ソウル市が主催し、ソウル・デザイン財団の主管により毎年春と秋の2回ソウルで開かれる韓国最大のファッション・イベント「ソウル・ファッション・ウィーク」は、韓国トップレベルのデザイナーのビジネスイベント、ファッションショーとして定着しつつある。特に、独立から5年未満のデザイナーを対象に行われるコレクションで、ユニークな視点と斬新な発想を提案するプログラム「ジェネレーション・ネクスト」は、次世代の若手デザイナーの登竜門でもある。
ソウル・ファッション・ウィークでは、デザイナーはシーズンを先取りした新しい衣装を披露し、バイヤーはファッションショーを見てそのデザイナーの来シーズンの服を購入するかどうかを決める。メディアは、ファッションショーを見て、そのデザイナーの可能性について論評する。こうして、ファッション・ウィークは、デザイナー自らが制作した服をマーケティングするビジネス・イベントである。また、ファッションショーを見に訪れる有名人と、その有名人を一目見ようと多くの人が詰めかけるイベントでもある。
ニューヨーク、パリ、ロンドン、ミラノに続き、世界の5大ファッション・ウィークへの飛躍を目指すソウル・ファッション・ウィークが注目するのは、新人デザイナーの育成とグローバル・デザイナーへの支援だ。
2008年のソウル・ファッション・ウィークは、独立から5年未満の若手デザイナーによるファッションショー「ジェネレーション・ネクスト」を新設し、この参加費やモデル費、演出費などを全額支援した。2010年には国際競争力を備えたデザイナー10人を選抜し海外マーケティングを支援する「10ソウル(Seoul’s 10 Soul)」プログラムが加わった。
実力のある多くのデザイナーが紹介されるソウル・ファッション・ウィークは、海外のバイヤーやプレスから注目されるようになり、2010年から会場を訪れる海外のバイヤーやプレスの数が増え続けている。特に、トンデムン(東大門)デザイン・プラザ(DDP)がオープンした2014年から同会場で開かれるようになり、ソウル・ファッション・ウィークの注目度はさらに高まった。東京ファッション・ウィークの影が薄くなり、ソウル・ファッション・ウィークの存在感が高まっている。「世界5大ファッション・ウィーク」の一つになることも、もはや夢ではない。
ソウル・ファッション・ウィークのために韓国を訪れる海外のバイヤーとプレスの数は、年間約1千人に上る。彼らはソウルに滞在しながら地域経済を活性化させている。しかも、彼らはSNSを使いこなしている上にトレンドに敏感だ。彼らが自国に戻って伝える口コミは、お金には換算できないPR効果を生んでいる。
韓国国内のファッション産業は、景気後退とグローバルSPA企業の進出が相まってやや厳しい状況にある。しかし、韓国のデザイナーらは、飽和状態にある国内市場を抜け出し、海外に突破口を見出そうとしている。その中心にあるのがソウル・ファッション・ウィークだ。
KポップやKドラマとともに、今やKファッションはアジアにおける一つのトレンドとなっており、Kファッションを代表するデザイナーとブランドを韓流スターとして育成すべき段階を迎えている。
ソウル・ファッション・ウィークは、ソウル・ファッションを世界に発信し、それを通じて実力のあるデザイナーを育成することに留まらず、デザイナーを目指す若者に夢を与えている。特に、先を行くソウルのデザイナーだけでなく、精巧な縫製技術とトンデムンを中心としたファッション・エコシステムが世界に紹介されている。ソウル・ファッション・ウィークが単なるファッション・イベントでなく、未来のソウルの経済を支えるビジネス・イベントとして発展させるべき最大の理由である。