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[2012] 市長挨拶

  • 「健康体温36.5度」を目指して市民の役に立つ医療政策を展開します。

  • [2012] 市長挨拶 SMG 1,270

    公共医療マスタープランに関する記者説明会

    日付:2012年7月23日 場所:ソウル医療院

    今皆様の体温は何度でしょうか。健康な方なら大体36.5度前後でしょうね。ところが、ソウルの現実はこの体温を維持することすら難しい方が増えているのです。全ての市民には病気になる権利があると同時に、健康である権利もあります。しかし、これまで保健医療の分野でこの2つの「権利」は十分に満たされていないのが事実です。

    市民の多くは、病気になると公共医療機関よりは民間の医療機関で治療を受けているため負担が大きく、公共医療は低所得者層などの社会的弱者に必要最低限の医療支援だけを行ってきました。しかし、本日発表させていただく「ソウル市の公共医療マスタープラン」は公共医療の対象者を「すべての市民」に拡大します。

    このプランでは、全ての市民が健康を享受する権利を守れるよう予防政策を強化しました。それに加え、全ての市民の病気になる権利を保障するためにきちんとした医療サービスを提供します。それでは、ただ今よりその詳しい内容について説明いたします。

    お医者さんも病気の原因が分からなければ、治療に当たることができません。ソウル市もきちんとした公共医療政策を実現するため、まずソウル市の現状を点検することから始めます。医学技術が発達して医療保険制度が定着した今日、ソウル市の死亡率は減り、平均寿命は延びました。しかし、詳しく見ますと、自治区別の死亡率にはそれぞれ顕著な差があることが分かります。お手元の資料では赤の部分が死亡率の高いところです。中浪(チュンナン)区の死亡率は人口10万人当たり469人と、最も高いです。それに対し、最も死亡率の低いところは、グレーで表示された瑞草(ソチョ)区で、335人となっております。貧富の格差が健康の格差につながっているのではないかという指摘が出ています。

    病気はかかってから治療するより、日ごろから予防することがもっと大事です。韓国人に最も身近な病気の一つである高血圧。ここ10年で、食生活の欧米化が進むにつれ、高血圧患者はほぼ倍増していますが、実は高血圧は日常生活の中で予防さえすれば十分防げる生活習慣病です。こうした予防サービスは営利を目的とする民間医療機関ではほとんど不可能なので、主に公共保健機関が提供しなければなりません。ところが、1千万の人口を抱えるソウル市の公共保健インフラはあまりにも脆弱なのが現状です。2010年の医院数に対する公共保健機関の割合は0.66%と、全国平均の12.6%とも著しい差がみられます。このようにあまりにも不足している公共保健機関の施設では、市民たちに予防医療サービスを提供することはなかなか難しいです。

    では、ソウル市を元気にするためにはどうすればよいのでしょうか。市民はもちろん、保健医療の専門家や保健医療関連の市民団体など約1,000人が118回にわたって討論を行い、意見をまとめました。中央政府の協力を引き出すため、各省庁や市の内外の職員たちとも幾度となく意見調整を繰り返してきました。その結果「健康ソウル36.5」を目指してソウル市が進むべき基本方向を定めました。

    ソウル市は「健康ソウル36.5」の実現に向けて、次のように実行いたします。

    第一に、ソウル市は市民の健康寿命をさらに延ばすよう努力します。子供からお年寄りまで自ら健康づくりに取り組めるよう精一杯支援します。

    第二に、階層や地域による健康格差を是正します。自治区ごとの死亡率格差を10%以下に抑えます。そのために、365日市民の健康を守るためのきめ細かな支援策を進めるよう努力します。

    まず、市民向けの健康管理サービスを行い、病気の予防と健康管理を強化します。市民に親しまれるソウル型医療サービスを提供し、市立病院の改善を行い、質の高い公共保健医療システムを整備します。市民が健康を享受する権利を、市民とともに守っていきます。市民がただ政策の恩恵を受けるだけではなく、市民自らが提案者や実行者、決定者になる仕組みづくりに努めます。

    そのためには具体的にどうすべきか、より詳しい内容についてご説明いたします。

    まず、市民の健康を守り、健康格差を是正するために、次の6つの政策を実行します。

    病院まで行くのが困難な乳幼児や産婦などは、医療施設まで足を運ばなくても済むようにします。ソウル市が在宅医療サービスを行います。健康を損ねる最大の原因とされる喫煙を減らすため、屋内禁煙政策の実施や禁煙環境づくりを後押しします。

    健康づくりのためには運動が最も効果があるというのは、誰もがご存知だと思います。しかし、それを分かっていながらも実行に移すのはなかなか難しいですね。そこで、ご近所にある体育施設を利用して身体活動の機会を増やせるよう、生活体育と保健を結び付けます。OECD加盟国中自殺率1位、高齢者や青少年の自殺率1位、そして、ニューヨークに比べ5倍も高いソウル市の自殺率は、我々が抱える実に痛ましい現実です。韓国語で「自殺(ジャサル)」という言葉をひっくり返すと「サルジャ」、つまり「生きよう」という意味の言葉になります。共に力を合わせれば乗り越えられます。すでに蘆原(ノウォン)区が良いモデルとなっております。ソウル市もこれを良い事例として参考にし、自殺率低下に向け努力いたします。地域密着型の自殺予防事業を推進し、共に生きていける心温まる都市づくりに努めます。

    医療サービスの行き届かない地域に健康管理システムを構築いたします。さらに、ガンの発生原因と有害物質管理に関するソウル市の保健環境政策を策定し、脆弱な階層や地域への予防的管理措置を行います。

    特に乳幼児や産婦への訪問健康ケアサービスはソウル市が市民の生涯の健康を支援するサービスです。「揺りかごから墓場まで」という言葉がありますが、生まれてからではなく生まれる前の胎児の時から健康を守ります。乳幼児、特に生涯の健康を左右する5歳未満の健康状態をしっかり管理し、生涯にかけての健康維持ができるようにします。子どもが健康であるためには、まず母親が健康でなければなりません。妊娠20週間未満、そして出産後、公共医療機関の看護師が出向いて、出産前、出産後の母親、乳幼児に専門の訪問健康ケアサービスを提供いたします。そのモデル事業を来年から始めます。

    韓国人男性における死亡率のトップは肺がんです。喫煙がどれだけ体に悪いのかはご承知の上だと存じますが、受動喫煙の弊害も深刻です。我々ソウル市が受動喫煙から市民を守ります。来年から受動喫煙による被害を最小限に抑えるため、屋内喫煙の規制措置を全面的に行います。喫煙者にはそれぞれの事情に合わせた訪問禁煙クリニックを運営します。また、メディアを通じ、啓発やタバコ広告の規制など、禁煙環境づくりに尽力いたします。

    「健康ソウル36.5」の実現に向けた具体的な主要課題の二つ目は、ソウルで行われる医療サービスの質を向上させることです。

    普段の生活において病気になった時に、自分だけの主治医がいればどんなに助かるだろうと思ったことはありませんか。そこで、保健所の健康管理主治医が市民向けの健康管理サービスを提供いたします。保健所が遠い方のために「ソウル型保健支所」を拡充します。保健所にまで足を運ぶのがなかなか難しい方のためには、いつでもどこでも、専門家による電話健康相談を受けられる「ソウル健康コールサービス」を提供いたします。代表的な生活習慣病である高血圧や糖尿病を早期発見、早期治療ができるようにします。高血圧と糖尿病の治療や教育を受けるたびにポイントが貯まる「市民健康ポイント」制を実施し、貯まったポイントで検査や予防接種が受けられるようにします。

    家族の誰かが病気になると、何より看病が大変です。そこで、これからソウル市は、付き添いサービスの提供を行い、保護者が付き添わなくて済む病院を運営します。同時に救急診療を特化し、高齢者や子ども、女性、精神疾患者向けの専門救急サービスを提供いたします。

    市民の皆様にとって最も実感できる政策が、この保健所健康主治医サービスではないかと思います。健診の結果を見て、どうすれば良いか悩まれた方も少なくないと思います。その際に、保健所に足を運べば、健康主治医から健康管理の指導を受けることができ、健康クリニックでは禁煙、節酒、運動、栄養などの関連サービスを受けることができます。ソウル市民なら誰でも保健所を利用することができます。

    病気の治療に重点を置く民間病院はたくさんありますが、健康増進や疾病予防に重点を置く保健機関はかなり不足しているのが現状です。地元住民の健康をケアするソウル型保健支所を2014年までに75カ所増やします。病気の予防や管理サービス、リハビリサービスを行うスタンダード型保健支所と、住民自らが生涯健康管理に取り組めるよう後押しする参加型保健支所に分けて、それぞれのサービスを提供いたします。

    家族の誰かが病気になると、家族全員の生活はめちゃくちゃになってしまいます。家族の苦しみや治療費の負担も大きいですが、介護もなかなか大変です。しかし、核家族化や女性の社会進出拡大で家庭内で患者を介護することは、そう簡単なことではありません。また、付き添いは医療保険の適用が認められておらず、経済的な負担は並大抵のものではありません。そこで、看護師の数を増やし、良質の医療サービスを提供する「保護者が付き添わなくても済む病院」を運営する考えです。2012年ソウル医療院を皮切りに、全市立病院へ拡大します。

    これらの政策をソウル市が一方的に作るのではなく、市民が参加し、共に健康的な環境を築き上げていくこともソウル市の重要な課題です。

    そのためにはまず、医療関係者の参加や協力が欠かせません。休職や退職をした、ソウル市在住の医療関係者がソウル市の進める公共医療に参加できるよう、再就職やボランティア活動の機会を増やすようにします。

    庶民の健康を守るため公共の役割を果たしている、地域の健康関連団体を活性化し、サポートします。ソウル市で活動している150余りの民間医療ボランティア団体の自発的なボランテジア活動を支援し、その内容を市民の皆様に報告いたします。また、患者の権利を守るための「患者権利オンブズマン」を実行します。市民の参加による保健政策の策定のため、市民健康会議を開催いたします。トラウマを抱えている人権侵害の被害者などには、統合的なケアサービスを受けられるようにいたします。

    具体的な政策として「患者権利オンブズマン」について、詳しくご紹介いたします。医療という専門的な特性により相対的に弱い立場にある患者の権利を保護し救済するために、オンブズマン制度を立ち上げます。苦情相談や権利侵害など、医療サービスに対する不満や不便を解消するため、弁護士や医師、消費者団体などでつくる「医療に関する苦情処理諮問団」を運営します。患者や家族としては、何の病気なのか、どんな治療を受ければいいのか、別の治療法はないかなど、知りたいことがたくさんあると思いますが、医師にはなかなか聞きづらいものです。患者の知る権利を尊重し、守るよう努力します。

    保健医療は個人の日常生活と密接な関係があります。日々の悪い生活習慣が病気につながります。つまり、生活環境が病気を引き起こします。

    地域住民自らが健康な町づくりに参加できるよう、地域の健康関連団体を支援し活性化します。保健所(保健支所)とのネットワークを構築し、公共の役割を共同で遂行していくために協力いたします。地域の健康福祉コミュニティとしての役割を果たす医療生活協同組合、地域健康団体などに人的、物的支援を行います。

    現代人は体の病気だけでなく心の病気も深刻です。特に重大な事件や事故を経験した後に、体の病気は治っても、心の傷は深く残ります。龍山(ヨンサン)火災事件や、牛眠山(ウミョンサン)の土砂崩れ、双龍(サンヨン)自動車の不当解雇、そして韓国の現代史に深い傷として刻まれている拷問被害者など、社会的なトラウマに苦しむ人たちのために、体や心のケアだけでなく社会福祉的な問題を含めた包括的なケアを行います。

    このようなソウル市の公共医療政策「健康ソウル36.5」。市民の暮らしをどのように変えていくのでしょうか。

    ソウルで生まれた赤ちゃんは、母親のおなかの中にいるときからすでにソウル市の公共医療サービスを受けることになります。生まれてからは母親と赤ちゃんの健康のために看護師が自宅に出向いてケアを行います。予防接種も保健所が行います。やんちゃ盛りの小学生になると、親は大変です。子どもが一生健康な生活を送るためには、食生活から歯磨きの習慣まで親がいちいち教えなければなりません。それもソウル市の公共医療サービスが行います。特に、韓国では健康な歯は人生の「5つの福」の1つといわれますが、その管理も公共医療機関の主治医が担います。働き盛りの中年層も健康管理に気をつけなければなりません。市民自らが健康管理能力を身につけられるよう、町の保健所で健診から管理まで全て可能になるシステムを整えます。病気になる前から健康管理できるよう、栄養や運動に関する相談にも応じます。お年寄りになると健康の重要性をより切実に感じるようになりますが、従来の認知症支援センターを高齢者健康増進センターに名を変え、全てのお年寄りに健康サービスを提供します。訪問看護師の数を増やし、寝たきりや体の不自由なお年寄りに医療サービスを提供します。

    このように「ソウル市公共医療政策-健康ソウル36.5」は「揺りかごから墓場まで」ではなく「おなかの中から墓場まで」のライフサイクル全体にわたって、市民の健康状態を把握し、ケアします。

    「健康ソウル36.5」が順調に進むよう、市政全般について、健康影響評価(ヘルス・インパクト・アセスメント)を行い、事業評価システムも構築します。また、持続可能な政策の実現に向け、優秀な人材を確保するための方策を講じ、ソウル市健康委員会を設置、運営します。

    政策実行のカギとなるのは予算です。ソウル市の保健分野予算は、世界の同規模の都市に比べると、はるかに少ないのが現状です。2011年現在、世界大都市の保健予算の割合は、東京7.5%、シンガポール4.7%、ニューヨーク2.3%に対し、ソウル市は1.3%でした。これを受けて、ソウル市の保健予算を2012年1.3%、2013年1.8%、2014年には2.3%と、徐々に増やしていきます。

    私は本日この場で、ソウル市の公共医療マスタープラン「健康ソウル36.5」を発表しました。生老病死は人間なら誰でも避けては通れない人生の過程です。ところが、世の中には貧富の格差や暮らしの格差だけでなく、生老病死にも深刻な格差が存在するようになりました。これからソウル市は全ての市民に対し、健康に暮らせる権利を保障します。

    それに加え、病気になる権利も保障します。事前に病気を予防し、病気になった時には最大限の保健医療サービスを提供することで、患者として享受すべき権利と治療を保障します。

    本日、この場がソウル市民の生老病死を変える第一歩になると思います。ご清聴、ありがとうございました。

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