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[2013] 市長挨拶

  • 市民の参加機会を増やしていくソウルの行政が誇らしく思えます。

  • [2013] 市長挨拶 SMG 1,893

    イギリス雑誌「Monocle」インタビュー

    日付:2013年5月6日 場所:ソウル市庁市長執務室

    ソウルを住みやすい都市にするためにどんな努力をされていますか。 また、人口過密問題にはどんな解決策があると思いますか。

    何よりソウル市民が幸せになることが最も大切です。ソウルを住みやすい都市にすること、それが私の最も根本的かつ究極の夢ではないかと思います。

    人口過密問題は様々な側面から解決していく必要があります。ソウルの人口過密には否定的な面が多いのも事実ですが、その一方ではソウルの活力につながった面もあります。現在韓国の人口約5千万人のうち1千万人以上がソウルに住んでいますが、ソウルの人口増加推移を見ますと、1960年代の経済発展によって農村からソウル市への人口移動が急激に増えました。しかし、最近は減少に転じています。

    ソウル人口の時代別推移を見ますと、1960年245万人、1980年836万人、2003年1,028万人、2009年1,046万人と急激に増加しましたが、最近は少子化の影響や新都市建設などによる移住によりソウルの人口は次第に減少し、2012年6月末時点で1,023万人に減りました。

    このように、都市への人口集中が進むにつれ、都市は国の政治、経済、文化の成長をけん引する役割を果たすことになり、それと同時に様々な要求を迫られ、対立を抱えるようになりました。それにもかかわらず、21世紀は都市化が主な現象として進み、現在全世界人口の約60%程度が都市に住んでいます。都市の未来が人類の未来を左右するようになると思います。

    私は社会革新家からソウル市長へ、民間部門から公共部門へ移ってきましたが、複雑な社会問題を解決し、新しい変化を遂げるためには、セクター間のコミュニケーション、協力、共有が重要であることを自らの体験で気付き、それを強調し続けてきました。

    ソウル市はこれからも大都市が直面する多様な問題の解決と市民の暮らしの質の向上のために政府、民間企業、市民間の効率的かつ生産的な協力関係を構築できるよう努力します。

    ソウル市が進める環境政策のビジョンと目標は何ですか。

    エネルギーの生産や資源循環が行われる、世界気候環境首都(気候環境に優しい都市)ソウル!それを実現するために、産官民連携による気候環境ガバナンス体制を構築し、エネルギー節約を越え太陽光などの新再生エネルギーの生産で、200万石油換算トン(TOE)分のエネルギーを減らしていくという意志を込めた「原発一基削減運動」を推進しております。

    再使用と再活用文化の拡大を通じて、世界一のリサイクル都市を実現し、市民の健康に直結する空気をきれいにし、快適な生活環境を整え、1千万人の市民だけではなく、ソウルを訪れる全ての人が幸せで住みやすい都市「環境特別市ソウル」を目指して頑張っております。

    ソウル市が進めるエネルギー政策である「原発一基削減運動」の推進背景と目標を簡単に説明してください。

    福島原発事故、我々は隣国が直面したその悲劇を忘れることができません。その悲劇から我々は何を学んだでしょうか。安全なエネルギーへの関心は高まっています。また、地球温暖化を加速させる温室効果ガスを減らすためには、上がりつつある地球の温度を抑え、健康で安全なソウルを子孫に残さねばならないと思います。その心が最も意義深い教訓ではないかと思います。そうした心を持って、「原発一基削減運動」を進めているわけです。

    ソウルの電力消費量は、国全体の10.9%を占めており、その割合は年々増加傾向にありますが、新再生エネルギーの生産量はエネルギー消費量の1.5%に過ぎず、全体エネルギー自給率はわずか2.8%にとどまっているのが実情です。

    200万TOE分のエネルギー消費を削減できる「原発一基削減運動」によって、2014年から毎年2兆8百億ウォンの原油輸入代替効果と、汝矣島(ヨイド)面積の1,295倍に達する森林づくりの効果に匹敵する、606万トンの温室効果ガスの削減効果が予想されます。

    「原発一基削減運動」を通じて、多少の不便を強いられることもありますが、我々の未来のために楽しく節約運動に参加できる市民が住む都市、ビルの屋上には「太陽光発電所」でいっぱいになるエネルギー生産都市、市民と共に「一つの原発で生産されるエネルギー量」を減らし続けていく、奇跡を生み出す都市へ、世界的な大都市ソウルが生まれ変わることがその最も大きな意味であり、結実だと思います。

    今後、ソウル市が進める環境政策強化における方向性と計画は何でしょうか。

    ソウルは環境面で優れた資源を持っている都市です。内四山(ネササン)と外四山(ウェササン)、国立公園を挟んでおり、漢江(ハンガン)という豊富な水量の素晴らしい川に面しています。これまではその価値を自ら見出せなかっただけです。その価値に改めて目を向けるべきだと思います。

    美しい自然を有するソウルをもう一度「環境特別市」、住みやすい都市にするための全ての過程において市民の意見を反映し、世界気候環境首都ソウルをつくるという夢を実現するために市民が参加できる機会を積極的に提供するよう努めます。

    また、世界一の資源循環型都市の実現を目指し、市民の自発的な再活用・再使用への参加を増やすために努力しております。

    毎週日曜日、都心の真ん中にある光化門(クァンファムン)で「希望にあふれる共有の市場」を開催しています。そして、毎月第三週日曜日には世宗路(セジョンノ)歩行者天国に市場を拡大し、再使用の文化を広めるために取り組んでおります。

    市民自らが変えるエネルギー文化、ソウルが変わる幸せな変化、所有よりも共有、再使用などの価値と文化を広げ、エネルギーと資源を効率的に活用し、ソウルだけでなく、地球のことを一緒に考える消費文化を築き上げていく都市、再活用とエネルギー効率を通じて産業に活気を与えていくダイナミックな都市を目指します。

    急成長しつつある他のアジアの都市らがソウルを見習うべきところがあるとしたら、それは何でしょうか。

    ソウルが危機を乗り越え、生き残ることができた背景には、ソウルならではの「躍動性(ダイナミック)」と「創造力」があります。そして、その力で革新し続けてきたことが繁栄の理由ではないかと思います。

    ソウルは、地政学的には日本と中国の間に挟まれた半島の国です。政治学的にも海洋勢力と大陸勢力が衝突する地域ですが、ソウルはそのような不安材料を「躍動性」に生まれ変わらせてきました。

    また、地政学的な意味でも前向きな役割を十分果たしています。大陸勢力と海洋勢力の 草刈り場、つまり回廊としての役割を見事に果たしています。ハブ(拠点)という言葉で表現されますが、ソウルはまさに、文明の交流通路です。

    こうした前向きな面をさらに広げていくためには、人への投資が欠かせません。その認識は自然に広がり続け、特にそれは韓国社会固有の現象ともいえる「教育熱」として表れてきました。しかし、もはや時代は変わりつつあります。先日、北京市で行われた両市の研究員同士のセミナーでは次のような意見が出ました。「西洋の近代化には、我々はある程度追いつくことができ、見事に成功した。しかし、短時間で成し遂げた過度な業績は私たちの暮らしを不安や不幸に陥れた。今や東洋発の第二の近代化が必要だ。そしてその役割は、アジアの都市が果たすべきだ」

    これまでソウルは、幾多の試行錯誤を経て数多くのノウハウを積み重ねてきました。これからはそのノウハウをアジアの都市はもちろん、全世界の都市とも共有したいと思います。

    中央政府の世宗(セジョン)市への移転がソウルに及ぼす影響は何だと思いますか。

    地域のバランスの取れた発展は、国家発展の基本的な要素だと確信しております。したがって、行政を世宗市に移転させるのは望ましいことだと思います。それは、ワシントンとニューヨーク、あるいはワシントンとボストンに都市機能を分散していることと同じ観点から考えられます。

    しかし、ソウル市と政府はお互い協力すべきことがたくさんあります。南北関係の改善から、市民一人ひとりの暮らしを支える普遍的な福祉の問題まで、地方政府と中央政府の協力とコミュニケーションは欠かせません。こうしたことが地理的位置によって影響されることなどはないはずです。

    在任期間中に行われた政策の中で最も誇らしく思う成果と、任期が終わるまでずっと維持していきたい政策は何でしょうか。

    ニュータウンの出口戦略を打ち出したことと、非正規労働者の正社員化、授業料の半額化実施、歩道ブロックの革新!そして、深夜バス制度などもあります。

    しかし、これまでの日々は、この先もう少し時間がかかるかもしれませんが、全てのことを原則と常識に基づいて行おうと努力してきた時間でした。市民参加と専門家参加の機会を増やしていくソウルの行政を心から誇らしく思っております。