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[2012] 市長挨拶

  • 何によって都市を革新するのか

  • [2012] 市長挨拶 SMG 1,055

    アジア未来フォーラムでの講演

    月日:2012年10月16日 会場:ミレニアム・ソウル・ヒルトン

    皆様、こんにちは。ようこそいらっしゃいました。ソウル市長のパク・ウォンスン(朴元淳)です。第3回アジア未来フォーラムにご出席の皆様に心より感謝申し上げます。そして、この意義深いフォーラムを準備してくださった方々にも感謝申し上げます。私は本日の出会いと連帯、友情が私たちの街と暮らしをより一層幸せにしてくれると信じています。皆さんもそうでしょう。また、この場にご出席の皆様に、ソウル市民を代表してご挨拶いたします。

    本日、私たちはより良い未来を築くために集まりました。

    本日のテーマは「2013年リーダーシップの変革」です。時代を導くリーダーシップというのは、集団知性の選択にかかっています。私は本日、皆様にソウルという名の大きく美しい船とその船を導く新しいリーダーシップ、ソウル市民のリーダーシップを紹介しようと思います。ソウルという街がどこへ向かっているのか、どこへ向かうべきか、どう革新すべきかについて話そうと思います。

    これまで政府と市長に集中していた権力は市民に委譲されつつあります。そして21世紀には、人類の半数以上が自分のアイデンティティと人生の根拠地として都市を選択しています。

    私たちの暮らしの根幹が国から都市へと移り変わろうとしています。都市のほうがより具体的な生活の背景であり、個人の「アイデンティティの根源」となっているからです。「どの国の出身か」というより「どの都市の出身か」のほうが個人のアイデンティティをもっとよく説明してくれる時代になったのです。

    20世紀、国が統治する世界秩序は対立と紛争だけを繰り返してきました。これに失望した人々は都市に視線を転じました。国は力を得ようと同盟国を集め、イデオロギーを強化し、国防と愛国心を強調することに力量の一部を集中してきたとすれば、都市は直接的に市民の住宅問題を解決するからです。都市はバスと地下鉄を運行し、教育と文化を増進させることに力量を集中します。上水道の確保に努め、ゴミの分別収集の質を高め、環境と市民一人ひとりの暮らしを管理しています。人々は、国よりも都市のほうが自分たちの暮らしに実質的な影響力を及ぼしていることを直観的に知っています。

    21世紀に入り、都市の価値は世界の有識者らによってより一層注目されています。最近、米国の政治理論家であるベンジャミン・バーバー氏からインタビューを受けました。バーバー氏は、私を含め世界30以上の主要都市の市長にインタビューした内容を編集した『なぜ市長が世界を治めるべきか』という本を出版する予定です。都市経済学分野の世界的な権威であるハーバード大学経済学科のエドワード・グレイザー教授は、著書『都市の勝利:豊かに、賢く、エコに、ヘルシーに、そして幸福にする、われわれの最大の発明』の中で、「都市は人類最高の発明品」と述べています。実際に、北京ビエンナーレでは「国家館」でなく「都市館」が新設されました。

    本日この場には、都市革新において独自の成果をあげている美しい都市の市民の皆様と市長が参加されていることが、今日の都市の価値をよく表しています。私は、都市間の実質的な交流と連帯が国家間の交流に比べて実質的に市民の人生を変化させ、幸福や満足度を高めるのに寄与すると信じています。

    共に模索しなければなりません。世界金融危機以降、ますます複雑化する社会問題や格差と若年失業、コミュニティの解体、自殺率の上昇と出生率の低下といった諸問題の解決に向け、手遅れになる前に知恵と経験を結集して新しい対策を講じなければなりません。

    構成員の暮らしの質に目を向ける「都市革新」が必要なのです。では、都市はどのように革新を追求するのでしょうか。

    まず、何よりも一人ではいけません。誰か一人の独創的なな発想や才能よりも、大多数の一般市民の考えと実践のほうがはるかに重要です。

    ブリタニカに勝ったウィキペディアがなぜ「革新的」なのか考えてみてください。インターネットという「オープンプラットホーム」を通じて立証された「参加の力」がその原動力となったのです。都市革新も同様です。市民が参加して多様な社会構成員の協力を引き出さなければなりません。

    真の意味での社会革新は、開放と共有、参加と協力というオープンな革新によってこそ実現可能なのです。

    「所有の時代は幕を閉じ、アクセスの時代が始まった」。『エイジ・オブ・アクセス』でジェレミー・リフキンはこう述べています。

    「どれだけ持っているか」でなく、「どれだけ多くアクセスできるか」が重要な時代になったということでしょう。こうしたアクセスの時代には、積極的な情報公開が重要です。それが良質の「連結」を可能にするからです。

    これまで公共機関は情報公開に消極的でした。行政は公務員に限定された領域だと見なされてきました。しかし、これからは開放・共有しなければなりません。そのような観点から、ソウル市は「情報コミュニケーション広場」を開設しました。市政に関する公共情報をオープンにしたのです。

    これは、ソウル市政の透明性を高める効果もありますが、相当な付加価値の創出も期待できます。ソウル市が公開した公共データをIT専門家が活用して市民に便宜を提供する公共アプリケーションを開発した事例は、その第一歩と言えるでしょう。

    このようなアクセスの時代は、共有都市を可能にしました。先日、ソウル市は「共有都市、ソウル」を宣言しました。そしてそこには、市民の参加と協力が活発な社会革新の首都を目指すというソウルの意志が込められています。

    これまで市民は政策や都市インフラを消費する立場でした。しかし、これからは集団知性の力で自ら必要なサービスをつくり、積極的に参加・協力することで自らの人生を変える、変化の主体となっていくのです。今後ソウル市はそうした市民の目線に立ち、市民が主導する革新都市・共有都市を目指してまいります。

    ソウル市は小さなことから革新し、共有の未来に向かって進むでしょう。ソウル市で居住者優先駐車場の10%が駐車場の共有に参加すれば、駐車スペース3,725面の建設効果があり、1,862億ウォンの予算削減効果があります。都市民宿に1千世帯が参加すれば、50の客室がある宿泊施設を20カ所建設するのと同じ効果を生むことができます。公共機関の講堂や会議室など遊休スペースを500個共有すれば、10個の講義室を備えたコミュニティセンターを新設するのと同じ効果を得ることができます。2013年のソウルの共有都市事業への投資額は約16億ですが、期待効果は1675億にも上ります。

    また、ソウル市民は時間を共有するでしょう。ソウルは、500年間続いた朝鮮王朝の首都ハニャン(漢陽)であり、2000年前には500年間百済の都だったという歴史を持っています。ハンソン(漢城)百済の保存・復元や漢陽都城の復元、さらに近現代の文化遺産の保存などを通じてソウル市は歴史の生命力を維持するでしょう。

    こうした革新による共有の価値は、本格的な「生活の共有」を通じて私たちの暮らしを輝かせるでしょう。町のコミュニティ事業が代表的な例です。子どもたちをみんなで教育すること、文化や食べ物、住宅や健康など共有の概念と共存の価値の中に個人の幸福と関係回復の価値を見い出すでしょう。そうして市民の暮らしに寄与するでしょう。福祉の死角にあって疎外されている人々に市民が関心を持つようになるでしょう。犯罪が減り、様々な社会費用が削減されるでしょう。

    本来、都市は共有のプラットホームです。ただし、これまでは都市やソウル市が道路や公園、広場といったハードウェア面で1次的な共有システムを構築したとすれば、これからは物的・人的ネットワークはもとより、知識や情報を共有することで2次・3次の共有システムを構築し、資源を効率的に活用することができるでしょう。

    今、都市を再構成しようと考えています。自然と人間、技術と歴史、市民の幸福と持続可能な成長が共存する未来に向け、共有の力で都市を革新していくのです。

    ソウル市は共有に有利な都市です。私たちには古くから共有する文化があり、私たちは共有の遺伝子を持っています。それだけでなく、いろいろなものが集中しているソウルでは、共有に必要な時間と費用を削減することができます。ITの発達やSNSの活用が盛んになることで、情報と知識、精神と共感の流通と再生産が絶えず行われています。こうした環境はすべて、私たちの中で関係回復と信頼形成を促進しています。

    それでは、このすべての共有と共存はどうすれば可能になるでしょうか。それは「参加」です。真の都市革新の原動力は人、構成員です。情報、知識、思考、経験の共有がそうした参加の土台となるでしょう。

    私は、このような共有と革新、市民参加において、何より過程を共有することが重要だと考えます。過程が共有されなければ、生命力を保証することができません。あらゆる行政は結果ではなく過程です。また、そうした過程の共有を通じてこそ、多様な主体と長期的かつ真の協力的ガバナンスを構築することができます。

    ソウル市は今後、市民に参加を呼びかけ、政策と予算のすべての過程と結果を共有していきます。来年度予算の500億ウォンは、住民参加予算制となりました。長期的なソウル市の未来像「ソウル2030」を描く活動には、ソウルプラン市民参加団が参加します。市民の暮らしの質を測る「市民福祉基準線」にも「1千人の円卓会議」が参加しました。

    これがソウル市の計画です。こうした革新と共有は官の主導ではなされません。ソウル市は中間支援機関の役割のみ担当します。世界の流れがそうであるように、すでに多くのソウル市民の皆様が参加しておられます。自分たちの人生の方向を転換し、共有の未来に向かってともに進んでおられます。

    本日この場には、革新と共有、転換都市と都市再生において豊富な経験をお持ちの方々がいらっしゃっています。この場にいらっしゃるすべての方は、既に立派なソウル市民であり、ソウル市民の良き仲間であり、先輩でいらっしゃいます。そんな方々と共にソウルが進むべき方向性を共有できることを嬉しく思います。良い友情を分かち合う場になるよう願っております。

    そうしてソウル市が市民を幸せにすることを願っています。最後に、ソウル市と皆様による都市革新の成功を祈ります。ありがとうございました。

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