[2014] 市長挨拶

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  • 持続可能な平和のために「悪循環から好循環に」

    SMG 468
  • 米国外交協会(CFR, Council on Foreign Relations)座談会基調演説
    日付 2014年9月25日 場所 米国 外交協会

    スコット・スナイダー(Director Scott Snyder)所長、米国外交協会職員(CFR Staffs)の皆様、そしてご来賓の皆様!本日、私がこの場に立つことができたことは大きな光栄であると同時に、特権です。米国外交協会での演説にご招待頂き、心から感謝申し上げます。

     本日、私は大韓民国の首都ソウル市の市長としてこの場に立ちました。私はソウル市長に当選される前、20年余りの間、様々な市民団体で人権と民主主義、そして人々の生活を改善するために努力しました。ソウル市長に当選されてからは市政に専念したため、外交、安保、南北問題に関して私の見解を示す機会が多くありませんでした。

     しかし、今日のグロバル化された世界では、外交がこれ以上中央政府だけの専有物ではないことが明らかになりました。地方政府の公共外交、特にソウルのような首都都市の公共外交の重要性は日々高まっています。安保も同じです。

     特に休戦線からソウルまでは40kmに過ぎず、ソウル市民にとって安保は重大な関心事という点を考えればなおさらです。また私はソウル市統合防衛協議会の議長であると同時に、災難宣布権者です。したがって、外交、安保、南北関係の改善と平和は一千万ソウル市民の幸福と密接な関係があると言えます。まず、私は過去NGO活動と現在ソウル市政を通じて持続的に政府と民間間の協力政治(Collaborative Governance)を強調してきました。外交、安保、南北統一にも同様に、中央政府、地方政府、民間間の協力政治が必要だと思います。

     幾つかの例を挙げて見ます。韓日関係が最悪だった去る7月、私は日本の東京都知事を招きました。この出会いを通じて、我々は両都市間の交流協力を強化することで合意しただけでなく、両国間の悪化した関係を少しでも改善する契機を作りました。また去る4月には北京市長と会い、東北アジアの大気質の改善等、共通の関心事について論議し、相互協力のための合意書を締結しました。私はグローバル都市ソウル市長として、世界各国の都市市民たちの心を得る公共外交を一層強めていきます。

     公共外交のみならず、南北関係の改善にも地方政府の役割は重要です。ドイツの統一時に地方政府とNGOの役割が非常に大きかったことを考えれば、韓国の地方政府も南北交流協力事業で重要な役割を果たすべき時期です。中央政府が承認すれば私はピョンヤン(平壌)をパートナーとし、様々な交流協力事業を展開しようと思います

     ドイツが分断されていた当時、東西ドイツの62都市が姉妹関係を結び、合計700余りの都市が姉妹関係を希望したように、地方政府間の幅広い交流協力が韓半島の平和の定着に寄与すると確信します。

     去る2011年のソウル市長就任直後から、私はソウルとピョンヤン(平壌)間で長い間中断されていたサッカー試合の再開、ソウル市立交響楽団とピョンヤン市響の演奏交流等、スポーツと文化交流協力事業を提案したことがあります。また私は共同歴史研究と都市計画協力、ケソン(開城)工業団地をモデルとした経済協力事業等、様々な交流協力事業を提案しました。このような努力を通し、私はソウルとピョンヤン(平壌)間に姉妹関係が結ばれることを希望します。

     第二に、外交、安保、南北統一の価値と目的は全ての人間の尊厳生を守ることであり、これは韓米同盟の根幹であり、実でもあります。

     私はソウル大学1年の時、独裁に反対した理由で投獄され、学校から除籍処分を受けました。1983年からは人権弁護士として活動しました。拷問を根絶し、人権を侵害する国家保安法を改革するために努力しました。人権と人間の尊厳を守ることが国家の主要な役割だと信じたためです。私は幼い頃から米国の民主主義を学んでそれが私の実践と行動の根拠になりました。

     大韓民国の憲法は「すべての国民は、人間としての尊厳及び価値を有し、幸福を追求する権利を有する」とし、「国は、個人の有する不可侵の基本的人権を保障する義務を負う」と規定します。米国の独立宣言書も同様に、「すべての人間は生れながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、及び幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と規定し、この権利を確保するために政府が存在すると宣言しています。

     大韓民国は民主主義国家です。米国は悠久な歴史を持つ民主主義国家です。韓国と米国は共に人権と人間の尊厳を国家の核心価値として位置づけています。そしてこれは人類の普遍的価値です。私は韓国と米国が共有するこの価値観が、外部のいかなる脅威からも韓米同盟を維持する最も強い相互紐帯だと思います。韓米同盟は突然成立されたことでもなく、突然消えることでもありません。韓米関係が現在のように強固に維持できているのはこの価値を強固に共有しているためだと確信しています。

     第三に、外交、安保、南北統一に必要な知識として変化に対する信念を持ち、現実的で実用的な思考と戦略的な行動が必要です。アジアでは変化が進んでいます。中国が軍事力を拡張し、米国がアジアに中心軸を移動して、再均衡を成し、日本が軍事力を強化しています。また北朝鮮は核兵器を開発して弾道ミサイル能力を強化し、韓国は北朝鮮の核とミサイルに対する対応戦略を開発しています。このような不確実性と戦略的不信が東アジアでの安保ジレンマを深化させています。

     多角主義協力が弱い東アジアでは歴史の悪循環を断ち切って、好循環を作るためには、現実の本質を一層深く把握しなければなりません。不信の中から信頼の輪を作り、絶望の中から希望の根拠を設け、結局新しい体制を作らなければなりません。  最近私が深く尊敬し、政治家のモデルとしているリンカーン大統領に関する2本の映画を見ました。一つはナショナルジオグラフィックの「リンカーンを殺した男(Killing Lincoln)」で、もう一つはスティーヴン・スピルバーグの「リンカーン(Lincoln)」です。

     この2本の映画から、私は憎悪と偏見に満ち溢れた人々が存在する現実の中で、奴隷制廃止の法案を通過させるために人間の理解関係を機敏に利用するリンカーンを見出しました。リンカーンは理想主義にとどまらないだけでなく、冒険主義に落ちることもありませんでした。理想を追求しながらも、現実では一歩ずつ前進して国家の死活に関わる問題を解決しました。我が国では実学の伝統があります。その要点は「実事求是」です。現実の中に真理があり、現実の中に解法があるということです。

     強力な国防体制と韓米同盟は韓半島安保の核心です。このような現実を土台にして、我々はさらに一歩、前進していかなければなりません。北朝鮮、韓半島、東アジアの好ましい変化に対するビジョンを持ち、変化の種を探し、それを培養することに力を集中しなければなりません。こうすれば我々は韓半島と東アジアに持続可能な平和と協力の新しい流れを作ることができます。

     第四に、政策を一貫して推進して信頼を形成するためには、指導者と国民が共に努力しなければなりません。今日の韓日関係の中で最も大きな問題は歴史に対する日本の態度と立場です。日本が歴史を直視し、侵略の歴史を反省しない限り、韓日関係で信頼が形成されることは難しいです。

     

     南北関係の場合、ケソン(開城)工業団地を除けば完全に冷え込んでいます。この状況を突破するためには南北の首脳が過去合意したものを実行するために努力しなければなりません。信頼は我々が合意した内容を守り、政策を一貫して推進することから始まります。これにより南北関係が逆戻りすることを防止できます。

    多数の人々はドイツの統一が突然訪れたと思っています。私はそう思いません。皆様もご存知のように、社民党のブラント首相は東方政策を実施し、東ドイツとの人的、物的交流を絶えず進行しました。そしてキリスト教民主同盟に政権交代した後も、西ドイツは東ドイツに対して前政府の東方政策を一貫して推進しました。政権の変化にも揺るぐことのない一貫した政策、交流と協力を通じた信頼蓄積で東西ドイツは「事実上の統一(De Facto Unification)」を経て、「法的統一(De Jure Unification)」を実現しました。

     信頼は国家の根本であると同時に、外交では酸素のようなものです。信頼形成には政府だけでなく、国民の役割も非常に重要です。問題はこの信頼形成過程を誰が主導するかということです。力があり、自信感を持つ方が自然的に主導権を握るはずです。私は北朝鮮と比較して多くの部門で優れた韓国が、そして世界最強国の米国が対話の手を差し伸べ、信頼のプロセスを主導しながら北朝鮮を変化への道に導かなければならないと思います。こういう場合にこそ韓国と米国が韓半島の非核化と平和体制、そして南北統一を主導することができるのです。ご来賓の皆様、西洋では「日の照るうちに干し草をつくれ」ということわざがあります。ドイツは「1990年代初め」という非常に良い時期に統一を実現しました。今日のヨーロッパの状況ならば東西ドイツは統一を決して実現することができなかったでしょう。

     来年は南北に分断されてから70年になります。長い間分断が続いているため、南北間の同質性は悪化し、異質性が深刻化しています。韓国の歴史を見ると常に機会がありました。南北関係を改善し、統一を実現するために残された時間は長くないと思います。この機会を逃せば韓半島は東北アジアの葛藤に巻き込まれ、分断されたまま衰えていくのではないかと心配です。

     歴史を見ると韓半島の戦争は東北アジアの戦争であり、韓半島の分断は東北アジアの分断でした。また韓半島の平和は東北アジアの平和であり、韓半島の繁栄は東北アジアの繁栄でした。今もそうですが、平和的に統一されたコリアは米国の心強い友として残り続けるでしょう。人間の尊厳と民主主義の花が咲く富強な中堅国家の統一コリアは東北アジアだけでなく全世界に祝福されることでしょう。誠にありがとうございました。