
しかし、依然として法的な問題があり、非正規職員を100%正規職員に転換させるのは困難なことです。
同じ業務を行っているのに差別を受け、非正規雇用だという理由で解雇され、正規雇用の必要なところに非正規雇用が行われることは、「労働の常識」、「労働の基本」に反することです。今まで眼前の利益に目が眩み、人より利益を優先してきたこの社会では、解決すべき問題が山積みです。
「労働の常識が通じる社会」、「労働の基本が守られる社会」、それは遠い道程ですが、我々が必ず行くべき道なのではないでしょうか。