ソウル市は「宗廟(チョンミョ)広場聖域化事業」のための基礎資料を確保するため、2008年11月から行ってきた学術発掘調査の調査範囲を今年はさらに広げて実施すると明らかにした。宗廟は、5百年余りにわたって続いた朝鮮時代の歴代の王と王妃の位牌が祭られた神聖な祭礼空間(史跡第125号指定)で、また世界文化遺産(1995年ユネスコ登載)であるにもかかわらず、これまで、宗廟広場における秩序を乱す様々な行為や施設などによって史跡の景観が著しく損なわれてきた。
今回の事業はソウル歴史博物館の調査として行われ、ソウル市は、計500万ウォンの発掘調査費を投入し、今年3月から10月まで宗廟広場の西側区域一帯を発掘調査する計画だ。これまで宗廟広場では各種集会やデモ、違法な露天商行為、無料給食場の運営などが行われ、世界文化遺産である宗廟を訪れた外国の観光客に悪い印象を与えていた。このため、ソウル市と鍾路区(チョンログ)は、2007年から宗廟広場聖域化事業を実施する方針を決め、まず無秩序の主な原因となっているものから整備を進めてきた。そして2008年11月からは、宗廟周辺環境の整備を行う一方で、文化財の原形を復元するための学術発掘調査を行ってきた。
聖域化事業は、御道(オド:王が通っていた道)、ホンサル門(宮殿や役所、または陵墓などの入り口に建てた屋根のない朱塗りの門)、下馬碑(ハマビ:宮廷や文廟などの門前に、そこでは誰もが下馬するよう記した石碑)、御井(オジョン:王が水を飲んでいた井戸)、ピマッギル(一般民が鐘路を通る高官の馬を避けて通ったという道)など、文化財の原形の復元に重点を置いて進める計画で、宗廟広場も宗廟の内部と同じく神聖林として造成される。
今後、宗廟広場は、世界文化遺産である宗廟の歴史文化的価値を共有するだけでなく、「昌慶宮(チャンギョングン)~宗廟~世運(セウン)商店街~南山(ナムサン)」へと続く、緑地文化軸を形成することになり、これによって子どもや青少年など、多様な年齢層の市民が訪れる、歴史と自然が共存するソウルの代表的な歴史文化空間に位置づけられるものと期待される。