ソウル市は、開通以来40年以上の間支配的だった「定時性」という地下鉄運営パラダイムに終止符を打ち、「安全」パラダイムへと転換させる。
ソウル市は、「安全」へ転換する地下鉄運営パラダイムに見合うように地下鉄施設物、人員、システムの全般にわたって安全機能を補強し、モノのインターネット(IoT)などのICTを活用したスマート安全管理システムを構築する内容の「ソウル地下鉄安全補強対策」を2017年3月8日(水)に発表した。
ソウル市は、まず8,370億ウォンを投資し、21年以上の長期間使用してきた電車のうち、2~3号線610両(2号線460両、3号線150両)を2022年までに新規車両に交換する。新規電車には、プラットホームドアが開いた状態のときには電車がプラットホームに出入りできないよう自動連動するATO(Automatic Train Operation、自動列車安全装置)システムが適用される。
開通から40年以上経過した1~4号線の電車線路や列車信号設備など、7つの分野21種の老朽施設も、2030年まで計2兆2千億ウォンを投資して改良し、120駅の駅舎リニューアルも続けて推進する。障害・故障件数が増加している昇降施設も、全数調査の結果を基に主要部品の交換周期を定立して精密安全周期を20年から15年に短縮させるなど、安全管理システムを強化する。
また、安全コントロールタワーの役割を担う「スマート統合管制システム」を2023年までに構築し、有事の際はより迅速かつ効率的な対応ができるようにする。運営機関や各号線ごとに各自で運営されている現行の管制システムを空間的・機能的に統合することにより、有事の際に迅速かつ統一性ある管理が容易になると期待されている。
安全管理者も大々的に拡充して、車両が故障の際は管制報告よりも乗客案内放送を先に行い、停電時も乗客案内ができる無停電放送装置を2020年まで2,942両に拡大導入する一方で、非常時の避難手順・要領が記された「市民安全行動マニュアル」を制定する。「市民安全行動マニュアル」は、市民参加を基にしたオープンマニュアル形式に制定し、ピクトグラムや動画などを用いて分かりやすく制作してから、ホームページやSNSなどを通じて拡散させる予定である。
地下鉄工事現場の安全管理を強化するため、現場の安全管理実態をリアルタイムで確認できるシステムも導入する。各号線に安全管理責任官などの安全管理専門担当者の配置も増やし、安全管理規定を遵守しない業者は原則的に工事入札参加対象から除外させる方針だ。
また、2015年から提供中のサービス、「地下鉄安全チキミ」アプリをアップグレードして、管制・駅務室へとつながる非常ボタンを追加する。非常時には自動でポップアップウィンドウが表示され、状況情報と行動要領を案内する。昇降施設のリアルタイム作動現況情報とこれを反映させた最短ルートまで、一目で確認できるようにする。
一方、電車の整備とメンテナンス時間を確保するため、地下鉄の深夜延長運行時間の調整も検討する予定である。2002年12月から深夜時間帯の交通便宜の提供、公共交通の利用活性化を図り、平日の終電を1時間延長運行しているが、24時以降の利用率は低調で、年間約61億ウォン規模の損失が発生しているのが現況である。施設メンテナンス時間の確保のためにも、地下鉄の深夜運行時間を合理的に調整する必要性があると判断した。
また、ソウル市はモノのインターネット(IoT)などのICTを活用して、安全強化をはじめサービス品質や運営効率を増大させるための「スマート安全地下鉄」マスタープランを2017年3月から構築する。ソウル地下鉄は、2015年から既にモノのインターネット(IoT)技術を昇降・排水設備の自動制御、施設の温度・騒音感知、電車などの施設物の整備履歴管理など、施設物のメンテナンス段階で活用しているが、今後は施設物の情報を感知・制御する域を超え、感知された情報をすでに蓄積されているビッグデータと照らし合わせて状況に合ったソリューションを提供できるようにアップグレードする計画である。特に、安全を強化するため、▲知能型監視カメラ、▲乗客混雑度の案内、▲不正乗車自動取締りシステムなどを導入して、「スマート安全管理システム」を構築していく計画である。