ソウルで時間がゆっくり流れる街、そのため楽園のような通りがある。そこに入ると、どの通りよりも生活感が漂う。
宮殿の西側、山麓を上るソチョンとプアムドンギルは、外国人には「ソウルのユートピア」といわれるほど人気スポット。
朝鮮一の画家、謙斎・チョン・ソン(鄭敾)はソチョンに住み、多くの絵画を残した。家のすぐ後ろにイヌァンサン(仁王山)があり、「仁王霽色図」を残すことができた。
鄭敾に続き、近代の画家・イ・ジュンソプ(李仲燮)もソチョンに住んだ。
それ以外にも多くの画家がこの街に住んだ。女優イ・ミンジョンの母方の祖父であるパク・ノス(朴魯壽)画伯も住民だった。「秘密の庭園」と呼ばれるほどベールに包まれていた朴画伯の自宅は、現在チョンノ(鐘路)区立朴魯壽美術館に生まれ変わっている。
キョンボックン(景福宮)の西側に位置するソチョンは、プクチョン(北村)と似ているが雰囲気は少し違う。もっと「人が住んでいる街」の雰囲気が漂う。
ソチョンはキョンボックン(景福宮)の西側の地域を意味する。プクチョンが都城の北のほうにあるように、「ソチョン」も都城の西側に位置している。
ソチョンは古い通りや建物が多く、住民の表情からも余裕が感じられる。プクチョンのように韓屋が集まってはいないが、高層ビルがないため、こぢんまりとした印象を受ける。
数年前から観光地として浮上し、コーヒーショップ、服屋などが増えたが、それでもこの街の人々はソチョンを「田舎町」と呼ぶ。有名なコーヒーチェーン店も最近やっとできたほどである。
このような雰囲気のおかげで映画のロケ地としても親しまれている。映画「建築学概論」のロケ地であり、歌手IU(アイユー)のミュージックビデオ「花のしおり」、ドラマ「サメ」の舞台となった。
ソチョンが開発の影響を受けず、現在のような雰囲気を維持できたのは、地域的な特色のためである。青瓦台(大統領府)の近くであり、高度制限、開発制限のため高層ビルの建設や改装が難しい。
そのため、歴史のある名所も多い。ソウルで最も古い古本屋「テオ書店」は60年前の姿をそのまま維持している。「ヒョジャベーカリー」は20年以上青瓦台にパンを納品し、大手パン屋チェーンと競合している。
トンイン(通仁)市場は専用コインが流通される面白い市場である。店頭で販売する専用コイン(1個500ウォン)を使って市場内のほとんどの店の食品を食べることができる。
山があって水があり、リンゴの木やツタが訪問客を歓迎するプアムドンギルは、楽園のような街と呼ばれる。
キョンボックンの北西の奥に位置するこの街は、時間が止まったかのように昔のままの思い出と記憶を維持している。カフェ通りでくつろぎ、白砂室渓谷ならではの飾らない自然を満喫できる。
プアムドンギルは、ユン・ドンジュ(尹東柱)文学館から丘に沿って上ると、かわいいカフェが並ぶ。この街を世に広めたドラマ「コーヒープリンス1号店」のコーヒーショップもプアムドンギルにある。箸ギャラリー、ろう人形ギャラリーなど風変わりなギャラリーも多い。グルメガイドで見た有名な料理店も揃っている。
プアムドンギルから白砂室渓谷に移る入口は、まるで隠れた庭園に向かう門のようだ。かわいい家が瞬時に消え、鬱蒼とした森が現れる。イヌァンサンとプガッサン(北岳山)の静けさと白砂室渓谷の存在から、プアムドンは「ムゲ(武溪)」洞とも呼ばれた。「ムゲ」とは楽園を意味する。
プアムドンギルがこのような趣のある風情を維持している大きな理由は、ソチョンと同様、近くに青瓦台があるからだ。軍事保護区域・開発制限区域であるため、新築の建物があまりなく、高いビルもない。