朝鮮時代から数百年間にわたり都の人々の暮らしを支えてきたチョンゲチョン。やがて数回にわたる覆蓋工事によって道路の下へと姿を消してしまったが、ソウルの歴史と文化環境を蘇らせようとソウル市が2003~05年に推進した復元事業によってソウルを代表する名所に生まれ変わった。
チョンゲチョンは誰からも親しまれるスポット。昼休みになると、近隣のオフィス街に勤めるサラリーマンたちは、散策しながらしばし憩いの時間を過ごす。また、夏は川に足を浸し、暑さをしのぐことができる。さらに、長い旅で疲れた旅行者は、排気ガスでいっぱいの都心の道路を逃れ、しばし憩いのひと時を過ごすことができる。
都心の憩いのスポットとして定着したチョンゲチョン。春、夏、秋は爽やかな緑陰と涼しげな音で市民を呼び込ぶことができても、寒い冬は閑散とするだろうと思ったら大間違い。色とりどりのランタンが燦爛たる明かりを灯し、街を歩く人々の足を止める「ソウル・ランタン・フェスティバル」が開かれる日のチョンゲチョンの夜は、日中のミョンドン(明洞)よりも華やかだ。
毎年11月第一金曜日~第三日曜日に開かれる「ソウル・ランタン・フェスティバル」は、ソウルを代表する冬の祭典。17日間にわたる連日連夜、美しい伝統的な灯籠とモダンなランタンが夜のチョンゲチョンを鮮やかに灯す。閑散としているだろうという予想に反し、チョンゲチョンは人の波でごった返しの状態。
毎年ソウルならではのユニークなテーマが設定される「ソウル・ランタン・フェスティバル」。2015年のテーマは「光で見るソウル観光」。チョンゲ広場のタイトルの作品を先頭に、「ソウルで感じる古風」「ソウルで出会うかつての暮らし」「今日、ソウルの姿」「トゥギャザー・ソウル」の4つのテーマで、約600作品がチョンゲ広場からスピョギョ(水標橋)までの区間1.2キロを彩った。
以前は「ソウル灯祭り」という名称で伝統的なランタン中心の展示だったが、作品構成の垣根をなくそうと現代的なデジタルLED、ライトアート、子どもに人気の漫画キャラクターを取り入れた2014年から「ソウル・ランタン・フェスティバル」に改称された。伝統と現代の調和を図るという強い意志の表れだ。ランタンの古風さとLEDの現代美を強調した最初のテーマ「ソウルで感じる古風」は、調和のとれた美しさを見せてくれた。
一生懸命子どもの写真を撮る親や、しきりにフラッシュをたく若いカップルの姿を見ていると、このイベントの人気の高さがわかる。
最初のテーマ「ソウルで感じる古風」のテーマ作品「日月図」から見てみよう。「日月図」とは、朝鮮時代すべての宮廷の御座や王の肖像である御真の後に掲げられていた絵。その絵が伝えるいかにも韓国らしい古風な美と、日が月に、月が日に変わるのを表現したデジタルLEDが目を引く。
伝統的な文化遺跡をモチーフにした作品の次は、ソウル観光の必須コースとして定着した「ナムサン(南山)韓屋村」と「プクチョン(北村)韓屋村」を再現した作品。さらに、素朴で人情味あふれるソウルの商人と店舗の姿をランタンで表現した作品は、別の場所にはない新鮮さを感じさせる。 もう一つの人気の区間は、自治体と海外から招待された作品の展示区間。2015年は、ピョンチャン(平昌)郡、ヤンピョン(楊平)郡、ヘナム(海南)郡、キョンサン(慶尚)南道コソン(固城)郡が地域の特色を表したランタン作品を紹介したほか、中国の成都市と常熱市、日本の青森県、台湾の台北市、米国大使館、フィリピン観光庁がそれぞれ個性的で華やかなランタンを紹介した。
ソウル市の観光名所を精巧に再現した伝統的なランタンや華やかな光を放つ現代的なランタン、専門家が心血を注いで制作したライトアート作品、自治体や海外から招待されたランタンなど、初冬のソウルの夜を鮮やかに灯す「ソウル・ランタン・フェスティバル」。‐ソウルに行ったら見逃せないイベントだ。
「ソウル・ランタン・フェスティバル」に関する詳細は、ホームページ(http://seoullantern.visitseoul.net/)をご覧ください。