- コロナで気分の落ち込みや孤独を感じる高齢者の日常への回復に向け「ストレス解消デザイン」を開発
- 高齢者のストレスケアで重要な「人とのつながりの強化」に向けたデザイン開発
- 歓迎と尊重の「ウェルカムデスク」、思い出を呼び起こす「記憶の壁相談室」など、高齢者福祉施設2か所を対象に
- 「デジタルこころの診断サービス」では、ストレス診断とおすすめのプログラム紹介で、興味とケアの両面からサポート
ソーシャルディスタンスなどの長期に渡る制限を経て日常への回復に期待が集まる中、コロナの影響を受け続けてきた市民の情緒に目を向け「アフターコロナ」に備える必要性が高まっている。ソウル市は、とりわけ高齢者の「コロナブルー(うつ症状)」からの回復を支えるべく「ストレス解消デザイン」を開発し、高齢者福祉施設2か所を対象に適用した。
ソウル市はこのほど、高齢者のストレスに主眼を置いた「偕笑堂(ヘソダン)」デザインモデルを開発。デザイン名には「みんな一緒に(偕)」「集まり笑う(笑)」「家(堂)」という意味が込められている。
「偕笑堂」デザインの導入で、これまで狭く殺風景で有効活用されてこなかった高齢者福祉施設の空間を、利用者が互いにコミュニケーションを取り、社会とのつながりを感じられる空間へと改善。▲歓迎と尊重の「ウェルカムデスク」▲対話と交流の「コミュニティ空間」▲つなげても離しても使い勝手のいい「みんなのテーブル」▲居心地がよく落ち着いた空間「こころすこやか相談室」▲心通わす「ふれあい対話ブース」が新設された。
高齢者のストレスケアで重要なのは、社会とのつながりを強化することだ。空間の機能と動線、利用者の行動を分析し、人との交流が活発化するようコミュニティ空間をフル活用する一方、プライベート空間も設けている。
ほかにも、福祉施設を利用する高齢者のストレス診断を行う「デジタルこころの診断サービス」体験では、高齢者のストレス状態(正常・軽症・中等症・深刻)を測定し、10秒呼吸法や5分ハンドマッサージ、声を出して笑うなど、簡単かつ即効性のあるストレスケアの方法を紹介。定期的に診断を行い、ストレス状態が「中等症以上」と測定された場合は福祉施設の相談サービスにつなげる。
また、「デジタルこころの診断サービス」では、高齢者の性格タイプ(実用主義者・戦略家・世話焼き・理想主義者)に合わせたプログラムをおすすめしている。個々人に適したプログラムを受講するよう奨励し、その人に合わないプログラムを避けるよう案内することで高齢者のストレスケアに役立てる。
ソウル市は「偕笑堂」モデルを市立道(ト)峰(ボン)高齢者福祉館(2階ロビー、講師室、52㎡、約15.7坪)と、区立ウリ麻(マ)浦(ポ)福祉館(1階ロビー、77㎡、約23.3坪)に初めて適用した。単なる空間の改善に留まらず、今後も施設側と利用する高齢者の意見を汲み取りサービスを強化していく計画だ。また、人生二毛作支援課と協力し、より多くの高齢者に質の高い公共サービスを行き渡らすため、今後、福祉施設の建設やリノベーションを行う際に同モデルを積極的に取り入れていく方針だ。
ソウル市のチュ・ヨンテ文化本部長は「新設された『偕笑堂』の空間で、コロナで憂うつ感を抱えていらっしゃるお年寄りが互いに交流し、共感し、活力を取り戻していただきたい」としながら、「今後も市民の様々なストレス要因を、デザインを通じて改善する事業を積極的に展開していきたい」と語った。