ソウル市は、世界保健機関(WHO)が指定した1級発がん物質の微小粒子状物質が市民の健康を深刻に脅かすレベルにまで達したと判断し、市民の健康を守るため取り得る全ての政策手段を動員する方針だ。
近年、ソウルのPM2.5濃度は、2012年まで減少傾向を見せていたものの、2016年に前年比3㎍/㎥増加し、2017年にはPM2.5注意報が3回も発令されるなど、大気汚染が深刻になっている。
これにソウル市は、大気質改善効果が実証されている既存のディーゼル車低公害化事業を引き続き実行していく。その一方、今まで政策の死角地帯にあったソウル市発注工事現場について、環境にやさしい建設機械を使用することを新しく義務化する計画である。また、首都圏以外の地域からソウル市に入ってくる全国の農水産物流通トラックの公共物流センター進入制限など、運行制限措置を拡大していくことに決めた。
ソウル市は、これまで行ってきた老朽ディーゼル車の早期廃車、ばい煙低減装置の取付けなどの低公害事業を通じて、自動車によるPM2.5の排出量を大幅に削減するという成果を挙げた。
これに加え、2012年からソウルの車両に限り実施していた老朽ディーゼル車の運行制限を、2017年から徐々に首都圏の他地域にも拡大する方針だ。取り締まり装置も、現在の13ヶ所から2017年10月までに22ヶ所を追加で設置し、2019年には61ヶ所まで拡大して、取り締まりの実効性をより一層高める計画だ。
ただし、全国の物流量を考慮すると、首都圏のみの規制では限界があるため、全国の老朽トラック車両を対象に、ソウル市の施設使用制限を実施することに決めた。
また、2017年5月からソウル市が発注した建設工事現場には、環境にやさしい建設機械の使用を義務付けることで、大気環境の悪化を改善していく方針だ。ソウル市に登録されたダンプトラックなど5種の建設機械は、車両全体からみると1.4%に過ぎないが、窒素酸化物の排出量が高いため最優先的に対策が急がれるという判断からである。
このため、老朽化した建設機械の低公害化事業に参加する事業者には、ばい煙低減装置の取り付けや新型建設機械のエンジン交換にかかる費用を支援し、環境にやさしい建設機械を使用義務化するにあたっての不利益を最小限に抑えるようにして、民間部門まで普及させていくことで飛躍的に大気質を改善させていくことを目指す。
まず、ホコリの飛散が発生する事業場として通報・申告があった工事現場の計1,805ヶ所について、4月3日から5月31日までの2ヶ月間、官民合同の特別点検を実施し、自律的にホコリの飛散を低減させるよう誘導する。
特別管理工事現場として分類された事業所は、集中的に特別捜査するほか、工事現場関係者に対する教育及びマニュアルの配布などにより自発的な低減対策管理を誘導するなど、ホコリ飛散の防止について徹底的に管理する文化を定着させるため努力していく方針だ。
また、道路にあるホコリの飛散を防止するため、粉塵吸引清掃車を2017年内に30台、早期確保する予定で、黄砂の流入などにより微小粒子状物質注意報以上の段階が発令された場合は、水洗浄車の稼働率を拡大し、道路のホコリを除去するための水洗浄を強化する計画だ。
ソウル市は、3月29日にパリ市長・ロンドン市長と共同宣言した「国際自動車環境等級制(Global Car Scoring System)」実行のため、実走行排出ガス管理制度の運営に伴う自動車等級の再算定、新規排出ガス認定制度の国際的統一基準を設けることを政府と協力することにした。
Car Scoring制度は、自動車をそれぞれ個別にどの程度環境にやさしいか評価して等級化することにより、消費者のエコカー選択権を保障するとともにエコカーの普及拡大に貢献できる制度として評価されている。
ソウル市は、まずホームページに環境部が提示する自動車排出ガス等級をわかりやすくグラフィック化して掲載し、エコステッカーを製作して公共機関の車に貼るなど、自動車環境等級制の定着のために市民団体と協力していく計画だ。