ソウル市は2012年9月20日、「共有都市・ソウル」を宣言し、市民の生活に密接な関係のある共有事業と共有都市の基盤を造成・拡大するという内容の「共有都市・ソウル推進計画」を発表しました。ソウル市は「共有都市」について、新しい経済のチャンスの創出、信頼関係の回復、コスト削減などを通じて都市の経済・社会・環境問題を同時に解決できる革新的な施策と見ています。とくに、これまでの都市政策は道路、駐車場、学校、図書館など第一次共有インフラの建設に集中してきましたが、これからは空間、物、才能などの遊休資源の活用性を高める第二次共有インフラを構築する計画です。そして民間領域の力を尊重し、それを促進する政策を重点的に実施する一方、公共部門がリーダーとなって公共資源を市民に公開し、共有する政策も並行して行います。
ソウルは、超高速インターネットとスマートフォンの普及が進み、ITとインターネットが発達しており、人口の密集度が高く、共有経済の発達に有利な条件を備えています。米国のサンフランシスコではじめて登場し活性化した共有経済のモデルが、現在ソウルでも勢い良く広まっています。空き部屋の家主と旅行客を繋ぐ「ビーアンドビーヒーロー(bnbhero)」、「コザザ(Kozaza)」が新しいコンセプトの民宿事業を行っており、人々の本を大きな倉庫に保管してインターネットを通じて図書情報を交換し、互いに本の貸し出しを行う「国民図書館本棚」という会社も生まれました。同じ関心事を持つ人々がともに食事と会話を行う「チッパブ(Zipbob)」、オフィスを共有する「スペースノア(Space Noah)」も登場しました。「グリーンカー(green car)」、「ソーカー(socar)」など、カー・シェアリング・サービスも急成長しており、先輩の社会人からスーツの寄贈を受け、応援メッセージとともに青年求職者に貸し出す「開かれたクローゼット(the open closet)」も現れました。
「共有都市・ソウル」政策の基本方針は、民間領域が中心となって共有領域を発掘・実践し、ソウル市は共有都市のための基盤を築き、民間の共有活動を促進・支援することです。
まず、共有を促進する基盤を構築し、共有団体や共有企業を支援するための法的根拠を設けるため、2012年12月31日、「ソウル特別市共有促進条例」を制定・公布しました。「ソウル特別市共有促進条例」は公共資源の共有原則宣言、「共有団体」や「共有企業」の指定および行政・財政の面からの支援、「共有促進委員会」の設置などが主な内容です。
そして企業や団体によって共有のためのオンラインプラットフォームがばらばらに存在し、共有事業への参加を希望する市民がアクセスしにくく、共有関連情報が集まっていない現状を受け、共有関連情報や共有プラットフォームに関する情報を一カ所に集めた「ソウル共有ハブ」を2013年6月に開設しました(http://sharehub.kr)。「ソウル共有ハブ」を通じて、「共有都市」という言葉を検索するだけで共有に関する情報や共有プラットフォームが簡単に見つかり、市民の共有活動への参加がより容易になったのです。ソウル共有ハブはこのような情報の生産・蓄積(アーカイブ)・伝播・案内の機能の他にも、国内外の共有関連団体、企業、メディア、社会の様々な領域とのネットワークを作り、各機関との連携を支援する役割も果たしています。また、共有を拡大するための市民キャンペーンを展開し、創業を準備している人、市民、公務員などを対象に教育を実施しました。
その他に、共有に関する民間からの提案や制度改善への要求のための窓口を、ソウル市「社会革新担当官」へと一元化し、これまで所轄の部署が分からず困難を感じていた団体や企業を支援します。また、中央部署との協力関係により共有を阻害する法令および制度を改善していきます。
ソウル市は民間の共有団体や共有企業に対する市民の信頼度を高め、安心して共有活動に参加できるよう、ソウル市が一定の条件を満たした団体と企業を「共有団体」および「共有企業」に指定するという「共有団体‧共有企業指定制度」を実施しています。2013年12月まで37の企業や団体が指定されました。指定された共有団体や共有企業には、共有都市のBI(Brand Identity)の使用権を与え、サービスについて市民に広く知らせるために広報を支援し、ソウル市の関連部署との協業事業を推進するよう支援を行っています。また、指定された共有団体や共有企業のうち、市民の生活と密接な関連のある事業の一部を選定し、事業費も支援しました(18機関、3億2,100万ウォン)。これからも共有により社会問題の解決を図る団体や企業を、公募を経て指定を続ける予定です。また、共有経済関連の創業を促進するため、ソウル市の創業支援プログラムと連携し、共有経済を事業アイテムにして創業を準備している人にオフィス、コンサルティング、活動費などを支援しました。(約20社の創業を支援)
ソウル市は官民によるガバナンスとして「ソウル特別市共有促進委員会」を構成・運営しています。「共有促進委員会」は学界、法曹界、マスコミ、企業、民間の非営利団体、研究機関および経済・福祉・交通や革新的な業務を担当している局長クラスの公務員により構成されています。「共有促進委員会」は、共有促進政策の策定、法規や制度の改善に関する諮問、共有団体や共有企業の指定および支援に関する審議機能をも果たします。
また、共有都市・ソウルを象徴するBIとスローガンを公募により制作しました。共有都市・ソウルのBIは、ソウルの空間、物、経験を分かち合い、ともに使用することによって利便性と利益が生み出されるという意味で、数学の記号である÷と+を共有ソウルの文字に入れました。スローガンは、ソウル全人口である一千万人の市民がすべて共有活動に参加すると皆が幸せになるという意味で「一千万の種類の共有、一千万の種類の幸せ」にしました。共有ソウルのBIとスローガンはソウル市が指定した共有団体と共有企業も使用できます。
一方、市民が共有都市と共有経済を理解し、参加方法を学ぶことのできるプログラム「ソウル、共有経済に触れる」市民講演イベントをソウル市指定共有企業「ウィズドーム」といっしょに、2013年1月10日から4月11日まで毎週木曜日19:30~21:30にソウル市庁大会議室において開催しました。共有企業や共有団体の代表者たちによる講演で、計1,207人の市民が参加しました。また、「ソウル、共有経済に触れる」の最後のイベントとして、共有団体や共有企業を一カ所で見ることのできる「共有経済ハンマダン」(サブタイトル:共有都市・ソウルの夜)を2013年4月18日に開催しました。このイベントは新しい共有モデルについての発表、広報ブースの運営、イベントおよびネットワークの内容によって構成され、約350人が参加しました。
また、人々が持っている本を共有して小さな図書館を目指す「共有書架」イベントや地下鉄の中で本を読むフラッシュモブ「本が読める地下鉄」イベントを2013年4月20日に開催しました。このイベントでは、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長と市民が本を共有して地下鉄の中で本を読む形で行われました。
2013年8月には、共有都市・ソウルの展示会および博覧会をCOEXにおいて開催し、一万人以上が観覧しました。10月から11月までは、「ナヌムカー」「チプバプ(うちごはん)」「ウィズドーム(wisdom+dome)」などの社会的企業と協力して都心における共有都市・ソウルの体験イベントを開催し、大好評を得ました。その他にもソウル市の様々なメディアを通じて共有都市に関する広報を総合的に行うことで、共有についてソウルの市民がより親しみを感じ、心理的な壁を乗り越えることができるよう、様々な政策を実施しています。
公共施設の遊休空間を共有
ソウルe-プマシ
開かれたデータ広場